へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第11回 時代は繰り返す!今が旬のリバイバル釣法 早川浩雄の浅ダナ両トロロ釣り


  かつて一世を風靡した両トロロの釣り。無造作に両ダンゴで攻めると容赦なく水面に湧き上がる真夏のへら鮒。これを抑制し常に適度な寄りを保ちつつ、規則正しいウキの動きで極めて高いヒット率を維持するこの釣りは、トーナメントシーンは言うに及ばず、夏の定番釣法として必ずマスターしておかなければならない釣り方であったが、へら鮒の大型化に伴いその絶大なる効力は徐々に薄れ、しばらくは表舞台から姿を消したように思われてきた。ところがここ数年、夏場になると両トロロで良い釣りが出来たという報告が少しずつではあるが増え始め、今年に入ってからは、良い条件が揃ったときには他の釣りを凌駕する釣果も出るようになった。 そこで今回の釣技最前線では流行を先取りするべく、かつて両トロロの名手として名を馳せたマルキユーアドバイザー早川浩雄に椎の木湖で両トロロの釣りのハウツーを披露してもらうことにした。トロロの釣りをまったく知らない方は勿論のこと、この釣りを知り尽くしたベテランアングラーも必見の現代版両トロロ釣りの基本テクニックをとくとご覧あれ!  
     
へら鮒釣りには傾向とか流行といった、釣り方の流行り廃りが確かに存在する。そのサイクルは長短様々で、長いものでは数十年周期。短いものでは、昨年は良かったが今年は通用し難いといったように、僅か一年で変化してしまうものもある。今回取り上げた両トロロの釣りはどちらかといえば長周期タイプに属し、一部の釣り場や釣り人の間では地味ながらも連綿と行われてきた釣り方だが、昨年あたりから時折目を見張るような釣果が上がるようになり、一部の釣り場では「両トロロの方が釣りやすく高釣果が得られる」という報も頻繁に届くようになった。このように両トロロの釣りは一時の低迷期を抜け出て、再び脚光を浴びる時代になりつつある予感を禁じ得ない。そんな時の流れに思い巡らしながら早川は言う。
「私自身もしばらく両トロロの釣りから遠ざかっていたが、ここ数年知り合いから両トロロで結構釣れているという情報は得ていたんだ。私が両トロロの釣りから離れていたのは至極単純な理由で、他の釣り方の方が簡単なうえ、たくさん釣れたから。裏を返せば、かつて我々が懸命に両トロロの釣りを研究し実践していた背景には、当時両トロロの釣りが他の釣り方よりもたくさん釣れたからに他ならない。その最大の原因は、魚体のサイズと魚影密度の変化。 当時の管理釣り場は冬でもウキが良く動くように7〜8寸級の中小ベラを大量に放流していた。その効果は絶大で、厳寒期であってもアタリが多く、よく釣れたが、その一方で夏場になるとへら鮒がエサ打ち点に群がり、両ダンゴではまったく釣りにならないくらい揉みクチャにされてしまった。 そこで有効だったのが両トロロの釣り。トロロの繊維とネバリでエサ持ちが良く、しかもエサに含まれる麩の量が少ないため、へら鮒が過剰に寄らず、理想的ともいえる釣りやすい状況が維持できた。その後の変遷は皆さんもご承知のとおり、へら鮒の大型化が進んでへら鮒の数そのものが減ってしまうと、寄せる効果の乏しい両トロロには厳しい時代を迎えることになってしまった訳だ。 ところが近年その大型がスレてきて、両ダンゴは勿論のこと、ヒゲトロセット釣りでもカラツンが多く、釣り難くなってきている。理論的にはセット釣りよりも共エサ(両トロロも広義では共エサ釣りに属する)の方がカラツンは少ないので、寄り過ぎ防止効果と吸い込みやすいエサの軟らかさを併せ持つ両トロロの釣りが釣れるようになるというのは、至極当然のことかも知れないね。」
流行のサイクルはへら鮒の嗜好の変化や釣り場の状況の変化に左右される。それは釣り人の好む好まざるに関わらず、時代の流れで如何ともし難いことではあるが、我々アングラーはそうした変化を察知し、時代に合った釣り方を模索し続けなければ決して好釣果を得ることはできない。早川の言葉はそうした釣り人の心構えを示唆し、変化対応力の大切さを改めて説くものである。

