へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第22回 パワーダンゴで夏の山上湖を豪快に攻める 幸田 栄一の長竿チョーチン両ダンゴ釣り


  夏のへら鮒釣りを代表するのは、何と言っても山上湖のチョーチン両ダンゴ釣りであろう。広大なロケーションのなか長竿を駆使し、深場から大型のへら鮒を抜き上げる醍醐味は、他の釣り方では味わえない爽快さがある。しかしへら鮒の供給を保証されない野釣りゆえの難しさもあり、目の前に居る大量のへら鮒を技術だけで釣りきれる管理釣り場のそれとは、一線を画するテクニックとアプローチが必要であることも事実である。
そこで今回はこの釣りを最も得意とし、今シーズンも既にいくつものブッチギリ釣果をマークしている、関東へら鮒釣り研究会第四代横綱でありマルキユーインストラクターの幸田栄一に、へら鮒釣り発祥の地と称される精進湖において、そのノウハウを余すことなく披露してもらおう!
 
     
へら鮒は「寄せて釣る」ものであることは誰もが知っていることだが、エサを打ち始めれば数投でウキが動き出すほど魚影密度が濃くなった現在、このことを意識しているアングラーはどれほどいるであろうか。ほぼ飽和状態ともいえる管理釣り場は言うに及ばず、野釣りとはいえ毎年大量放流が続けられている山上湖やダム湖でさえ、夏場であれば50kg以上の大釣果を記録することは決して珍しいことではなくなっている。
「確かにトップ釣果を見る限り大変良く釣れてはいますが、中間位以降はそれほどではありません。つまりトップ釣果を出す人はポイント選定もさることながら、やはり寄せを強く意識して釣りを組み立てているのです。」
これは毎年のように山上湖やダム湖において数え切れないほどの大釣果を叩き出している幸田の言葉だが、そのことを自ら実践するように、彼の代名詞ともいえるボソの大エサを駆使する長竿チョーチン両ダンゴで、今年も既に50kgを超える釣果を複数回記録している。
「魚影が濃くなったとはいっても、やはり野釣りは寄せ続けないと勝負になりません。そのためにはボソタッチの両ダンゴが最も効果的なのですが、以前ほど開きの良いカタボソが効き難くなっているのが実情です。それはへら鮒が大型化したことに加え、数そのものが減少しているからに他なりません。それでも活性が高く食い気があれば硬めのボソエサで決まりますが、大抵はボソエサでサワリをだしておいて、釣り込みにかかるときにはややネバリを加えたまとまったタッチでなければ釣りきれないのです。」
おことわりしておくが、幸田の言う「ボソ」とは水分が少なめのカタボソに限った話ではなく、水分が多くしっとりしたタッチであれ、ネバリを加えていないものはすべてボソタッチとなる。つまり水量によってヤワボソからカタボソまで、その幅は極めて広くとられているのが特徴である。またネバリとは言ってもエサを強く練ったりこねたりすることは一切なく、あくまで撹拌の回数と強弱によってまとまり感が加わった、いうなればしっとりヤワボソタッチと考えていただきたい。
 
野釣り場では、幸田は概ね18尺以上の長竿を使うことが多い。それはたとえ周囲で短竿が好調に釣れていたとしても変わることはないという。湖畔荘より出船し小割ロープに舟着けした取材当日、実際に周囲の例会アングラーは10尺前後の短い竿でも釣れており、水面下にも数多くのへら鮒の群れが黒々と見える程寄っていたが、幸田は21尺までも含めて終始長竿で釣り通した。これにはそれ相応の理由がある訳だが、そのメリットについて幸田の見解をまとめると概ね次の通りとなる。
1.時合いが安定している
浅ダナや短ザオチョーチンを含めた浅めのタナに比べ、深めのタナの方が天候の変化や混雑などのプレッシャーに強く、しかも一旦時合いが構築されると長続きする傾向がある。これは管理釣り場にも言えることだが、野釣りでは釣り人が並んだ場合は特にこうした傾向が顕著に表れる。
2.流れに対して抵抗力がある
広大な山上湖やダム湖では流れはあって当たり前。ポイントによっては風がなくても常時緩やかな流れがあったり、風が出れば尚更のことチョットした風でもウキが速い速度で流されてしまう。こうしたとき浅ダナではへら鮒がエサを追い切れず、一ヶ所に足止めしておくことが困難になりアタリを失うことになる。また底釣りにおいても流れは致命傷となることが少なくない。これに対し深ダナでは表層ほど流れは強くないことが多く、しかもある程度は竿先で流れを止めることもできるので、アタリの減少を最小限に止めることができる。
3.食いが素直な良型ベラが多い

