へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第4回 超食い渋りからの脱出術 横山天水の浅ダナウドンセットマニュアル


  厳寒期のへら鮒釣りは、新年を迎えると共に一段とその厳しさを増してくる。近年においては特に浅ダナウドンセット釣りにその傾向が顕著にみられ、かなりの苦戦を強いられる。厳寒期の定番釣法「段差の底釣り」であれば、バラケを抜いてじっと待っていれば何とかアタリをもらうことができる。チョーチンウドンセット釣りもしかり。但しこちらはバラケをしっかり持たせて根気よく縦サソイを繰り返す戦術が効果的だ。ところが浅ダナにはこうしたパターン化された攻め方が見つからない。そこで今回は浅ダナウドンセット釣りのスペシャリスト、マルキユーチーフインストラクター横山天水が、厳寒期の超食い渋りからの脱出術を紹介する。  
     
今回横山が紹介してくれる浅ダナウドンセット釣りは、一般的によく行われている厳寒期仕様の短竿を使ったタナ1mのウドン系固形物をクワセにしたセット釣りである。冒頭なぜこのようにお断りしておくかというと、この時期の浅ダナウドンセット釣りには大型新ベラをターゲットにした、沖を狙った長竿での浅ダナウドンセット釣りも選択肢として有力視されるからだ。この釣り方は今回取り上げる短竿浅ダナウドンセット釣りとは一線を画するもので、エサ使いこそバラケとウドンの組み合わせとなるが、釣り方のプロセスそのものは全く異なるため、別の機会を設けて改めて紹介したいと考えている。
さて、近年この短竿での浅ダナウドンセット釣りの難しさに頭を抱えている釣り人は少なくないのではないだろうか。数年前いわゆるパワー系と呼ばれたボソタッチの大きなバラケエサを用いた釣り方は鳴りを潜め、かといって小さなバラケで繊細に組み立てる釣りもそれほど効果的とはいえない。このように、なんともつかみどころのない状況下に置かれているのが現在の浅ダナウドンセット釣りの実情なのだ。横山は言う。
「かつてのセオリーが通用しなくなっているのは事実。またパターン化し難いことで一気に釣り込むこともできなくなっていることも、この釣り方が難しいと感じる一因だろう。現在の管理釣り場のへら鮒の大型化は今に始まったことではないが、これまで厳寒期でもある程度アタリを出してくれた既存の中型ベラがほとんどいなくなり、完全に大型ばかりに入れ替わってしまった釣り場ほど難しくなっている。だからと言って僕らが黙って手をこまねいている訳にもいかないので、今回は僕が実践している効果的な方法を悩める人達の光明となるべく紹介するので、是非参考にしてこの厳寒期を楽しく過ごして欲しいね!」
 
   


   
   
■サオ
規定最短尺が基本。但しコンディションの良い良型新ベラがやや沖に居着く釣り場(ポイント)では13尺くらいまでは想定内とする。但しこの長さになると打ち込めるバラケのタッチに限界があるので、各自の技量に合わせて使う長さ選択するのが得策。つまり無理して長竿を振るのではなく、柔らかめのバラケが必要になることもあるので、それを的確に打ち込める限界の長さを選択する方がベターである。
 
■ミチイト
一年で最も食いの渋い時期の釣りであり、加えて季節風の影響を受けやすい浅ダナの釣りなので、ミチイトは細めのセッティングとするのが基本である。今回横山は大型魚メインの釣り場であることから0.8号を選択(取材直前に1枚1.2kg〜1.8kg級の大型新ベラが放流されていたこともあり)したが、一般的には厳寒期では0.6〜0.7号を常用する。
 
