へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第10回 速攻・ナジませ、なんでもござれ! 小山圭造の変幻自在 マルチペレ宙釣り


  ペレ宙が盛夏の浅ダナ釣りの代表格であることに異論を挟む余地はない。しかし旬の釣りであることは分かっていても、具体的にどう組み立てていったら良いのか分からない、シーズンになると毎年チャレンジしているが、上手く釣れないといった悩みや苦手意識を持つ釣り人は少なくない。 そこで今回の釣技最前線では梅雨明け後の本格シーズンを前に、ペレ宙を多角的且つ複合的に研究し自らの大きな武器としている、マルキユーチーフインストラクター小山圭造に富里乃堰で最新ペレ宙釣りの必釣法を紹介してもらい、悩めるアングラーに思う存分ペレ宙を楽しめる術を伝授してもらうことにする!  
     
近年そのスタイルを大きく変貌させたペレ宙釣り。かつて一世を風靡した重く濃いペレット系のカタボソ両ダンゴエサを大ウキ・長ハリスで力づくでタナにねじ込んで、ドッカンドッカンアタらせるスタイルは鳴りをひそめ、現在では軽く薄めのペレット系両ダンゴをデリケートにタナに送り込むスタイルの、いわゆる「ライトペレ宙」と言われる釣り方がスタンダードに取って代わった。 ところがこのライトペレ宙も言葉で言うほど単純なものではなく、現在ペレ宙の名手と言 われるアングラーの釣り方を見ても千差万別。 実に様々なアプローチの方法があり、これが王道だと言えるような教科書的釣り方が確立されていないのが実情である。
「そんなに難しく考える必要はないんです。ペレ宙は決して特別な釣り方ではないんですから、もっと気楽に考えればたくさん釣れますよ。むしろ釣りを難しくしているのは知識や理論をたくさん詰め込ん だ頭でっかちの考え方であって、釣りに対して自然に体が動くようなナチュラルな考え方・釣り方で臨めば必ず釣れるはずなんです!」
こう言って小山は多くのアングラーが抱くペレ宙に対する難しいというイメージを払拭しようとするが、その言葉の奥底には無理矢理力づくでへら鮒を制圧(コントロール)するのではなく、その日その時目の前にいるへら鮒がエサを食いたくなるような条件を整えてやるといった、ある意味謙虚な姿勢・自然体が大切であるというメッセージが込められている。

     
両ダンゴの時期に入ると小山はペレ宙釣りを好んで選択する。それには当然のことながら理由がある訳だが、それは概ね次の4つにまとめられる。
1.へら鮒の寄りが良い(集魚力が強い)
普通の麩系エサよりも集魚力が強いためへら鮒の寄りが早く、持続性もあるのでリズムのある釣りが可能になる。また混雑時でも寄せ負けしないのもメリット。
2.アタリが明確(アワセやすい)
高活性時の極めて食いが良いへら鮒がターゲットになるため、食いアタリは明確でアワ セやすいのが特徴である。さらに状況に合ったウキを選択することで、激しく寄る状況下でも無駄な動きに惑わされることなく食いアタリを識別できる。
3.ウワズリ難い(カラツンが少ない)
一般的な麩系エサに比べると比重が大きいため、タナが安定してウワズリ難い状況を維持できる。このことはへら鮒の無用なハシャギを抑制することにもつながり、結果としてカラツン(主に糸ズレの動き)が少ないスマートで綺麗な釣りが可能になる。
4.平均して良型が揃う
ペレットエサを好む大型が寄りやすく、結果として大型が釣れる確率が高まる。特にタナが安定し時合いが到来したときの型揃いの釣り込みは圧巻で、釣るほどに型が大きくなるのに加えてダブルでハリ掛かりすることも多くなる。よってある程度時間をかけられる大会・例会では重量を稼ぐうえで絶対に外せない釣り方である。



   
 
■サオ
一般的な浅ダナ両ダンゴの釣りが規定最短尺を基本とした短めのサオであるのに対し、ペレ宙は少しでもコンディションの良い良型混じりで釣ることを狙いのひとつとしているため、やや長めのサオを使うのがセオリー。よって最短でも11尺以上で、日曜日などの混雑時には更に長めのサオが良くなる傾向。ただし、何でもかんでも長めのサオが良いということではなく、大切なのは両サイドと長さを揃えないこと。またひとりだけ長ザオで攻めると、周辺のガサベラまで独り占めしてしまうリスクがあることも承知しておかなければならない。
 
