幻の魚”石鯛”、釣りエサ開発No.1「イシダイ用ウニだんご」

イシダイ、エサ開発プロジェクト秘話(桃園書房、2002 TOEN MOOK No.2掲載)
●「イシダイ用ウニだんご」
釣り業界にも世間の不景気は例外なく押し寄せる昨今、様々な商品のライフサイクルも短くなってきていると言わざるを得ない状況であるが、そんな中、決して爆発的なヒットとは言い難いにしろ発売以来20年近くも経過しているにもかかわらず、根強いファンに支えられ健闘している商品が「イシダイ用ウニだんご」である。素朴なパッケージと値段も当時そのままである。
◆きっかけは”冷凍ウニガラは扱いにくい”という素朴な不満から
この商品がこの世に出たのは昭和62年の4月。きっかけはイシダイ釣り師の素朴な不満・冷凍ウニガラはイシダイが寄るけど扱いにくい、ということであった。当時マルキューにイシダイ釣りに精通したスタッフはおらず、当時中京地区を営業巡回していた池谷が、ある釣り具店からもらったアイデアがそれであった。埼玉県大宮市(現さいたま市)の本社に戻った池谷が「チヌパワー」「グレパワー」の開発担当者であった研究室の長岡に試作を依頼したのは61年の秋であった。
◆原料を調合してカップにつめ、ハンマーで叩いて固める毎日
冷凍ウニガラは、形が崩れないように海水とともに冷凍パン(型どりするための容器)で冷凍させるので、冷凍したときにかなりたくさんの水分が出てすぐに腐敗してしまう。長岡はすぐに乾燥ウニガラを使用することを思いついた。乾燥ウニガラは、それまでもクロダイ用の配合エサ原料として使用していたので入手は簡単であったが、従来の配合エサに使用しているようなものではなく、出来るだけあの冷凍ウニガラに近い生っぽい匂いのする鮮度のよいものを手配。この主原材料となったウニガラは、仕入担当者が八方手をつくしてくれたお陰で、あっさり入手することができた。しっとりした半乾きのウニガラに水をかけると、研究室に生ウニの香りが立ちこめた。次は、まとまりのない乾燥ウニガラをどのように結着させるか、という点に焦点は当てられた。結着性が不十分だと、乾燥させたウニガラではとても荒磯の海底まで到達させることはできない。常温での保存と、磯場での不必要な乾燥も抑えなければならない。これからのことも考えて原料を調合。提案者の池谷と長岡は、毎日のように原料と調合してはプラカップに詰め、ハンマーで叩いて固めるという作業を繰り返した。
◆遊んでいた機械を利用して半月ほどで生産機を立ち上げる
初冬になり、ようやく処方が完成。池谷は中京の出張にサンプルを持参し、最初に提案した店主に渡した。それから約10日ほど経過し、帰社した池谷が手にしていたのは大きなイシダイを手にしたその店主の写真。店主は試作品をもらうとすぐに釣りに行き、試作品を投入し続けて釣り上げたという。イシダイ釣りを全く知らなかった長岡ではあったがその写真をみてよりよいものを完成させたいという意欲が高まった。その上、冬のボーナスの大半はイシダイの道具に化けた。ところが、問題が発覚したのは年が明けてすぐのことであった。当然のことでもあるが、工業的にどうやって生産するかということだ。大型の打錠機の見積もりは2000万円にも及ぶ高額なもので、全く市場のつかめていない状況で強引に押し通す金額ではなかった。このピンチを救ったのは生産部の戸ヶ崎であった。彼は練り物加工のエキスパートで、生産部で遊んでいた超馬力のニーダーを地元の鉄工屋に作らせた特殊ノズルを組み合わせ、半月ほどで生産機を立ち上げたのである。
◆腹を割くと紫色のウニだんごがビッシリ詰まっていた
工場の実機で生産した試作品が試作されたのは翌年の4月初旬、銭洲解禁にあわせての実釣であった。案内してくれたのは全磯連の福田伴男先生、マルキューの現在は船インストラクターである早乙女浩二氏。長岡と池谷にとってははじめてのイシダイ釣りとなった。通称・外ヒラッタイという磯に渡礁し、早速試作したウニダンゴを大量に足下に投げ込む。仕掛けをセットしていると、早くも南端にいた早乙女氏の竿にアタリが来た。しかし、相手が大きかったのであろうか、竿尻の石突きが割れバラしてしまった。一方、中ヒラッタイ向きのワンド状になった所で竿を出していた長岡にもアタリが出始め、シャープな引き込みに思い切り合わせると、あがってきたのは2kg弱のイシガキダイだった。その後もアタリが続き、全部で6枚のイシガキダイをゲット。早乙女氏が釣り上げたイシガキダイの腹を割くと、あの紫色のウニだんごがびっしり詰まっていた。この釣果が自信につながり、当初もう少しテストを行い最終調整をして6月頃発売しようと計画していたのであるが、生産次第行こうという雰囲気が高まり、同月中旬には出荷となった。販売直後には、神津島のオンバセでウニだんごにカニを包んで投入したところ大型のクチジロが釣れたという話題が広がり、注文が殺到。5月にはフル生産となった。
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