■ハリス
厳寒期における基本セッティングは別図を参照。上ハリスは0.4号/5cmでほぼ固定するが、セット釣りでの生命線ともいえる下ハリスは40cmでスタート。実釣ではサワリが急激に増した時点で30cmに変更したが、わずかにこれだけでアタリが全くなくなり、サワリも激減してしまったためすぐに元に戻した。この下ハリスの長さは釣り場によっても異なるが、以前のように60cmを超える長ハリスや、反対に20cm以下の短バリスになることもほとんどないという。加えてカラツン多発時における数センチ単位でアジャストしていくといった手法はほとんど取らない。その理由はたとえ変更直後に釣れたとしても、直ぐにアタリが出なくなることが多いためだ。横山は常々「カラツンを怖がるな」と教えている。そのうえで「カラツンを軽減するのはむしろバラケの調整」とも言っている。
 
■ハリ
上バリはがまかつ「アスカ」6号でほぼ固定。上バリの役目はバラケをタナまで持たせることだが、現代浅ダナウドンセット釣りでは狙ったタイミングで的確に抜くことも重要な役割となっている。この操作が最もやりやすいのが、横山にとっては「アスカ」6号という訳だ。下バリは同2号としたが、これは事前情報によるもので「力玉」がメインになるであろうという予測から小さめの選択とした。もし絞りだしウドンが良い時は、ホールド力の高い3号に交換する。このように下バリはクワセの種類によって使い分けるのが効果的。クワセの比重が重くサイズが大きければハリも大きく、比重が軽くサイズも小さければハリを小さくすることで、クワセエサの交換時の効果を増すことができるのだ。

■ウキ
横山の使用するウキは通年大きめなのが特徴。これはタナをしっかり作って釣り込むのが狙いであることは明白だが、さすがに厳寒期の今は大きな浮力(オモリ負荷量)のウキではアタリがだし切れないという。しかし安心して浮力の小さなウキが使える背景には、使用するバラケのブレンドで、十分タナを安定させることができるという裏付けがあってのこと。そしてもうひとつのポイントがエサ落ち目盛りの決め方。今回横山はクワセをつけた状態でトップ先端3目盛りが水面上にでるように調整した。この狙いはバラケの投入量を制限することがひとつ。これにより必ずナジミを入れる横山の釣りでは、ウキの沈没を避けるために概ね2〜3目盛りの範囲内でバラケの大きさを調整することになるのだ。さらにクワセだけになってアタリを待つ際、浮力を殺した状態でへら鮒にクワセを吸い込ませることで警戒心や違和感を覚えさせない効果もある。
 
 
実釣フィールドとして横山が選んだのは、厳寒期には極めて手ごわい大型ベラばかりが放たれている筑波湖であった。同湖は横山自身熟知した釣り場ではあるが、他の仕事の都合で2週間以上竿をだしてはいないとのことで多少の不安の色は隠せない。日の出時刻の気温は車載の温度計でマイナス5℃を表示しており、今シーズン最も冷え込んだ朝となった。天気予報も北西の季節風が強まることを告げており、取材に支障がないようにとの横山の心配りで、魚影密度の点では決して好条件とはいえない7号残橋の突端付近に釣り座を構えた。
ストーブの着火もままならないあまりの急激な冷え込みにアタリだしの遅さを懸念したが、以外にも20投も打ち込まないうちにウキに変化が見られ、さらにエサ打ちが進むと明確なサワリが表れ、やがてフワフワしたアオリに続いて「スパッ」と消し込むアタリや「チクッ」と1目盛りほどの小さいながらもキレのあるアタリでコンスタントに釣れ始まった。この間横山が行ったことといえば、バラケのタッチ調整(手水を数回加えて撹拌しただけ)とエサ付け形状・圧加減の変更のみ。
その過程を横山は、以下のように3段階のステップに分けて解説してくれた。
第1ステップ 【へら鮒を寄せる】
先ずは何をおいてもへら鮒をタナに寄せることからスタートする。厳寒期はただでさえレスポンスが鈍いので、たとえ打ち初めの段階であっても開くバラケを大量に投入することは厳禁だ。どちらかと言えばやや小さめとも思えるバラケで時間をかけて寄せ、へら鮒にエサの存在をアピールしサワリを出させることが肝心だ。その際に注意する点について横山のアドバイスをまとめると概ね次のようになる。