     
今回、早川が両トロロの釣りを推すのには、概ね次のような釣り方のメリットがあるからだ。
1.ウキの動きが規則的なうえ、アタリが明確なので食いアタリを識別しやすい
他の釣り方に比べてエサに含まれる麩の量が少ないことから、夏場によく見られるへら鮒の寄り過ぎを抑えられる。加えて基本的な釣りのシステムとして、エサをタナに入れてからのアタリを取ることが大前提となるため、複雑なウキの動きになり難いという特徴がある。つまり「ウキがナジむ→サワる→戻す(煽られる)→アタる」というパターン化された規則的なウキの動きをだしやすく、しかも食いアタリはほぼ明確な消し込みアタリとなることから、カラツン(強くても消し込まない偽の食いアタリ)と本来の食いアタリを識別しやすいのである。
2.へら鮒の寄り過ぎを抑えられるのでウワズリ難い
先に述べたようにエサに含まれる麩の量が少ないため、両ダンゴやヒゲトロセット等の他の釣りのように寄せ過ぎることもなく、常に安定したタナを構築し、時合いを維持できる。ただし、不用意な早アワセは禁物で、せっかく麩エサによるウワズリを抑えられても、水中に舞い上がり漂うトロロの繊維が多くなると時合いが崩壊してしまう恐れがあるので、焦らずしっかりタナに入れてからの釣りを心掛けることが肝心である。
3.エサの芯が軟らかいのでカラツンが少ない
触った感触そのままに、エサの芯は勿論のことエサ全体が軟らかく水中でフワリと漂うため、へら鮒にとってはまさに吸い込みやすく、カラツンが少ないという特徴がある。ただし、寄せを意識しすぎて麩を大量に混ぜ込んだり、水量が少なく硬めに仕上げたりするとその効果も半減してしまうので要注意。両トロロの基本タッチはあくまで「トロトロ」であり、ダンゴエサのように簡単に指先で丸めることができるものでは硬すぎ(麩材の入れ過ぎ)と判断できる。
4.タナが作りやすく良型ベラを呼び込める(平均して良型が揃う)
エサを完全にタナに入れてから釣るシステムであるため、近年の管理釣り場の傾向である表層にガサベラ(中小ベラ含む)が寄り、徐々にタナ1m付近に良型ベラが入ってくるという時合いにマッチした釣り方といえよう。このため一旦タナに良型ベラが溜まり釣れ始めると、その安定感は他の釣りを完全に圧倒する。ヒット率は言うに及ばず、ガサベラを一切相手にしないため釣れるへら鮒はすべて良型ということも珍しくない。



   
 
■サオ
魚影密度の濃い管理釣り場では、規定最短尺を基本とした短めのサオで十分勝負できるが、今回早川が9尺を選択したのには訳がある。それは取材フィールドである椎の木湖の大型ベラの引きの強さ。特に浅ダナの大型ベラはハリ掛かりした瞬間、一気に沖に走る習性がある。これを瞬時にこらえてあしらうためには、高度なロッド操作は勿論だが、サオとラインが一直線にならないようにする余裕が必要になる。それが規定最短尺(8尺)+1尺という理由なのである。事実、取材中この僅かな余裕があったおかげでハリス切れを防ぎ、ランカークラスの大型を取り込めたこともしばしばであった。なお、野釣りはもちろんのこと管理釣り場であっても混雑している場合は、寄りの不足を補うためにやや長め(13尺程度まで)のサオは当然選択肢に入ってくる。
 
■ミチイト
今回早川は椎の木湖の大型を相手に0.8号で臨んだが、取材後「1.0号で良かったね」というほど、早川の操竿テクニックをもってしてもきわどい場面が度々あった。勿論浅ダナの釣りなのでラインの沈みのよさは必須条件なのだが、アタリのでるタイミングは他の釣りに比べると遅めなので、特別早くウキを立たせる必要はなく、むしろラインブレイクのリスクを回避し、掛けたへら鮒を確実に取り込むためには強度を優先した選択が無難といえよう。
 
■ハリス
ハリスの長さは釣り場やその都度状況により変化するが、両ダンゴよりも長めのセッティングでスタートする方が、そのときのへら鮒の状態がつかみやすいという。この日の早川は0.5号-上35cm/下43cmでスタート。ややアタリ出しが遅いことに、一瞬「短かったか?」とも思ったようだが、その後、充分な量のへら鮒が寄り、エサ持ちが悪くナジミ幅が出難くなった際には、上下共に5cmほど詰めた。しかしこの対処にへら鮒の反応は芳しくなく、ナジミ幅はでるようになったがアタリが激減。すぐに元の長さに戻し、ハリスではなくエサ調整での対応で切り抜けた。
 
