へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第9回 真夏のシンプル&イージーフィッシング 伊藤さとしの浅ダナヒゲトロセット釣り


  日々複雑化する現代へら鮒釣り。悩まずに簡単に釣りたい、できるだけシンプルに釣りたいと思う気持ちはすべてのアングラー共通の願いだ。しかし、本当にへら鮒釣りは複雑で難しいのであろうか?いや、そんなことはない。難しくしているのは釣り人自身であり、へら鮒のせいじゃない。へら鮒釣りは本来シンプルでとても簡単な釣りなのだ。それを証明すべく立ち上がったのはご存じマルキューインストラクター伊藤さとし。隼人大池を釣り場に選び、これから盛期を迎えて活躍する機会が増えるであろう「浅ダナヒゲトロセット釣り」を易しく、そしてシンプルに解説する。  
     
「セット釣りというと2種類のエサがあって、何やら難しい釣りというイメージがあるかも知れないが、このヒゲトロセット釣りはとてもシンプルで簡単な釣り方なんだ。」
伊藤はこう言って、ヒゲトロセット釣りへアプローチすることに二の足を踏んでいる、多くの悩めるアングラーのハードルを下げた。というよりも、むしろ自ら難しいと考えている(実際に難しくしてしまっている)ことへの誤解を解こうとしたのである。先ずは伊藤がシンプルで簡単な釣り方だという理由。それは正にヒゲトロセット釣りのメリットそのものであった。

1.明確なアタリで釣れるので食いアタリを見極めやすい
両ダンゴではへら鮒が寄り過ぎてウキの動きが複雑になるときでも、バラケエサひとつだけで寄りをコントロールし適度な寄りを保つことで、ウキの動きを抑えながら本来の食いアタリを判別しやすい状況を維持しやすい。

2.カラツンが少ない

前述の寄り過ぎとも関連するが、常に適度な寄り状態をキープすることでスレやカラツンが抑えられる。また短バリスという基本セッティングがカラツン抑制に大きく寄与していることも見逃せない。

3.タナが作りやすく良型が揃う
徹底した深ナジミを実践することで表層にガサベラ、狙いのタナに良型ベラという棲み分けが可能になり、結果として比較的食いの素直な良型ベラが揃うことになる。ある意味良型のへら鮒が釣れ始めたらタナが分かれて時合いが近づいた証と言えよう。

4.タッチの幅が広くエサ合わせが簡単
両ダンゴは寄せとクワセの二役をこなさなければならないため、エサのタッチの合う幅が狭く、慣れないとエサ合わせに大変苦労することになる。しかしバラケひとつのヒゲトロセット釣りでは、食ってもまったく構わないタッチのバラケを軸とすることから、上下どちらでも食える条件が整うため、エサ合わせの苦労は軽減される。

5.エサ付けが簡単で早い回転の釣りが可能
浅ダナの釣りはテンポとリズムが命。両ダンゴではエサ付けがモタモタしてしまいがちなビギナーでも、まとまりの良いバラケ1個で勝負できるため簡単にエサ付けができ、結果として回転の速い良いリズムの釣りが可能になる。さらに伊藤は続ける。
「基本的なタックルも既に煮詰まったセッティングになっているので、ウキのアジャスティングやこまめなハリスワークは必要ない。とにかくエサの性能を信じてバラケをタナまでナジませ、コンディションの良いへら鮒だけを寄せることに注力すれば、必ず寄りきったへら鮒が良いアタリをだしてくれるはず。これこそがシンプル&イージー釣法の極意だよ!」
     


   
   
釣りの軸となるタックルセッティングも可能な限りシンプルにまとめる。良いアタリを導き出すためにはへら鮒に対しても、また釣り手に対してもストレスを感じさせないセッティングを心掛けることが大切である。加えてスタート時点である程度煮詰めたセッティングとすることもポイント。こうすることで細々としたアジャスティングの煩わしさから解放されるのだ。
 
■サオ
サオの長さは規定最短尺から長くても12尺くらいまでがストレスもなく釣りやすい。長さの選定基準は周囲の混雑状況やポイントの環境が決め手となる。混雑度が高まるほどに長くなる傾向だが、他にも浮き桟橋では短めでも陸釣り(固定桟橋)では長めが有利となるなど、釣り場の状況を的確に判断して長さを決めることが大切である。また浅ダナの釣りの泣き所である流れを軽減するため、少しでも流れに対して抵抗力が得られる桟橋の下にある発泡スチロールなどの隙間の有無や、釣り場全体の水流に影響を及ぼす風向きにも配慮したい。
 
