へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第8回 盛期の浅ダナをズバッと決める! 中澤岳の盛期のストロングスタイルのカッツケ両ダンゴ釣り


  盛期のへら鮒釣りを代表する浅ダナ両ダンゴ釣り。そのシャープでキレのある釣り味に魅了されたへら釣りファンは多いのではないだろうか。取り分けタナ規定のない釣り場で表層を狙うカッツケ釣りは、タナ規定1mの浅ダナ釣りとは異なる一種独特な世界観があり、特に競技においては絶対に選択肢からは外せない“勝てる釣法”として広く認知されている。 そこで盛期を目前に控えた今、カッツケ釣りを得意中の得意と自他共に認める元祖トーナメンター中澤岳に現代版最先端のカッツケ両ダンゴ釣りをさくら湖で披露してもらい、その釣りに秘められた爆釣を約束する珠玉のヒントを授けてもらうことにした。  
     
年々変化を続けるへら鮒釣りにおいて、カッツケ釣りほど大きく様変わりした釣り方はないだろう。タックルは言うに及ばず、そのエサ使いやアタリの取り方、釣りの組み立て方やリズムさえも変わってしまった。そうした変化について、現在中澤自身が感じているカッツケ釣りのポイントについてまとめると、概ね次のようになる。

1.ポイント(釣り座)
カッツケ両ダンゴ釣りをするにあたり、まず大事なことは?と訊ねたところ真っ先に返ってきた回答がポイントの重要性であった。端的に言うと良い条件が揃わないとカッツケ釣りそのものが成立しないのだという。その条件とは、何と言ってもへら鮒が水面に沸くほど魚影が濃いこと。この条件を満たすポイントは、必然的に釣り場の中央部付近となる。取材当日は同湖月例賞金大会が開催されていたが、可能な限り湖の中央部が攻められるポイントを目指し、B桟橋46番座席に釣り座を構えた。

2.タックル

一般的にカッツケ釣りのタックルは繊細さが命と言われてきた。事実管理釣り場がポピュラーな存在になる以前のハコ(釣り堀)では、盛期であっても0.6号以下のミチイトが標準とされていた。しかし主戦場が管理釣り場に移行して以来、特にここ十数年で一気に大型化したへら鮒を相手にするにはミチイトはもちろん、他のタックルも以前ほどの繊細さは必要ないという。リスクを背負ったままのライトタックルではなく、むしろストレスなく釣り切れるタックルバランスこそ重要であると中澤は言う。(※セッティングの詳細については別項参照)

3.エサ使い(ダンゴエサのタッチ)
カッツケ釣りにおけるダンゴエサの傾向も大きく変わった。以前は軽くネバリの強い素材をメインとした基エサに更に練りを加え、麩の粒子感を一切排除した超ヤワネバタッチが主流であり、また絶対的な釣果を叩き出していたという実績もあった。ところが現在ではそうしたエサで釣り切ることが困難となっており、替わって確実に粒子感の残るヤワボソタッチがエサ使いの基本線となっている。この点については釣り方のキモのところで詳しく述べよう。

4.釣りのリズム
実はこれこそがカッツケ両ダンゴ釣りで最も重要なファクターであろうと筆者は予測していたのであるが、意外にも中澤の考えとは大きくかけ離れていた。取材時の中澤の釣りを見ると、一発で食えそうな小エサをハイスピードでテンポ良く打ち切っていくのかと思いきや、そうした予想とはまったく逆とも言えるような、やや大きめのダンゴエサをゆったりとしたペースで打ち込み、しかもナジんだウキが返してからのアタリをメインに狙うなど、かつてのイケイケモードの中澤のカッツケ釣りを知る人間から見ると、まるで別人のような釣りスタイルに終始したのである。この点について中澤の見解はこうだ。
「確かに速いリズムやテンポはカッツケ釣りにおける大切なことのひとつではあるが、どんな釣り方であれ、釣りのリズムはある意味へら鮒が決めるもので、釣り人が無理矢理速いテンポで攻めても思い通りにならないことの方が多いんじゃないかな。でもそれは、決してへら鮒任せという受動的なスタンスではなく、常にチェンジ・オブ・ペースを意識しながら、安定的にへら鮒の寄りがキープでき、そしてコンスタントにアタリが出るように緩急を付けること。言い換えればへら鮒が好む(反応する)リズムを探ることが重要なんだと思うよ。」

