へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第24回 バラケワークでタナに呼び込むナチュラルバイト釣法 杉山 達也のチョーチンヒゲトロセット釣り


  へら鮒をもっと簡単に、そしてたくさん釣りたいという思いは多くのアングラー共通の願い。たとえば夏場の釣りの代名詞と言われるヒゲトロセット釣りなどはそうした思いが具現化された釣り方であり、シンプルかつ合理的なシステムは実に多くの高釣果をもたらしている。 ところが、近年かつてほどは簡単に釣れなくなりつつあるように感じるのは筆者だけではあるまい。確かに釣り場事情は年々変化しており、その影響は釣り方にまで変化を求めている。そして、それに追従できないと容赦なく取り残されてしまい、やがて苦手意識を持つことで釣れなくなってしまう恐れがある。 そこで、そうなる前に何らかの手を打っておこうと企画したのが今回の釣技最前線、マルキユーインストラクター杉山達也による盛期のチョーチンヒゲトロセット釣りである。彼の釣りはトーナメント仕様のシビアなものばかりに目が行きがちだが、極めて基本に忠実な、シンプルかつ重厚な釣りもお手のもの。今回は神扇池で披露してくれたそんな杉山の軸太の釣りを徹底レポートする。  
     
近年ヒゲトロセット釣りの立ち位置が微妙になりつつある。というのも、かつてはその釣りやすさから両ダンゴを凌ぐ人気を博していた時期もあったが、ここ数年は以前ほどの効果が見られなくなっていると同時に、釣り方自体難しくなっているように感じるからだ。
その最大の要因はバラケの変化であろう。ヒゲトロセット釣りが最も釣れた頃は、正直言ってバラケはそれほど難しいものではなく、とりあえず両ダンゴ風のエサに仕上げるだけで結構釣れたものである。しかしここ数年は、そうしたダンゴっぽいバラケでは明らかに反応が悪くなり、アタリが
出たとしてもカラツンになることが多く、本来カラツンが少ないということで知られていたヒゲトロセット釣りのメリットが無くなってしまっている。
「現在のチョーチンヒゲトロセット釣りでは、ボソタッチのバラケを上手く使いこなさないとタナに食い気のあるへら鮒が入ってこないのです。カラツンならばまだ良い方で、酷いときは寄るだけ寄ってアタリすら出ないこともありますよ。」
取材冒頭、解説力に定評のある杉山から発せられた言葉は、いきなり核心を突くものであった。つまり最近のチョーチンヒゲトロセット釣りのバラケは、以前のようなダンゴタッチでは明らかに釣りきれなくなっているという実情を既に見切っていたのである。
「確かに昔のヒゲトロセット釣りは簡単でたくさん釣れましたね。多少難しくなってからも硬めのボソバラケをギューとハリに付けて、トップを沈没気味にしてシャクリまくれば結構拾えたものですが、それも現在では効き難くなっています。キモはズバリ、ボソバラケの使い方です。今日もおそらくそんな展開になると思いますよ。
それからヒゲトロセット釣りに適した時合いを見極めることも重要ですね。私は盛期の釣りの基本を両ダンゴにおいていますので、こうした取材でもなければ、いつもは両ダンゴでスタートします。そして両ダンゴでは今ひとつ釣りきれない、エサの芯に対するアタックが弱いと感じるときがこの釣り方の出番だと思っています。両ダンゴで釣れないといきなりウドンセットに切り替える人もいますが、私のなかでは、それは更に状態が良くないときの選択肢。つまりヒゲトロセット釣りの最も効果的な時合いは、両ダンゴとウドンセットの間に位置するものだと思います。
更にこのような質問を良く受けるのですが、それはヒゲトロセット釣りをしていて、バラケを食うことが多いので両ダンゴに切り替えてはダメかというものです。答えはズバリ、ノーです。私の場合、初めからヒゲトロセットで臨むことは稀で、通常はまず両ダンゴでスタートして、先に述べたように今ひとつ釣りきれないな、麩エサに対してのアタックが弱いなと感じたときに切り替える釣り方なので、バラケを頻繁に食う状態だからといって両ダンゴで釣りきれることはほとんどありません。この場合バラケを食うのはネバリが生じているか、エサをまとめ過ぎて開きが悪くなっているものと想像できますので、それに対して処置を施すことで問題なくヒゲトロセットのままで釣れると思いますよ。」