■ミチイト
沖目を攻める浅ダナということで、ミチイトに求められるポテンシャルはしなやかさと張りのバランス。さらに早いアタリに対して沈みの良いラインは、それだけでアドバンテージとなる。加えて良型主体の数釣りになるため耐久性も重要な選定要因。今回小山はやや長めの16尺で実釣に臨んだことで0.8号を選択。盛期の釣りでもあり、さらに大型が揃う釣り場や短めのサオを使う場合は、自らの操竿テクニックとも相談して太めのものにしても問題はない。
 
■ハリス
ハリスの長さは臨機応変に対応するのが小山流。ところが今回の実釣では、スタート時にセットした40cm/50cmという長さを一度も変えることはなかった。これは偶然一発でアジャスティングが決まったということではなく、釣り場のへら鮒のコンディションが良かったことに加え、小山自身がエサのポテンシャルを100%引き出して使い切っていたことが大きな要因となっていた。小山がこの釣りで最も重要視するのは“ウケ”。すなわちウキが立ち上がったところでナジむ前に一定時間静止する動きや、ウキのボディ部分が水面上にでて小さく突き上げられるような動きを毎投だすこと。これがあるのと無いのとでは、アタリに対するヒット率に雲泥の差が出てしまうという。 このウケがでていれば、エサ持ちやカラツン軽減の意味からもハリスは短い方が良い。小山自身も上10cm/下15cmのペレ宙で決まることもあると言い、何cmではなくてはならないという先入観をもつことは大変危険であると注意を促す。
 
■ハリ
ペレ宙で小山が使用するハリは上下共ハヤブサ鬼掛「軽量極関スレ」6号が基本となる。関スレタイプはいわゆる万能型であり、さらに軽量化が図られた同ハリは小山が意図するウケをだすために一役かっている。小山はペレ宙のカラツン対策として小エサへの移行を勧めるが、その際ハリをサイズダウンさせることでエサ付けを小さくせざるを得ない状況を作り、再びエサが大きくならないようにすることができるという。
 
■ウキ
ペレ宙という浅ダナの釣りにも関わらず、あえて深宙用のウキを選択した理由は、やや硬めのしっかりしたタッチのエサを上層から追わせて良型を仕留めるという、小山流の明確な狙いがあってのことである。太めのPCムクトップは小エサでもナジミ幅を出しやすく、加えてウキの立ち上がり直後の激しい突き上げを抑える効果があるので、アタリが識別しやすいというメリットがある。
小山のペレ宙がマルチペレ宙と評されるのには、こうしたアプローチだけが小山流のペレ宙ではないことを証明する訳がある。そのひとつがウキ使い。短めのサオで臨む場合、それも梅雨明け頃から本格的にペレ宙の時期を迎えると、ヤワネバタッチのエサでナジミ際の早いタイミングでの速攻の釣りが決まるようになる。これこそが小山らしい浅ダナ両ダンゴ釣りなのだが、そのときにマッチするのは浅ダナ専用の水峯パイプトップ浅ダナ用五番【1.6-1.0mm径テーパーパイプトップ7cm/6mm径二枚合わせ羽根ボディ5cm/1.4mm径カーボン足6cm/オモリ負荷量≒0.8g/エサ落ち目盛りは全8目盛り中6目盛りだし】。このように同じペレ宙でも複数のアプローチ方法があり、それに合わせてエサもタックルも変化させるのが小山流マルチペレ宙の神髄なのである。
 