5.天候(晴天よりも曇天)
天候も釣況を左右する要因のひとつ。特に浅ダナのへら鮒はその影響を受けやすいと言われている。とりわけ陽射しの有無はタナの変動と摂餌欲求に大きな変化をもたらす。この釣りで過去記録歴な大釣りを数多く経験している中澤は、理想とする天候は蒸し暑い曇天だという。生理的にタナが上っ調子になるのと同時に、折り重なるように表層に沸くへら鮒の警戒心が薄れるため、自ずとタナも食い気も安定するという訳だ。タナ規定のある釣り場では、こうした天候時にはウワズリを制御しながら釣らなければならないため、その釣りは格段に難しさを増すことになる。ところがタナ制限のない釣り場でのカッツケ釣りであればその心配は皆無で、ウワズッたらそれなりにタナを上げて対処できるメリットがある。その分エサ合わせやアタリの取り方に集中することができるので、結果的にストレスのない快適な釣りができることになるのである。
     


   
   
■サオ
理想は規定最短尺であるが、ポイントやへら鮒の居着き具合によってはやや沖めを攻める必要があるため、想定としては15尺くらいまでは考慮しておくこと。また取材時は9尺⇒12尺⇒15尺と3尺刻みで長くしていったが、これは状況が極めて芳しくなかったための措置であり、通常シビアに釣果を競う釣りでは1尺単位でサオの長さをアジャスティングすることが多いという。参考までに午後活性が上昇してからは再度出した9尺でほぼ決めていた。
 
■ミチイト
カッツケ釣りとは言え、釣れるへら鮒の型は意外に大きい。確かに表層をたむろするガサベラも釣れるが、昨年秋放流された大型新ベラもかなり混ざってくる。加えて釣果的にもかなりの重量となるため、釣りにストレスを感じない範囲内でやや太めのセッティング(今回は0.8号)が基本になる。
今回はやや待ち気味の時合いとなったためそれほど感じなかったが、食いが良いときはウキが立ってすぐのアタリが増えるため、沈みの良いラインを選択することは大前提だという。
 
■ハリス
ハリスはアタリを出すための重要な役割を担っている。長さによってへら鮒へのエサのアピール度をコントロールしている訳だが、中澤は特にウキが立ち上がった直後のウケとナジミ際のサワリを重視している。当然のことながらウケが激しいときは短くし、ウケがないときは長くする。またサワリがないときは長くし、サワリばかりで強いアタリが出難いときは短くするのがセオリーだ。当日は上0.4号 27cm/下0.4号 35cmでスタートしたが、思いのほか動き出しが遅かったため、1時間という短時間に27cm/35cm ⇒20cm/27cm ⇒12cm/20cm ⇒27cm/35cm ⇒35cm/43cmと4回長さを変えている。このマメな対応こそが中澤の真骨頂なのだが、それを可能にしているのが豊富な経験値と釣りに対する貪欲な姿勢である。ちなみにこの長さの組み合わせがカッツケ両ダンゴ釣りのハリス交換時の基本設定である。
 
■ハリ
使用するハリは上下共オーナーばり「セッサ」4号が中澤の基本となるが、エサ持ちを強化する際には同5号とサイズアップさせることもある。またサイズアップすることでハリが重くなりアタリに影響を及ぼすようなときには細軸タイプの「バラサ」をチョイスする。取材時にも、途中どうしてもナジミ際のエサを追いきれない感じがしたため、エサ持ちを変えることなくエサの落下速度を遅くする狙いでハリを軽く(「セッサ」4号から「バラサ」4号に変更)したところアタリが倍増。その差はカタログデータ上で僅か5.3mgなのだが、その違いを察知してしまうほどへら鮒はデリケートな魚であるということなのである。
 
■ウキ
今回中澤は「俊作」浅ダナ両ダンゴ用のプロトタイプを持ち込んだ。ほぼ完成形とのことなのでその詳細を別項に紹介したが、特徴は最近あまり見かけなくなったグラスソリッド製の足。現在多くのウキは耐久性に優れやや比重の軽いカーボン製が主流となっているが、あえてグラス足にこだわった理由は立ち上がりの速さと座りの良さ。水面直下に群がるへら鮒に激しくエサを揉まれるカッツケ釣りでは、昔からアタリを取りやすくするための工夫が色々と施されてきた。最近の傾向としては立ち上がると同時に出る“振れアタリ”が激減したためなのか、ややなじませ気味にしてアタリを取る傾向が顕著になっている。その際ウキの突き上げを極力抑え、食いアタリを識別しやすくするための工夫がソリッド足になった理由なのだ。
 

 
 