■ミチイト
盛期の釣り方なので丈夫であることは必須条件だが、浅ダナの釣りに適したラインは単に硬いものではなく、張りはあっても沈みの良いしなやかなタイプが望ましい。太さの基準は0.8号で、大型ベラ主体の釣り場でもこれくらいの太さで十分通用することは取材時、伊藤の隼人大池での数釣りの結果が証明している。
 
■ハリス
短バリスが基本のヒゲトロセット釣り。太さと長さの基準は上=0.5号−8cm/下=0.5号−15cm。ウキの動きが悪いときは上下共2cm程伸ばす。段差は早いアタリがでるときは5〜6cmに詰め、やや待ち気味のタイミングとなるときは7〜8cmとすると良い。
 
■ハリ
上バリはオーナーばり「バラサ」6号を基準とし、柔らかめのバラケを使うときはエサ持ちを強化するため7号とする。下バリはヒゲトロ専用に開発されたオーナーばり「とろ掛」5号を基準とし、へら鮒のアオリが強くナジミが悪い(トロロの持ちが悪い)と感じる場合は6号とする。伊藤はヒゲトロセット釣りの際はチチワ付の糸付きバリを愛用する。市販のハリスケースでは2〜3cm単位で異なる長さの短バリスのストックが困難であるためだが、オーナーばりの糸付きバリは、ヒゲトロセット釣りで多用するこの領域の長さとサイズを完全にカバーしている。
 
■ウキ
エサを完全にナジませて止めて釣るときはパイプトップ(扶桑「フラッシュ」)を、少し動かしながら釣るときはムクトップ(一成「ピンクチャカ」)を使うとアタリが取りやすくなると伊藤は言う。浮力も小さ過ぎるものは使い難く、エサをナジませて釣るという軸をブラさないためにも、ややオモリ負荷量の大きめのものを使うことを推奨する。
 


 
 
すべての釣りに言えることだが、上手く釣るためには水中をイメージすることが大切である。今回伊藤はヒゲトロセット釣りの基本的なメカニズムを理解して欲しいと、水を張った水槽(アクリルケース)を釣り場に持ち込んだ。釣りを簡単にするためには、先ず疑念や妄想は払拭しておかなければならない。そのための“みえる化”であるが、別項写真にあるようにバラケとトロロの位置関係や、バラケた粒子がトロロに覆い被さる様を目の当たりにすると、バラケに誘導されて近寄ってきたへら鮒がトロロを吸い込むイメージを思い描くのに大いに役立つ。
写真からも分かるように、上下のハリが完全にナジミきった状態では、上から落ちてくるバラケの粒子が下にあるトロロに被さるようにまとわりつく。この状態ができるとへら鮒は違和感なくトロロを吸い込む。ちなみに高活性時のへら鮒は好んで麩エサ(バラケやダンゴエサ)を口にする。但し、いきなり近寄ってきて一気に吸い込むか、小さく解けるのを待ってゆっくり近づいてきて吸い込むかは状況により異なる。いずれにしても容易にバラケに近づき、その至近に位置する麩の粒子の付着したトロロを誤飲するのが、如何に必然的でシステマチックであるかがお分かりいただけよう。そして伊藤は言う。
「ヒゲトロセット釣りは、この水中イメージをしっかり持って臨むことが大切なんだ。チョーチン釣り等でタナが深かったりハリスが極端に長い釣りでは想像するのが難しいが、タナが浅くハリスが短いこの釣りは、ウキのナジミ具合でエサの位置やハリスの張り加減をイメージしやすい。だから的確にへら鮒の状態を読んで、早めの次の一手(対処方法)が繰りだしやすいんだ。」
 
 
 