 
小山のペレ宙を支えるエサは紛れもなく「ペレ軽」である。自らが開発に深く関わったこのエサの特徴は優れた集魚力と比重の軽さ。さらにペレットエサの最大の欠点であるネバリの発生(経時変化の早さ)を極限まで抑えたタッチは、小山が狙いとしている「良型を分厚く寄せて強烈にアピールさせながら釣り込む」というスタイルを容易に手に入れられる仕上がりとなっている。
「数年前から重いペレットエサでは明らかに釣れなくなりました。ハッキリ言って以前のような重いエサでは、現在のペレ宙では通用しません。これはエサの落下速度が速いと、へら鮒がタナまで追いきれなくなっていることの証です。よって軽めのペレットエサを軸にすることが必要不可欠です。また以前は有効であったぺトッとしたネバリのある軟らかなタッチのエサに対しても、盛期のへら鮒の反応は良くありません。よってボソ感の残るエサであることも大切な要素なのです。こうした現状を踏まえると、現代ペレ宙を釣り切るためにはペレットの長所である集魚力とタナの安定性だけを活かして、重さやネバリといった欠点を排除したエサが必要になるのです。」
小山は「ペレ軽」誕生の背景をこのように述べ、さらにエサ慣れしたガサベラ対策としてエサ持ちを強化する目的でブレンドする「ガッテン」についても次のように解説した。
「このエサは僕の宙釣りのほぼ全てに関わる、まさに中心軸的な意味合いを持つエサです。現代のへら鮒釣りのエサのキーワードは軽くてネバリがあって持つエサ。「ガッテン」はまさにこうした特徴を持ったエサですが、一般的にネバリがあるエサは重くなるのが常で、軽くてネバるエサと言うのは実は作るのが難しいんです。それを可能にしたのが「ガッテン」で、この軸を先ずはしっかりと押さえておき、あとは釣り方や状況によって何を合わせていくかということがブレンドを考える上での柱となります。たとえば、今回のようにペレ宙であれば「ペレ軽」と組み合わせ、普通の浅ダナ両ダンゴであれば「天々」をブレンドするだけでOK。深宙釣りであれば「天々」と「ダンゴの底釣り夏」を加えるだけでOKというように、できるだけシンプルにエサを組み合わせた方が、個々の特徴を最大限引き出すことができるはずです。」
 
 
 
取材時の小山のアプローチはペレ宙最盛期のそれではなく、その一歩手前の活性時というか、ややソフトな組み立て方の釣りであった。しかしその釣り方は確実に当日の状況にマッチし、数・型共に最盛期を彷彿とさせる釣り込みを披露してくれた。 マルチペレ宙のコンセプトは時々刻々変化する釣況にあらゆる要素をマッチングさせるところにある。しかし小山ほど釣り場に出て実践で鍛えられたアングラーは少なく、一般的には釣行回数の限られたサンデーアングラーが多いのが現実だ。そこで小山はマルチペレ宙の中でも基本となる3つのパターンに絞り込むことを提唱する。それぞれの特徴は以下の通り。

1.ミドル系ペレ宙

ひとつめは今回実践で魅せてくれた、いわばミドル系ペレ宙釣り。エサは「ペレ軽」300cc+「ガッテン」200cc+水100ccのカタボソタッチを基本とし、サオは中尺からやや長めを使用し沖目を狙う。ウキはやや大きめ(深宙用PCムクトップ)でハリスも長め。ボソタッチを活かしたエサ付けでナジミ際にウケ・サワリをだし、ややアタリを送りながら深ナジミしたところで「ズバッ」と消し込むアタリを狙う釣り方。早期のペレ宙で効果的な釣り方であると小山は言う。
2.ライト系ペレ宙
盛期に活躍するパターンで、エサは「ペレ軽」200cc+「ガッテン」200cc+水100ccのヤワネバタッチ。サオは回転と取り回しを考慮し11尺くらいの短めをチョイス。ウキは小さめ(浅ダナ用パイプトップ)でハリスも短め(20cm前後)。ヤワネバの小エサをナジミ際で揉ませて一発で食わせるという、小山が最も得意とする「速攻」パターンのペレ宙がこれである。他のアプローチに比べてやや型は落ちるものの、ノーマル両ダンゴに比べれば型が良い傾向。また攻め過ぎてもウワズリ難いのが特徴で、多少食いが落ちても拾うことができる万能タイプの釣り方である。
3.パワー系ペレ宙
これも最盛期のアプローチ方法だが、エサは「ペレ軽」400cc+「ダンゴの底釣り夏」50cc+水100ccのネバボソタッチ。パワー系とはいえ、可能な限り軽めのエサ使いである。サオは中尺からやや長めを使用し沖目を狙うが、ウキはやや大きめ(パイプトップ)でエサを支え、やや長めのハリスでアタリ返しを狙う釣り方だ。特に表層にガサベラが多く寄って来てしまうようなときに有効で、取材時にも短時間であるが小山に無理を承知で試してもらったところ、なるほどガサベラの層を容易に突破できるのだが、タナに寄った食い気のあるへら鮒がエサを追うにはややエサが重過ぎたようで、アタリの数が激減してしまったのが印象的だった。
 