どこの釣り場でも見られる傾向だが、浅いタナ程気難しいスレたへら鮒が多い。それに比べて深めのタナにはコンディションが良く食いが素直な良型ベラ居着いている。これをダイレクトに狙える長竿チョーチン両ダンゴ釣りは、その労力に報いるダイナミックな釣趣が味わえる。



   
■サオ
長竿が大前提であることは言うまでもないが、通常のコンディションであれば18尺で始めることが多いという。その上でウキの動きからへら鮒のタナを読み、最も安定して釣れるタナに合わせて長さを変更するのだが、さらに一時的にタナ(竿)を変えてへら鮒の摂餌を刺激したり、短い竿でエサを打ち込み、そのタナよりも深いところに寄った大型のへら鮒を長い竿に交換して確実に釣り込んだり、幸田のチョーチン釣りでは竿は極めて重要な要素となっている。
 
■ミチイト
数・型共に揃う釣りであるため強度が保障されるものでなければならない。加えて見た目に豪快に見えるその裏側で、意外にも繊細なサワリを見過ごさないためには張りのあるフロロ系ラインの方がベターだと言う。幸田が愛用する「サクセスV2ヘラ道糸」はナイロンと変わらぬ比重を持つため、ウキの浮力を最大限活かす効果も大きい。
 
■ハリス
エサを限りなく自然落下状態に近づけるためにはしなやかさが必要不可欠。「これは今までで一番しなやかなハリスだ」と幸田に言わしめた「サクセスV2ヘラハリス」は、まさに幸田の釣りに無くてはならない必須アイテム。ダブルヒットも多い幸田の釣りでは、確実に釣り上げるために太めのセッティングが基本。長さは上55cm/下70cmを標準とし、最短で上45cm/下60cm、最長では上75cm/下90cmまで幅広くアジャストする。
 
■ハリ
幸田のチョーチン両ダンゴ釣りは大きめのエサを使うことで知られているが、特にヤワネバタッチのエサを確実にタナに送り込むために、ハリの形状とサイズは大変重要である。へら鮒の活性が高まるこの時期の定番はオーナー鈎「セッサ」8号。軸太設計でフトコロが深いためエサ持ち性能は申し分ない。
 
■ウキ
チョーチン釣りではタナ(水深)に見合ったオモリ負荷量のものを選ぶことが大切である。幸田が愛用する忠相「ネクストステージ」は太目のボディとパイプトップの組み合わせによる高浮力設計となっているが、ウキの弾みが極めて少ないため、ギリギリエサを持たせて釣り込む幸田のアプローチにはなくてはならないポテンシャルを有している。
 
 
 
 
取材時、先ずは18尺を継いだ幸田だが、その支度の途中でこう話し始めた。
「この長さ(タナ)で決まることは100%ありません。大抵は長くなることがほとんどで、しかも換えたからといってそれで決まることも少ないのです。その際、交換の判断基準となるのはウキの動き。理想とするサワリからアタリが出るまでの動きが連動しなければ、小刻みに換えることも少なくありません。極端なケースでは1投エサを打って換えることもあるくらいです。」
おそらく幸田のこの言葉を初めて見聞きした人は驚くに違いない。しかし実際にその釣りのプロセスを見たものであれば理解できるだろうが、ウキの動きがおかしくなってアタリが出なくなったとき、その原因がエサではなくウワズリやシタズリ等のタナの変動にある場合、竿の長さ(タナ)を合わせた方が無理なく正解に近いアジャストができるという訳だ。 こうした場合、多くのアングラーはエサやタックルの調整に終始するが、それはタナが合っていて初めて効果が得られること。管理釣り場ほど魚影が濃くない野釣りでは、数少ないへら鮒がタナから居なくなってしまうと手も足も出なくなる恐れがあるため、常にベストのタナを意識したアプローチが必要なのである。
「竿の長さを合わせる過程では、ウキが立ったところで表れるサワリを見逃さないことが肝心です。このサワリが毎投確実にウキに表れていれば、そのタナは合っていると判断できます。そしてトップがナジミ始めてすぐにカチッとしたアタリがでれば、一応狙いのタナにへら鮒が入って来ている証拠で、さらにダッ、ダッとアタリ返したり、そのままズバッと持って行ってしまうような豪快なアタリがコンスタントに続けば、完全にタナが合ったことになります。 実際にはスタート時の竿の長さが一発で決まることは少なく、大抵は長くする方向に進みます。ただし、長くする一方ではなくて、必要に応じて元の長さに戻すこともよくあります。例えばある程度タナが合っている状況であっても、カラツンが多発するときに19尺で開くボソエサを打ち込んでおいてガサベラを意図的にウワズらせ、21尺に交換して締めた(まとまった)タッチのエサで仕留めるということもあります。皆さんはカラツンを解消する際、エサのタッチ調整やハリスワークで行うことが多いと思いますが、ハッキリ言って竿(タナ)を換えた方が簡単なことが多いですね。」