■ハリ
大型ベラが多い椎の木湖であったことからエサ持ち重視の観点より万能タイプの「バラサ」6号を選択した早川だが、中小ベラ主体の釣り場であれば5号で充分だという。ただし、トロロのエサ付けに慣れていない人は大きめのハリを選択した方が良いだろう。これはサイズアップすることで繊維状のトロロのエサ持ちを強化することが狙いであり、基本的にナジミ際に追わせながらのアタリを出す釣りではないので、軽さを優先する必要もないためである。
 
■ウキ
両トロロの基本的な釣りの組み立て方に加え、トロロエサの重さをしっかり受け止めるためにはパイプトップが使いやすいという。今回、早川は市販品ではないプロトタイプを使ったが、タナ1mを狙う際の基本的なスペックとしては、ボディ6cm前後でトップはやや長めのパイプトップ(太ければ短めでも可)が適している。
 
 
「ヒゲトロセット釣りの方が実践している人が多いから、両トロロ釣りでの水中のエサの状態をこうイメージしたら親しみが湧くんじゃないかな?」
そう言って早川が示したのが、ヒゲトロセット釣りでのくわせの水中イメージ。それは下バリのトロロに上バリのバラケが降り掛かり、トロロの繊維に麩の粒子が絡んでいる状態。両トロロ釣りでタナに入ったエサの状態をこうイメージすると、ヒゲトロセット釣りで、いつでもアタって来ていい状態のくわせが上下ふたつ付いていると考えることができる。そうすれば必然的にカラツンが少なくヒット率が高いこともうなずけよう。つまり両トロロのエサはバラケを兼ねた集魚効果の高い「くわせ」ということになる訳だ。 またどのような釣り方であっても水中を正しくイメージすることが大切である。目に見える水面上のウキの動きから目に見えない水中をイメージし、エサの開き具合や持ち加減を調節することこそへら鮒釣りの醍醐味であり、釣りをするとき常にこうしたイメージをもって臨む習慣を身につければ、いずれ「へら鮒と対話する」ことができるようになると早川は言う。
 
 
 
標準的な両トロロの釣り方で取材に臨んで欲しいとリクエストしたところ、前述のタックルでスタートした早川のエサ付けサイズは直径15mm程度の球形で、このサイズに目に見える変化をつけることは少なく、概ね同じサイズ・形状のエサ付けを維持するという。エサ付けの際に注意することは必ずエサの下部にハリを位置させ、トロロの繊維をハリのフトコロにすべて引っ掛けるようにハリスを引き抜くこと。そしてチモトは軽く押さえる程度に止め、水中落下時の抵抗を抑える。こうすることでトロトロの軟らかいエサが確実にタナまで持つのである。


さらに打ち始めの時点ではエサの開き(表面のバラケ具合)をエサのタッチや麩材の量でコントロールするのではなく、若干麩材を加えただけの「持つ状態」のエサを打ち込み、タナに届いたところで強めの引き誘いを加えることで開きを促進させる方法を早川は推奨する。実際に水面上5目盛りだしとしたエサ落ち目盛り付近でまったく触らないときは、完全にトップは水中に没してしまう。そこで強めにサオ尻を引くと一旦は水面上にトップ先端1〜2目盛りがでるが、そこで止まることなく再び沈没。この動作を3〜4回繰り返すとやがてトップ先端が水面に残るようになるが、この時点でサワリがなければすぐに打ち返す。その際、両バリのトロロの残り具合に注目すること。このときトロロの繊維が僅かしか残っていないようではレッドカード。明らかな開き過ぎ(この場合トロロ自体に問題アリ)と判断できるので、早急に強いトロロの繊維を追加投入するなどの処置が必要だ。

こうした失敗を犯さないためには、エサ打ち前に水を張ったボウルに丸めたエサを投入し、エサの開き具合(持ち加減)を確かめておくことが肝心だ。繊維が切れ過ぎたものや、麩材の量が多いエサでは表面がバラケてしまい、直ぐにエサの芯が崩れてしまう。また麩材のナジミが悪いとエサが浮いてしまうこともあるので、事前のチェックは怠りなく行いたいものである。

また両トロロの釣りは両ダンゴやヒゲトロセット釣りに比べるとアタリ出しは遅いが、早い段階でウキを動かしているのは多くの場合ガサベラであり、両トロロ本来のターゲットである良型ベラではないのでまったく気にする必要はない。むしろ時間をかけてグッドコンディションの良型をタナに呼び込み、鉄壁の時合いを構築してから釣り込めば良いと割り切れるくらいの、心の余裕が必要だとも言い添えた。

 
 