 
 
取材中、小山は「ペレ宙ではウケをださせ、エサを追わせてアタリを出すためにはエサ付けはとても大事なテクニックなんですよ」と繰り返し言っていた。その言葉の意味が“本当に”分かったのは取材も終盤に入った頃のことであった。この日の天気は梅雨時にありがちな不安定なもので、早朝はどんよりと分厚い雲に覆われ、一時晴れ間が見えたものの突然の降雨。早めの昼食休憩をとっている間の1時間ほどで上がったものの、めまぐるしく変化する天候にへら鮒も落ち着かない様子で、総じて上っ調子のコンディションのなか、なんとかミドル系ペレ宙をほぼ入れ食い状態で決めてくれた。と、そこで釣り座を筆者に明け渡す小山。私に釣ってみろと言わんばかりの眼差しで釣り座を離れて行ったその直後、小山の指先マジックに驚かされることになろうとは…。
代打ち後の一投目。立ち上がったウキはほとんどウケることなく静かにナジみ、そしてPCムクトップは水中に沈没した。交代のわずかな時間で寄っていたへら鮒が散ったと思ったが、その後何投打ち込んでも同じような状態が続いたのである。そしてエサ付けに問題(原因)があるということに気づくまで十数投を費やしてしまい、圧をかけ過ぎずに表面を軽くまとめるだけのエサ付けができた途端に小山と同じウキの動きが復活。あれよあれよというまに連チャン、そして最後はダブルのおまけつき。なるほどエサ付けは大変重要であることが分かったが、正直これほどまでに違いが出るとは思わなかった。
小山のエサ付けについては文字だけでは十分に伝わらないと思い、別項に写真を掲載してあるので参照していただきたい。ポイントはハリをエサの中に入れる以前のエサのまとめ方(圧の掛け方)とハリの位置。エサの下部からハリのフトコロ(軸)が見えるくらいの位置に置き、チモトもキュッと簡単に押さえるだけ。これ以上しっかり丁寧に付けてしまうとウケずに沈没してしまうので、言葉で表現するならば 「見た目は丁寧だが中身はラフ付け」といった感じ。いずれにせよ小山の精細なエサ付けテクニックを知ることができたことは、今後皆さんに釣技最前線をお届けする上で私自身大変勉強になった事例だと言えよう。
 
 
 
   
  かつては豪快なイメージばかりが先行していた夏のペレ宙釣りであるが、現在そのスタイルは一変し、見方によっては極めて繊細な釣りへと変貌を遂げた。その中身は、ある意味まったく別の釣り方へ変わったものと理解した方が早いのではないかと思うくらいの印象を受けたが、そんな心配をよそに小山は飄々と次のように言い、悩めるアングラーにエールを送る。
「現代のペレ宙はコテコテのペレット系両ダンゴ釣りというのではなく、普通の浅ダナ両ダンゴ釣りのペレットパージョンといった感じの釣り方に変わりまし た。但し皆さんが良く言うような画一的なライトペレ宙ではなく、状況に合わせて臨機応変にエサやタックルを変えて行かなければならないような、多角的に攻め方の変更を求められるマルチなペレ宙に切り替わりましたね。この変化に対応できなかった方達が苦労されているようですが、ペレ宙だからといって特別に身構える必要はありません。むしろ普通の釣りの延長。すべての釣りの基本は同じですから、僕の釣りから何らかのヒントがつかめたら、考える前にフィールドに出てどんどんサオを振って欲しいですね。考えるより実行。習うより慣れろです! 技術的にはエサ付けの難しさはあるかも知れませんが、これは是非とも習得して頂きたいテクニックですし、他の釣りにも応用できる大切な要素ですので頑張って会得してください。通常管理釣り場の釣行であれば、少なくても一日300投以上はエサを打ち込めるでしょうから、一投毎に常に意識していれば意外に短時間で覚えられますよ。なにせエサ自体は簡単に作れて誰でも同じ仕上がりになることを保証しますので、エサ付けさえできるようになれば僕と同じように大型のコンディションの良いへら鮒をたくさん釣ることができますよ(笑)!」
 
   

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