エサを持たせるということは現代へら鮒釣りのキーワードのひとつ。ヒゲトロセット釣りも例外ではなく、むしろ持たせ過ぎるくらいにした方が良い釣り方と言えよう。伊藤の解説では、この釣りで抜きバラケを考える必要はないと言い切っている。勿論アプローチのひとつとしてバラケを適切に抜くことで実績を出しているアングラーも大勢いるが、この使い分けを的確に行うことは至難の業であるため推奨はできないという。 ウドン系固形物をクワセにしたセット釣りでは、バラケを食われることを潔しとしない風潮があるが、この釣り方はバラケを食うことをむしろ歓迎している。バラケへのヒット率が高ければそれだけ麩エサへの興味が高いということで、そのままヒゲトロセット釣りを続けても大釣りの可能性があるし、さらにへら鮒のコンディションが良ければ両ダンゴで爆釣というシナリオも現実味を帯びてくる。
バラケを持たせて深ナジミさせるコツはバラケのタッチとエサ付けにある。伊藤のエサ付けパターンは大きく分けると2パターンに絞られる。ひとつはスタート直後や中断後の寄せを意識したもの。もうひとつは寄っているへら鮒を効率良く確実に釣り込むパターンだ。前者はやや圧を抑え気味にした水滴形に近いラフ付けで、エサ付けサイズは直径17mm前後。後者は圧を加えた球形で、エサ付けサイズは直径15mm前後である。打ち始めは最もネバリが少ないボソの状態でスタートするが、へら鮒を早く寄せようとしていきなり極端なラフ付けをしたり、ハイテンポな打ち返しは避けた方が無難だという。これは狙いのタナである水面から1m前後のタナに集中して寄せるための心得であるが、短時間で素早く寄せるのと時間をかけてじっくり寄せるのとでは、寄るへら鮒のタナと性質が異なることがあることを加味してのことでもある。
伊藤の狙いはあくまでシンプル且つ簡単に釣ること。従ってウキの動きを複雑にするガサベラが数多く寄せることは避ける方針だ。そのためバラける粒子に敏感に反応するガサベラを刺激せずに、やや開きを抑えたバラケでコンディションの良い良型ベラをタナに呼び込むことを心がけているのである。


■深ナジミを簡単に可能にするバラケエサのキモ、
それは『プログラム』

さて時間をかけてゆっくり寄せていたのでは周囲に寄せ負けしてしまうのでは?」という不安を抱いている皆さん、その心配を払い除けてくれる強力なパートナーが「プログラム」であることにお気づきだろうか。今回伊藤が推奨するバラケブレンドのすべてに加わっているのが、この「プログラム」。比重もバラケ性も中程度で性質は至ってマイルドなものだが、特筆すべきはボソタッチでありながら簡単にまとまりエサ持ちが良いという点である。これはボソタッチのエサ使いに不慣れなビギナーでも、またエサ付けの際に的確に圧を加えるのが苦手な人でも簡単にタナまで持つエサ付けが可能になり、しかもタナに届いたところで膨らみ始めるので、集魚力に劣る心配はまったくない。しかもエサの芯が柔らかくなるのが早いためカラツンが少ないという効果も期待できる。すなわち「プログラム」は現代ヒゲトロセット釣りにはなくてはならない重要な役割を担っているメインキャストなのである。
 
実釣時の伊藤は常にサオを動かし続け、アタリを導き出していた。しかしこれはエサを動かすためのサソイではなく、ナジミ際のラインの弛みや流れによる糸フケを取るためのロッドワークである。極論すればヒゲトロセット釣りでは一般的なサソイは無用とも言いきる伊藤。その真意は、やはり釣りをシンプルに組み立てるために他ならない。 先の実践心得:其のIにあるような深ナジミを確実に実践できれば、時間の経過と共に次第にコンディションの良いへら鮒がタナに寄り、これにより自ずとウキの動きが整然とパターン化され、明確なアタリが持続するようになるという好循環が構築される。つまり無理にロッドワークに頼らなくてもコンスタントに釣ることは可能なのである。しかし、名手伊藤がこれだけで終わるはずもなく、あえてここではプラスαのテクニックも合わせて紹介しておこう。

■狙うべきアタリ
アタリパターンI 【トロロがナジミきる直前、上層から追ってきたへら鮒が食うアタリ】
上層に寄るガサベラとタナに入る良型がある程度分かれる前に多く出るアタリで、深ナジミした瞬間に「チクッ」と1〜2目盛り鋭く入るパターン。伊藤はこのアタリを可能な限り拾おうとして、ナジミきる瞬間にサオ尻を引いてラインにテンションを掛け、小さな食いアタリを逃すことなくウキに伝えようとしていた。食いが良いときはタナができあがってからも頻繁に出るとのことで、食いアタリ全体の3割くらいがこのアタリになるときは大釣りになるという。