打ち始めの基本サイズはカタボソタッチで直径22mm程度のラフ付け。アタリが持続し釣り込みにかかったところでは若干ネバリのあるヤワボソタッチで直径18mm程度の球形に変化を遂げていた。以前はカタボソの大エサ(おそらく直径は25mm以上)一辺倒の幸田であったが、近年のへら鮒の大型化や魚影密度の減少により、ボソエサを完全に打ち切る釣りが困難になっているという。
「今でも私の釣りの軸となっているのはボソエサです。ボソエサのメリットは何と言ってもその集魚力。特にへら鮒の供給が保障されていない野釣り場では、常にボソエサで寄せ続けていなければ何時アタリが無くなっても不思議ではありません。 へら鮒を一定量タナにキープできていればコンスタントにアタリがでて、たとえスレたり空振っても良いリズムで釣り続けることができます。 ただし、最近の大型ベラに対してはカタボソ一辺倒では食いアタリを出し続けるのは不可能です。そこでカタボソのラフ付けは主にへら鮒を寄せるときと、反応が鈍くなったへら鮒を一時的に刺激するときに使い、釣り込むときはややネバリのあるまとまり感のあるタッチのエサを小さめにして確実に食わせるようにしています。」
彼のエサ付けは独特で、エサを人差し指と中指の付け根に親指を使って器用にまとめ、ハリをセンターに埋め込んで更に形を整えるのである。その圧加減は極めて繊細で、トップがドップリ沈没するようにナジむことはない。常に長めのウケからジワリと1〜2目盛りナジんだところでアタリがでる。 幸田のウキを見ていれば分かるが、一般的なアングラーの釣りとは異質に感じるところがある。それはこのナジミ幅だ。通常へら鮒が寄っていない状態ではウキは容易にナジみ、寄りが増すごとにナジミ幅は少なくなるものだが、幸田の場合、初めはほとんどナジミ幅がでないのだが、へら鮒が寄り始めるとウキも徐々にナジミ始めるのだ。そして上記のようにギリギリのナジミ幅をキープし続けるのだ。しかもあれだけ大きなエサにして、僅かこれだけのナジミ幅ということは、エサに充分エアーが含まれており、しかも食う瞬間には確実に食い頃のサイズ・タッチになっていることになる。まさに幸田流フィンガーマジックである。
 
長竿と大エサばかりに気を取られがちな幸田のチョーチン両ダンゴ釣りだが、極めて繊細な側面があることも忘れてはなるまい。先のエサ付けもそのひとつだが、更に繊細なのがアタリの取り方である。幸田のアプローチは決して力づくでねじ伏せようというのではなく、極めてナチュラルなへら鮒のバイトを引き出している。どういうことかと言えば、長めのハリスと大きくても軽いエサ使いでより自然なエサの落下状態を演出し、どの位置でバイトしてくるのかに合わせてアタリを取る位置とアタリの大きさを見極めているのである。
「現在の大型主体の釣りでは、エサをぶら下げて待っていたのではコンスタントなアタリはほとんど期待できません。だからと言ってエサが動いている間のアタリであればなんでもかんでも合わせて良いかと言えばそうではなく、やはりヒット率の高いアタリを取るポイントを絞ることが大切です。私のイメージとしてはオモリがウキの真下にぶら下がった状態からハリスが倒れ込み、トップのエサ落ち目盛りを通過する辺りではまだハリスが張りきらない状態(ハリスの長さ分の7〜8割方沈下した辺り)で、ここで食うと1目盛り程度鋭くチクッと入るアタリになります。更に深くエサがナジんでほぼハリスが張りきった状態で食うと、2〜3目盛りダッと力強く入り、そのまま食い走ると水中に突き刺さるような消し込みアタリになると考えています。」
へら鮒の活性が高く食いが良いときほどエサを追うレスポンスが高く、このためナジミきったところでの大きなアタリが多くなり、食いが悪いときほどハリスが張る前に食うことが多くなるので、必然的に小さな食いアタリが多くなるという。 取材当日は朝方北東風が吹いている時間帯は食いが悪く、エサ落ち目盛り付近の小さなアタリしか出なかったが、天候が回復し薄日が射して風も収まると、次第にナジミ幅が大きくなったところでの豪快な食いアタリが増えていった。こうなると自然に釣れるへら鮒の型も良くなり、なかにはキロクラスの黄色味がかった大型も混じるようになったのである。 もうお分かりだろうが、幸田の目指すところはこの時合いであり、悪いときにはそれに合わせたアプローチで凌ぎつつ確実に1枚でも2枚でも拾い続け、時合い到来と見るや否や一気呵成に攻め抜き、怒涛の固め釣りを展開するのである。