カッツケ両ダンゴ釣りの効果的な攻め方として、ナジミ際の早いタイミングのアタリを確実に捉えるために、エサ打ちは「落とし込み」ではなく「やや振り切り気味」とするのが中澤流だ。これは落とし込みでは弛みやすいハリスを、エサの着水後からナジミきるまで弛ませることなく、どの位置(タナ)で食ってもアタリをウキへと確実に伝達させるためのテクニックである。ならば「完全振り切り」の方がより効果的なのではと思われるかも知れないが、大型べらの特性で着水直後にためらうことなくエサを食わない現状では、ハリスカッツケ(オモリのすぐ上にウキ止めゴムが来るようなセッティング)を除き、非常に短い距離ではあるが“追わせる”感じが必要不可欠であると中澤は考えており、その具体策が「やや振り切り気味」のエサ打ちなのである。 さらに“追わせる”意識としての対策として、カッツケ釣りにしては長めのハリスの長さも中澤らしい対策である。理想は短バリスで追い込んでウキの立ち上がり直後の「チャッ」「スパッ」と決めるパターンとしながらも、そうした昔の決まりパターンに持ち込めることが少なくなった今、新たなパターンを探り当てた結果が“追わせる”カッツケ釣りである。これはエサをタナに入れて(ナジま せて)止めて食わせるのではなく、あくまでエサが動いている間(エサが沈んでいく間)に食わせることが目的で、現在のカッツケ両ダンゴ釣りでは必須の組み立て方だという。これはタナ規定のある釣り場での規定ギリギリの浅ダナ両ダンゴ釣りのイメージに極めて近いため、カッツケ釣りに馴染みのない人でも違和感は少ないだろうと中澤は言う。
 
 
 
 
 
 
カッツケ釣りは単に浅いタナを攻めれば良いというものではない。そこには必ず的確なタナというものが存在する。タナは釣り人の思惑で決めるのではなく、やはりへら鮒の状態に合わせて決めるのがセオリーだと中澤はいう。取材時の中澤はまずウキ下を約50cmにセットしてスタートした。これは当日の釣り場の状況(主に入釣前に池主に訊いた情報)に彼自身の経験値を加味したものを基準に決定したタナであり、どこでも同じという訳ではなく都度変わるものであることをあらかじめ理解しておいていただきたい。さらにタナはこれで決まりという終着点はなく、状況が変化するのに従い微調整を加え続けることが大切だという。 当日のタナ調整は大きく分けてふたつのケースに分けられた。浅くするときは明らかにナジミ際のウキの動きが多いときやエサ持ちが悪いときで、深くするときはサワリが減った時やナジミ幅が大きくなったとき。その調整幅はいずれのケースも最小で約5cm、最大で約20cmであった。中澤は決してタナ調整に重きを置いている訳ではない。あくまでタックルとエサによるアジャスティングを目指した上での最終調整と、時折ウキの動きが緩慢になった際にへら鮒の摂餌を刺激することを目的としている。特に後者はある程度煮詰まったタックルとエサとの組み合わせを変えることなく、限りなく正解に近いところでの微調整が可能であり、カッツケ釣りの必須テクニックとして覚えておいていただきたい。
 
 
今回中澤が使用したエサは3種類。と言っても「Sイエロー」は単品使いなので、ブレンドパターンとしては「ガッテン」と「プログラム」を使用したボソタッチパターンのみというシンプルさ。先ずはエサ使いの核心に迫る前に、個々のエサの特長について見てみよう。
「ガッテン」
浅ダナをターゲットにした両ダンゴのベースエサ。軽めの比重と簡単にまとまるネバリが現代の浅ダナ両ダンゴ釣りにマッチ。単品からブレンドまで対応できる汎用性も秀逸。
「プログラム」
「ガッテン」とは相反する性格を持つ両ダンゴのベースエサ。その最大の特徴はボソタッチながらエサ持ちが良いこと。比重もバラケ性も中程度であるため、ベースとなるエサの性格を殺すことなく自らの特性を主張できる万能タイプの基準エサ。
「Sイエロー」
釣り方限定・単品使いという新コンセプトから生まれた浅ダナ両ダンゴ専用エサ。適度な比重とまとまりの良さはタナを安定させて釣り込むのに最適。中澤はタナ規定のある釣り場ではこれをメインに釣りを組み立てているが、カッツケ釣りにおいてもその安定性は手放せないと太鼓判。