   
■サオ
野釣りにおいては18尺一杯のタナでもヒゲトロセット釣りをやるという杉山だが、管理釣り場においては概ね8〜9尺で攻めることが多いという。ちなみに今回の取材時にはまず8尺でスタートしたが、当初明らかにへら鮒のタナは浅めで釣り込むのに苦労したが、徐々にタナが安定し始めてからは連続して釣り込む場面も見られ、一気に陽射しが照りつけた後半は9尺に変更して完全に時合いをつかんだ。
 
■ミチイト
この釣りでの杉山の基準は1.0号。竿が短く比較的大型が揃う釣りであることから強度を優先する。ウキもオモリをしっかり背負うものを使っているので、太めのものを使ってもウキの動きを妨げることはない。
 
■ハリス
ハリスの長さはスタート時にセットした上8cm/下15cmが標準であり、太さも盛期の釣りであり0.5号と太めとなっている。特に大型ベラが多い釣り場では、短バリスゆえ玉網にすくってから切られることも多く、その場合は0.6号でも構わない。またウドンセット釣りのように頻繁には長さを変えないのも特徴で、取材当日も僅か1cmの範囲内で数回変更したくらいで、それ以外はほぼ基準の長さで釣りきった。
 
■ハリ  
上バリは開くボソタッチのエサをタナまで待たせるため、エサ持ちの良い「ダンゴ鈎7号」を使い、下バリはトロロの繊維をしっかりホールドできる「グルテン鈎5号」を常用する。
   
■ウキ  
この釣りのキモのひとつがウキである。杉山が目指すところと言う「タナでアタらせる時合い」は深ナジミが必須条件。そのためやや大きめの浮力のウキを使い、開くバラケを確実にタナに送り込むことが必要になる。もちろんオモリ負荷量は大き過ぎても良くないが、小さ過ぎるのは最悪で、バラケを持たせるためにエサに手を加え過ぎたり、他の方策に頼ろうとして返って釣りが複雑になるので要注意とのこと。今回はプロトタイプで臨んだが、概ねスペックは煮詰まっているとのことで、浮力並びに中細パイプトップという仕様はこの釣りのスタンダードウキとして大いに参考にしていただきたい。
 
 
 
 
ヒゲトロセット釣りにおいてはバラケの開き加減やバラケとトロロの位置関係を把握した上で、大きく開くバラケの粒子に誘導されてトロロに近寄ってきたへら鮒が誤飲するメカニズムをしっかりイメージすることが大切である。今回映像でも杉山の解説を盛り込んであるが、これからも分かるように、チモトをしっかり押さえた開きの良いバラケは、押さえられていない下半分から適度に粒子をまき散らしながら沈下する。そのなかを軟らかく膨らんだ状態のトロロが追いかけるようにナジんで行き、タナで強烈に粒子を拡散するバラケの直下に回り込むと、粒子に引き寄せられて近づいてきたへら鮒がそれを誤飲するというのが基本的なメカニズムである。
「実際には数多くのへら鮒が寄った状態のなかを激しく揉まれながらナジんで行くので、更にバラケの開きは早く、その拡散範囲も広いと思いますが、ウキのナジミ幅とその後のウキの動きからバラケ方やバラケとトロロの位置関係を把握し、特にトロロの下ハリスがしっかり張ったタイミングでアタっているかどうか、この部分をしっかりイメージすることが大切なのです。」
映像には好時合い下での杉山のウキの動きも掲載してあるので、このバラケのイメージと合わせてウキの動きから水中での状態を想像していただきたい。
 