◆バラケのサイズは直径15mm前後で形はややラフ気味。エアーを軽く抜いた程度で打ち込んでウキのトップ先端がギリギリ水面上に残るように圧加減をコントロールする。
◆打ち返しは待ち過ぎない。バラケが完全に抜けるまで待たずに1〜2目盛り分が残っていても速やかに打ち返す。目安としては30秒以内で、エサ付け・打ち返し・ナジミの時間を含めて1投/1分間を目安にコンスタントにエサ打ちを繰り返す。
◆10投前後(10分程度)でサワリが出ればまずまずのコンディション。20投(20分程度)で普通の状態。30
投(30分程度)でやや渋い状態と判断し、これ以上かかるときはかなりの食い渋り状態と判断し、その後の打ち返しは慎重に行う。またサワリがないときでも時折エサ付けの圧を調整し、バラケの広がりに変化をつけて寄り具合や反応をチェックする。

第2ステップ【バラケを抑えてへら鮒をクワセに近づける】
厳寒期ではかなり寄ってきていても、その状況がほとんどウキに表れないことが多い。そのため、つい気づかずにスタート時とほとんど同じパターンのエサ打ちを繰り返してしまう。しかしこれではいつまで経ってもアタリは期待できない。そこで寄ったへら鮒をさらにクワセに近づけるために、バラケの拡散範囲を狭める作業が必要になる。
◆別ボウルに基エサを取り分け軽く手水を加えてから10〜20回撹拌し、バラケをしっとりさせつつ僅かに粘り(ハッキリとはわからない程度)を加える。
◆バラケのサイズは変更せず形状のみ丁寧に水滴型にまとめ、チモトをしっかり押さえて横方向への拡散を抑えるエサ付けとする。
◆トップ先端1目盛り残しまではなじませるが、そこで長い時間持たせることなく長くても10秒以内に上バリから完全に抜けるようにする。
◆バラケが抜けた後のサワリ(アオリ)の有無に注目する。サワリがなければ速やかに打ち返し、サワリがあるときのみ10秒程度待ってみる。アタリがでれば小さなものでも積極的に合わせてリズムを作る。

第3ステップ【バラケをタイミング良く抜きクワセに被せる=食わせる】
なじみ幅が少なくなったり、ウキの戻りが速くなり始めたらへら鮒がクワセに近づいてきたシグナル。ところが簡単にアタリを出してくれないのが最近の傾向であり難しさの要因だ。以前はさらにバラケをテンポ良く打ち込み続けへら鮒をタナに厚く寄せ切ると、競い食いを始めるのか自動的という感じで食い気のスイッチが入り「カチッ」「スパッ」と簡単にアタリがでたものだ。しかしここでヘラ鮒任せにしておくと、いつになっても良いアタリは期待できない。そこで必要になるのが食い気のスイッチをオンするためのきっかけを与えてやること。横山はそれを、バラケを抜くタイミングで行うことが最も簡単且つ効果的であるという。
◆バラケのサイズは大きく変更せず、形状も水滴型のままチモトを押さえて打ち込む。バラケの抜けるタイミングはここでのチモトの押さえ加減でコントロールする。
◆バラケは徐々に抜く(散らす)のではなく塊で一気に抜くのが基本。なじんだ直後に抜くパターンから、寄ったへら鮒が自らバラケにアタックして抜くパターンまで、数通りのタイミングの異なる抜き方を試してみて、最もアタリに連動するパターンを探る。
◆特定のパターンでアタリが持続しコンスタントに釣れ続けばOKだが、アタリが続かない場合はパターンが異なる可能性があるので別のパターンを探り、サワリ自体が続かない場合は寄り不足と判断し、勇気をもって前述の「第1ステップ」に戻ることが肝心。
◆たとえコンスタントに釣れ続いたとしても、必ず途切れるときはやってくる。その場合も必ず「第1ステップ」から始めることを心掛けること。途中からのやり直しは迷走の原因となる。
 
 
 