 
 
もうひとつ、意外と言っては失礼なのだが、幸田の繊細さへのこだわりはハリスにも及ぶ。まずは長さのアジャスティング。5cm程度の調整は頻繁に行われる。さらに僅かな縮れや絡んだハリスは即座に交換される。日に多いときでは80〜100本近くは消費するという幸田。取材時もそれほど多くはないと言いながらも、納竿時間間際には100本近く結んであったストックの約半分が無くなっていたのである。
「比較的長めのハリスを使うのが私のスタイルですが、70cm以上の長さであっても僅か5cm違うだけで結構ウキの動きは変わるものですよ。また段差も15cmを基本としてはいますが、動きが悪いと感じたときに5cm段差を広げるだけでも好転することがよくありますね。」
実際のところ、当日の釣況では明らかに短い方が上層でエサがつかまり、まったくナジミに入らない投が目立った。しかも30分も同じような好時合いが続くことがなく、ウキの動きが少しでも意にそぐわないと感じたときは躊躇することなくハリス交換を実践していたのである。
「またエサが持ち過ぎだなと感じたとき、エサをまったく変えずにハリスだけ伸ばしてへら鮒に揉まれる時間を長くし、エサを食い頃にするというのもテクニックのひとつです。大抵エサのタッチを変えるとその直後には釣れますが、数枚は続いてもそれ以上釣れ続くことはほとんどありません。そのためカラツンがでているエサには手をつけず、そのままハリスだけを長く伸ばすのです。」
とにかく幸田はよく動く。一時たりとも漫然とエサ打ちを繰り返すことはなく、常にウキの動きからへら鮒の状態を読み、今、何が必要なのか、何をへら鮒が求めているのかを常に探ろうとしている。そして思ったことは即行動に移す。やってダメなら戻せば良いという、積極性というべきか良い意味での開き直りが大切なのである。

 
 
 
 
  かつて見るものすべてを驚愕させた幸田の長竿チョーチン両ダンゴ釣り。時代の変化に合わせて進化したエサ使いは、サイズこそやや小振りになったとはいえ、今まで以上に研ぎ澄まされ、その爆発力以上に精度の高いスタイルへと変貌を遂げていた。その原点は、あくまで「寄せて釣る」というへら鮒釣りの基本であり、いささかのブレもない。豪快さに加え、より繊細さを増した幸田ワールドは、改めて両ダンゴ釣りの面白さと奥深さを我々に教えてくれたような気がする。
「エサ使いも10年前と今では大きく変わりました。私達もその変化に合わせて進化できなければ時代に取り残されてしまうでしょう。しかし「寄せて釣る」というへら鮒釣りの基本は今も昔も変わりません。特に野釣りでは、どんなに魚影密度が濃くなったとはいえ、その広大なロケーションのなかで何処に居るのかをまず探り、的確なポイント選定ができなければスタートラインにさえ立てません。更に適切なタナを探り当て、へら鮒の状態に合わせて釣りを組み立てることができなければ良い釣果は期待できないのです。つまり野釣りは総合力が求められる釣りであり、すべての要素が詰め込まれたへら鮒釣りの原点なのです。
確かに多くの釣果を求めるならば、それなりの量のエサ使いも必要ですし、より良型のへら鮒を求めたり安定した時合いを求めるのであれば、深場を攻める長竿も必要です。しかし、そのアプローチは釣り人ひとり一人違って当たり前で、試行錯誤を繰り返しながら自分のスタイルを築きあげることが大切なのではないでしょうか。」

彼の釣りを真似しようとしても、それは一朝一夕には不可能であろう。否10年修練したとしても容易にものにできるものではないことは想像に難くない。しかし、大切なことは釣り方そのものを真似することではなく、幸田流のアプローチを通してひたむきにへら鮒と対峙することである。折しも季節は両ダンゴの絶好機。積極的に野に出て、長竿でのダイナミックなチョーチン両ダンゴ釣りを是非味わっていただきたいものである。
 
   

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