「バラケに仕事をさせなければタナに呼び込めないのです。」とは、取材中に杉山が再三言っていた言葉である。これが意味することとは集魚力・誘導力を最大限生かすために、ボソタッチのバラケを開かせながら確実にタナに送り込むことである。言葉で言うのは簡単だが、これを実現させるためには大きく分けてふたつのポイントがある。ひとつはバラケのブレンド、もうひとつはエサ付けである。
今回杉山は「セットガン」をバラケの核としている。ご存じの通り「セットガン」は従来エサ付けし難かった強拡散型ボソタッチのバラケを、極めてまとまりやすくした革命的なバラケエサである。素材には顆粒状ペレットや大粒のさなぎ粉が含まれており、徹底した縦バラケでウワズリを抑えながら極めて高い集魚力を発揮する。そして肝心なのが、今回バイプレイヤーとして脇を固める「パウダーベイトスーパーセット」で、あらゆるセット釣りで幅広く使われているこのエサは、バラケエサでありながら微粒子ゆえのまとまり感が、今回のようなエサ使いにとても良くマッチする。そして最後に加える「パウダーベイトヘラ」でボソタッチを強調しつつもまとまり感を更に増しているという。
杉山のエサ作りは常に素材の持つ特徴を活かしきっている。100%の性能を引き出すためには、個々のエサの持つ性質を充分知り尽くしていなければならないが、それに加えて各素材のブレンド比率も大変重要である。どれを核にしてどれを脇役に徹するのか。ときには主役と脇役が入れ替わったり、主役がふたつになったりするということも珍しくない。
またバラケのブレンド紹介の項でも触れているが、バラケの開くタイミングや膨らみ加減、更には持ち具合を調整するために、ブレンドのうちひとつを入れ替えることを推奨している。繰り返しになるが、今回のブレンドパターンでタナにへら鮒を充分に呼び込めないときは、さらに上のタナから膨らむようにするために「パウダーベイトヘラ」を「GTS」に替えると効果的だと言い、バラケが開き過ぎて深くウキをナジませられない場合は「BBフラッシュ」を替えるとボソ感を維持したままエサ持ちが強化できると言う。
肝心のエサ付けであるが、これに関しても映像があるので参考にしていただきたい。基本的なサイズは寄せを意識たときが直径20mm前後、釣り込むときで直径16mm前後の2パターンがメインとなる。エサ付けは指先でまとめる際に圧を加え過ぎず、充分にエアーを含んだ状態でチモトだけを数回押さえたもので、このチモトを押さえる回数でエサ持ち加減を調節している。更に落下途中の開きを抑えるにあたっても、この基本的なエサ付けを踏襲し、側面だけをやや指先で押さえる程度に止めたもので対応する。あくまでバラケの下部は押さえず開いたままとすることが、タナにへら鮒を呼び込むボソタッチバラケのキモとなるのである。

安定した時合いを構築するためにはウキをしっかりナジませ、そこで強いアタリを出し続けることが肝心だが、単にエサをタナでぶら下げているだけではへら鮒のバイトは期待できない。エサに対する興味を抱かせ、確実にエサを食わせるためには、ナジミ際からエサの動きを止めないことが重要だと杉山は言う。
「食いアタリには必ず連動性が見られます。ウキが立ち上がった直後からリズミカルに動き続けたウキが深くナジんで、最終的に食いアタリへとつながるためには適切なウキの選択が必要です。ポイントはズバリ、浮力(オモリ負荷量)とトップバランス。浮力は大き過ぎても小さ過ぎても良くありませが、どちらかと言えば重めの方がタナが安定し釣りやすいと思います。またトップは太過ぎても細過ぎても使い難く、今回使用した中細くらいでやや長めのパイプトップが、エサを動かしながら食わせる接点を探るのには適しています。
今回使用したウキは現在開発中のプロトタイプですが、スペックとしてはほぼ完成形なので、浮力を含めて大いに参考にしていただいて結構です。これが適切でないとエサがナジミ難くなったり、反対にナジむ速度が速過ぎて、上層から追いきれなくなることもあるのです。」

極端にオモリ負荷量の大きなウキで一気にナジませ、そこでサオ先をシャクリながらバラケを促進させてアタリを待つという釣り方も確かにあるが、それでは釣った気がしないと杉山は言い、チョーチンヒゲトロセット釣りの醍醐味は、エサを止めずに動かしながらタナに呼び込んで食わせるところにあると断言する。
比較的ウキの動きが多い釣り方だが、そんな激しい動きのなかでも、だれが見ても迷うことのない強く明確なアタリを取ることが重要だと杉山は言う。だがこれが意外に難しい。慣れないと強いアタリにはついつい手が出てしまい、これがカラツンになろうものなら迷いばかりが大いに増えることになる。
「食いアタリを絞り込むポイントはいくつかありますが、まずは連動するウキの動きの中で出る強いアタリであることが絶対条件です。ただし、ウキが立った直後に何の前触れもなくズバッと消し込んだり、節操なく動き続けたままアタッたり、またナジんだウキがス〜と戻したところでドスンと入るアタリはスレやカラツンの可能性が高いので狙いからは除外します。
理想的な食いアタリはナジむ途中でダッダッズバッと刻みながら入るか、沈没気味に深ナジミしたトップが上下しながら1〜2目盛り返したところでズバッと消し込むアタリのヒット率が高く、またこうしたアタリが持続しているときは型も良くなる傾向です。いずれのアタリも動きの中で一瞬でもトップが静止するような感じがあり、その直後に出るアタリであれば完璧です。」