これらを状況により使い分ける訳だが、前述のレシピを基準としてブレンドエサの場合はその比率を変えたり、単品使いの場合でも水量を変えてタッチを変化させたり、後から麩材を足したりしてボソ感を増したりするのが中澤流だ。またエサ付けサイズも直径10〜15mmと幅広い。実際エサ持ちが悪くなった場面で直径15mmのエサ付けにしていた訳だが、正直このサイズはカッツケ釣りにしては規格外のエサ付けと言えるが、こうしたセオリーに囚われない自由な発想をするところが如何にも中澤らしいところである。
そしてこれが最も彼のエサ使いを象徴するテクニックだが、エサ合わせは基本的には基エサの一発合わせで、麩材と水をボウルに入れたら一気に高速撹拌を施して仕上げる。短時間で使い切ることを前提としているため一度に作る量は最大でも麩材500ccで、エサのタッチを煮詰めていく段階では僅か200ccで作ることもある。エサ作りの頻度が増えるため多少忙しくなる面がある一方で、常に経時変化の少ない新鮮なエサを投入することができるというメリットを最大限活かしたエサ使いを旨としている。中澤いわく、
「かつてはとにかく練り込んだヤワネバタッチオンリーのエサ使いが主流だったが、最近は麩の粒子が潰れた状態では満足にアタリが出せなくなっているのが現状なんだ。そのため常に“麩が立った状態”のエサを使うことがカッツケ両ダンゴ釣りでは大切なポイントになる。ところが多くの釣り人がイメージする麩の粒子感が残った“麩が立った状態”というのは、水分が少なくボソ感が強過ぎることが多い。たとえば「ガッテン」を4:1で作ったエサはかなりシットリしたタッチに仕上がるが、これでも練っていなければ“麩が立った状態”と考えて良い。麩は時間と共にネバリを生じてしまうので、途中で麩の立ち具合を強化したければ麩材を直接振りかけて混ぜ込めば良いんだ。とにかく作ったエサを自分の手でいじ
くり過ぎないことが肝心で、手を加える程にエサは壊れてしまうと自分に言い聞かせると共に、本来エサが持っているポテンシャルを信じ切ってやることが大切なんだ。それに練り込まないエサは誰にでも同じようなタッチに仕上がるので、僕のレシピを参考にして大いにカッツケ釣りを楽しんで欲しいね。」

 
 
   
  とにかく中澤は良く動く。チョット目を離した隙にウキが変わっていたりハリスの長さが変わっていたりする。これは単にせっかちというレベルの問題ではなく、彼のへら鮒釣りに対する一生懸命さであり真摯な姿勢の表れでもあるのだ。確かに彼のバイブルに「座して待つ」という言葉はない。常に自ら先んじて動き、状況を打開しようと試みる。ときにそれは失敗に終わることもある。しかしへら鮒に任せて動かない方が後悔するので、とにかく動いてみることを優先するのである。 動く上で筆者が気づいた点がある。それは効果がなければ4〜5投で見切り、速やかに元に戻すこと。またその変化から更なる変更に着手することだ。カッツケ釣りはそうしたへら鮒からの回答が早い釣りだ。ダメならダメ、良いなら良いという答えがスピーディー且つダイレクトに伝わってくる特徴がある。中澤にはこうしたやり取りを心から楽しんでいる風が見られる。カッツケ釣りは、恐らく最もエサ慣れした学習能力の高いへら鮒を相手にする釣り方である。ゆえに釣るためにやることは非常に多く複雑である。また正解不正解の判定が残酷なまでに鮮明に表れる。つまり釣れる釣れないの差が大きいのが特徴であり、このサイトの読者諸兄はこの事実をモチベーションに、この夏是非カッツケ両ダンゴ釣りにチャレンジしていただきたい。
 
 
 
   
  エサ打ちやアタリのスピードばかりがクローズアップされがちなカッツケ両ダンゴ釣りだが、刻々と変化する時合いに遅れを取らない中澤のきめ細やかな対処方法を目の当たりにすると、スピードはむしろこうした目立たない裏方作業こそ真に求められるものではないかと気づかされる。 中澤は言う。
「盛期のへら鮒の生理現象でもあるウワズリをそれほど気にすることなく、状況に応じてタナを変えて釣り切れるカッツケ釣りは、ある意味たいへん理に適った釣り方だよね。食いが良いときはそれほど苦労することなくいきなり決まってしまうことも稀にはあるが、へら鮒が大型化した近年の管理釣り場では、タックルのアジャスティングを始めとしてエサのタッチやエサ打ちのリズム、アタリの取り方など実に多くのことを同時に、また複合的に考えないと決してパーフェクトに決めることはできないんだ。いくらタナ規定がないからといって、タナを自由に変動するだけでは簡単には釣れないのが現実という訳。タイトルにあるストロングスタイルとは、小手先のテクニックで乗り切るというその場凌ぎの薄っぺらな釣り方ではなく、深宙両ダンゴ釣りのような重厚な組み立てで釣り込む強い釣り。是非この夏はカッツケ両ダンゴ釣りでレコード更新と行こうじゃないか!」

 
   

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