アタリパターンII 【バラケが膨らみ、トロロに麩の粒子が被り始めた時点のアタリ】
これが基本の食いアタリで、常にこれを持続させることに注力することが大切である。食いが良いときはナジんで直ぐに「スパッ」と豪快に消し込むアタリがでるが、若干待ち気味になることも少なくない。但し待ち過ぎは禁物で、特にウキの上下動が激しいときはナジミ幅が出ていてもエサがハリから抜けてしまっている可能性が高く、大抵はバラケが残っているときに食いアタリがでることが多いことからも、できるだけ早めの打ち返しを心掛けることが肝心だ。

アタリパターンIII 【エサがナジむ途中でウワズったガサベラが食ってしまうアタリ】
これは狙うべきアタリではないが、これが頻繁に出るようであればウワズリが極まった状態となり、遅かれ早かれ釣れなくなる恐れのある危険な状態といえよう。ウキの動きとしては立ち上がりにもたつき、ボディが水面上にでた状態で止められたままになるか、立ち上がった直後に横に走ったり、そのまま激しく水中に突き刺さるアタリになる。このような状態にならないためには、再三述べているようにエサ付けを丁寧にしてしっかりなじませること以外にはない。

■カラツン対策
ヒゲトロセット釣りは元来カラツンが少ないものだが、活性が不安定な梅雨時や盛期もピークを過ぎる頃にはへら鮒の食いも落ち始める。そのようなときのカラツン対策についても、極めて単純且つ明快に対処するのが伊藤流。それはバラケとトロロに照準を合わせた、誰にでも実践できる実に簡単な対策である。
バラケが原因によるカラツン
早いタイミングのアタリはバラケに原因があることが多い。この場合バラケのタッチをややシットリさせると同時に、バラケへの反応を抑えるために開き(膨らみ)を抑えた丁寧なエサ付けを心掛ける。タッチの調整は別に取り分けたボウルのエサに少量の手水を垂らし、そのまま練らないように五指を熊手状に開いて撹拌するだけのシンプルなもの。これをアタリが安定するまで数回繰り返すが、強いアタリがで難くなったら行き過ぎと判断し、基エサに近いタッチに戻すことも忘れてはならない。

トロロが原因によるカラツン
トロロは引っ掛ける量が多過ぎても長過ぎてもカラツンを誘発することがある。もちろんハリから抜けてしまっては食いつくことはないが、意外にこれがカラツンを引き起こす原因となっていることがあるという。この場合エサ持ちを一時的に強化するために、トロロの垂れた部分をハリのフトコロにクルクルと巻き付ける方法が効果的で、これだけで簡単にカラツンが収まることがるので是非試していただきたい。またトロロへの興味を強めるため、降り掛かるバラケの粒子以上に麩をまとわせる方法として、あらかじめ麩材をトロロに仕込んでおく方法も有効である。その準備は簡単で、小皿に入ったヒゲトロに「とろスイミー」を適宜振り掛けて差し込むだけ。ある意味「とろスイミー」本来の使用方法に回帰した方法である。
 
 
   
  単純且つ簡単に釣ることこそ難しいのでは?という疑念を持つ人にこそ、伊藤の提唱するシンプル且つイージーに釣れるヒゲトロセット釣りを信じ、そしてチャレンジして欲しい。さすれば如何に今までの釣りが遠回りであったか、自ら難しくしていたかが分かるはずだ。
「僕らの仕事は簡単に釣る方法を見つけ、それを皆さんが簡単に真似できるよう体系づけること。確かに難しい時合いというのはあるが、余程のことがない限り釣り切れないことはない。僕は最近、釣りを難しくしているのは釣り人自身なのかも知れないと感じている。今回紹介したヒゲトロセット釣りは、基本的にはへら鮒の活性が高く釣れる時期の釣り方だから、できるだけシンプルに釣ることを心がけた方が良い。色々やり過ぎるとウキの動きが複雑になり、肝心の食いアタリがで難くなり、ときには識別できないほど複雑に動いてしまうことになるからね。
良い釣りをするためのポイントはふたつ。「プログラム」ベースのバラケの性能を信じ、毎投しっかり持たせて良いへら鮒をタナに集めたら、あとはハッキリしたアタリに合わせるだけ。これだけで両ダンゴに負けない釣りができるはずだよ!」

 
   

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