この辺りのウキの動きは映像でもハッキリと見て取れるので、是非参考にしていただきたい。また安定した時合いを目指すために徹底した深ナジミを心掛けている点も見逃せまい。ときにアワセたくなるようなアタリを平然と見送り、トップが水中に沈んだ状態であってもトップの動きが認識できる場合は静観し、そのまま水中アタリでヒットさせた場面が幾度もあったが、このくらい徹底した意識が強い釣りを支えているのだと痛感したシーンである。
   
 
杉山の釣りを見ていて気づくのは、様々な対応が実に早く、かつシンプルであることだ。早い対応が可能である背景には彼の卓越した状況判断力があることは想像に難くないが、それにしてもその対応策が極めてシンプルであることは、我々にも大いに参考になるはずである。
例えばエサのタッチをまとめる方向に調整するのは、極少量の手水を小分けした基エサに振り掛けザックリとかき混ぜるだけであるし、エサ付けのバリエーションも決して多い訳ではなく、基本形状はそのままに、チモトの押さえ方(押さえる強さと回数)ひとつでコントロールしているのだ。そこで際立った効果のあった対策を状況別に整理すると概ね次の通りとなる。

状況1:ほぼ理想的なアタリがカラツンになったとき(またそれが連続したとき)
対策1:アタリを送り気味にするために、バラケの側面だけやや押さえる。またトロロはハリに掛けた後で数回巻き付けてエサ持ちを強化する。

状況2:上下動をしながらナジんだウキの動きが途切れてしまう場合
対策2:トロロがハリ抜けした可能性が高いので、掛ける量を増やしたり巻き付け回数を増やして持ちを強化する。特に今回はジャミの動きも活発であったため、この対策は効果的であった。

状況3:ナジミ幅は充分でているが、フワフワした動きが多く、 アタリがでる前にウキが戻してしまう場合
対策3:トロロがあおられ過ぎてハリスが張りきらない状態と判断し、1cmずつウキの動きを見ながら下ハリスを短くしていく。アタリ自体が減るようであれば元に戻して、バラケでへら鮒の量をコントロールする。

状況4:ウワズリの徴候が見られた際、アタリを送り気味にしようとしてバラケを抑えたら それを食うことが連続した場合
対策4:経時変化によりバラケ性が損なわれつつあるものと判断し、次の新しいエサを用意すると共に、残りエサに対してはエサ付けに細心の注意を払い、持ち過ぎを防ぐ。大切なことは経時変化を起こす前に使い切ること。

状況5:ナジミが悪くなったとき、バラケを付ける際の圧を強めたら 途中でまったくサワリが見られなくなってしまったとき
対策5:バラケを抑えることで開きが悪くなり、上層から追えなくなったものと判断し、開きはそのままでタナまで持つよう、エサ付けサイズをひとまわり大きくし、チモトを押さえる回数だけ増やした。

 
 
 
 
 
  杉山の釣りを見ていると、どんな釣り方であっても実に簡単に釣っているように周囲の目には映る。それは彼の釣りが極めてシンプルに組み立てられているからに他ならない。
「へら鮒釣りを難しくしているのは、実はアングラー自身なのです。へら鮒釣りには様々な釣り方がありますが、どのような釣り方でも目指すところはひとつ。それはタナでアタらせることなのです。そのために必要なことは何かを考え、その軸をブレさせないことが大事なのです。
今回紹介したチョーチンヒゲトロセット釣りは、基本的にはへら鮒の活性が高い盛期の釣り方なので、たとえ食いが渋くても難しく考え過ぎないことが大切で、むしろ適度に食い渋ってくれた方が、大型のへら鮒が多い釣り場では型が揃うということもあるので、残り少ない盛期の釣りを是非ボソタッチバラケを駆使したチョーチンヒゲトロセット釣りで満喫してください。」

 
   

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