横山のセット釣りを支える「セット専用バラケ」
「セット専用バラケ」は発売以来、とくにウドン系固形物をクワセにしたセット釣りにおいて絶大なる人気を誇るバラケエサであり、その高い信頼性は今なお不動の地位を築いている。もちろん横山自身常用するエサであり、彼のセット釣りになくてはならない重要なアイテムである。
このエサの特徴はなんといってもバラケ性に富み、且つ重めの麩材をメインに構成してあるので高い集魚力と共にウワズリ難いという特性を持つこと。このため、多少ラフにバラケを打ち込んでも時合いを維持することができるというメリットがある。こうした特徴 は現在のセット釣りにおいては必要不可欠な要素であり、バラケの性格を決定づける核として、まさに中心的な役割を担っていることは紛れもない事実である。現代のセット釣りではこの特徴をいかに引き出し、そして状況に合ったバラケのタッチとエサ付け方法をアジャストできるかに懸かっていると言っても過言ではないと横山は言う。
しかし実際に「セット専用バラケ」単品で釣るのは現在の状況下では困難であり、ブレンドは必須条件と言えよう。今回横山が推奨するバラケブレンドは、今やセット釣りの定番ともいえる「とろスイミー」「粒戦」のコンビに「セット専用バラケ」を組み合わせ、さらに現代浅ダナウドンセットバラケのキモである『持たせておいて、タイミングよく抜く』ための重要な役割を担う「GTS」と「パウダーベイトスーパーセット」を加えたものである。「GTS」は盛期の両ダンゴエサのベースエサであるが、比較的柔らかい麩材の効果でバラケ内にエアーを含ませやすく、また適度な粘りで確実にタナまで他の麩材をつなぎ止める効果も期待できる。さらに単品でも使える「パウダーベイトスーパーセット」はまとまりが良く、微粒子であることが厳寒期の活性の低下したへら鮒を長時間タナに足止めすることができるのだ。 今回紹介した横山流の浅ダナウドンセット釣りのキモは、何と言ってもこのバラケを抜くタイミングが最重要ポイント。タックルセッティングが合ってさらにバラケのタッチが合っていても、この抜きのタイミングが合わないとアタリが出難く、たとえ強くアタったとしてもカラツンになる可能性が高いのだ。そのコントロールを自在に行うためには「セット専用バラケ」はまさに生命線。この時期、横山のサブバックから「セット専用バラケ」がなくなることは無い。
 
 
 
   
  セット釣りに限らず、横山の釣りは実にシンプル且つスタンダードである。自らが人よりも釣るということを目指すのではなく、いかに簡単に且つ安定的に釣ることができるのか。そしてそれが誰にでも真似のできるものなのかというスタンスで日々研鑽を重ねている。どんなに優れた釣技であっても誰も真似のできないものでは意味がない。その点横山の釣り方は特別な点は一切見られない。あるのは明快な理論と実践のみ。 「季節を問わず、釣り方を問わず、腰の据わった釣り(安定的な釣り)というものは、必ずブレることのない太い芯が通っているもので、小手先のテクニックでは太刀打ちできない強さがある。今回紹介した厳寒期の浅ダナウドンセット釣りもしかり。とくにこの釣り方はアタリ自体少ない時期の釣り方なので、つい目先の一枚にとらわれがちになるが、じっくり寄せて釣るというへら鮒釣りの基本通りに攻めれば必ず満足できる釣りができるようになる。 セット釣りではバラケの良し悪しが釣果を左右することが少なくないが、良いバラケであっても使い方(特にエサ付け)次第で悪いバラケになることもある。良く釣れている人が居たら、バラケのタッチは勿論だが、そのエサ付け方法にも着目して欲しい。以前は持たない(持たせ難い)バラケをいかに持たせるかがポイントであったが、最近では比較的持たせやすいタッチのバラケが良いことが多い。但しあくまでそれを抜くタイミングこそが大事で、そのコツさえつかめればビックリするほど簡単に食いアタリが出るはずだ!」

 
   

「釣技最前線」その他の記事へ

このページのトップへ