両トロロの釣りのキモは、なんと言ってもエサ持ちと開き加減。トロロの性質上、繊維さえしっかりしていればエサの芯は極めて軟らかい状態でも崩れることはないため、残るは弱点である集魚効果を最大限引き出し、なおかつタイミングよく食わせるアピール力をどう加えるかにかかっている。そのアピール方法がエサの開き加減ということになる訳だ。

基本的な考え方はこうだ。まず、基エサを最も麩材が少なく、トロロの繊維が長くネバリ(トロロ自体に含まれるネバリ)のあるエサと位置づける。つまりは基エサが最も集魚力に乏しい開かないエサということになる。よってへら鮒を寄せるためには開きを促進する必要があり、その手段として挙げられるのが開く性質の麩材の追加投入とトロロの繊維を切る方法である。しかしこのふたつの方法はまったく異なるアプローチなので、それぞれの効果を最大限引き出すためには重複させることを避けなければならない。つまり開く素材を混ぜることと繊維を切ることを同時に行うことはタブーであるということである。


繊維を切ってしまうと元に戻すことは不可能になるため、手順としては先ず繊維を切らないように注意して開く素材を加えることで様子を見る。この対処方法によりエサの表面から離れる麩の粒子が増え、開きが早くなることでアピール力が増す。また短時間でエサの芯が食い頃に小さくなるためアタリが早く出るようになる。このとき芯が持っていないとアタリがでなくなるので、繊維の強さとトロロのネバリ具合には最大限の注意が必要だ。

次にとるのが繊維を切る方法。強めの押し練りを加えて繊維を切る(目に見えて短くなる訳ではない)が、この方法は麩材を増やすことなく開きを速めることができるので、主に寄りを増したくないときに開きを良くする方法として用いられる。このとき注意することは繊維を切るために練り込み過ぎて麩材のネバリを出さないことと、あらかじめ加えてある麩材の経時変化によるネバリが生じていないことを確かめておくことである。これを怠ると繊維を切って開きを良くしたつもりでも、麩材のネバリが原因で開きが相殺され、せっかくの対策が意味のないものになってしまうためだ。取材時、トロロの名手の早川でさえ、この麩材のネバリによる開きの悪さに一時困惑した場面が見られた。それほど微妙なタッチの変化ではあるが、思うように開きを調整できないときは無理に手を加え続けるのではなく、一旦基エサに戻してから改めて調整に着手するのが賢明だろう。
 
 
   
  近年、釣り場で見かけることが少なかった両トロロの釣りだが、今再びその効果が見直され、花開くときが目の前に迫っているように感じている釣り人は少なくないはずだ。両トロロの威力のほどは古いアングラーであれば誰もが知っている。そして今、実際に釣れる釣り場も少しずつ増え始めている。最後に早川はこう言って締め括った。
「両トロロの釣りの歴史は古く、ベテランアングラーであれば誰もが夢中で研究した極めてスタンダードな釣法なんだ。キャリアの浅い人達の目には何やら特別 な釣り方に映るかもしれないが、私達にとっては昔なじんだ身近な釣り方で、その釣り方が再び陽の目を見ることは大変うれしいことだよね。釣り方自体確立されたものなので、以前と比べて大きな違いはないが、当時とは釣り場の状況も異なるので、リバイバルにあたっては現代版として若干のマイナーチェンジは必要だね。今回そのあたりも含めて紹介させてもらったが特別難しいことは何もない。むしろ今の状態は昔よりシンプルに対応することで簡単に釣ることができる状況かもしれないね。 この釣りに精通した人達は、かつて食用のトロロを大量に買い込み、自然に時間をかけて劣化させる形で二年物、三年物といった古いトロロを作り、それらをブレンドして開き具合を調整したり、「おかゆ粉」などの増粘効果のあるものを混ぜたりしてエサ持ちを強化していたが、今はそれほど手間を掛けなくても既存の市販エサで充分対応できる状況にある。 ただし、若干のハードルは残っている。それは釣り場の状況とタイミング。どういうことかといえば、いつでもどこでも満足できる釣果が得られるかといえば、必ずしもそうではないということ。つまりある程度釣れる(両トロロの実績がある)釣り場であり、しかも気象条件や混雑度等の諸条件が揃う必要があるということだ。良い条件とは大中小のへら鮒がまんべんなく大量放流されている管理釣り場で、晴天、微風、高気温、高水温、高活性。日曜祝祭日よりも空いている平日の方が、へら鮒の寄りがキープできるので釣りやすい。こうした好条件が揃ったときには、ぜひ両トロロの釣りにチャレンジして欲しいね。もちろん、かつてのトロロの名手達の復活も大歓迎だ!」
 
   

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