へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第33回 新エサ「Sピンク」で決めるナチュラルバイト釣法! 荻野孝之の一発セットの段差釣り


皆さんは一発セットの段差釣り(※以下段差釣り)にどのようなイメージを持たれているだろうか。ボウル一杯山盛りになるほどのバラケを作り、周囲の冷たい視線を顧みることなくドボンドボンと大きなバラケを打ち込むはた迷惑な釣り。はたまた竿をシャクリ続けるうちにいつの間にやら釣れているといった、およそへら鮒釣りとは思えない釣り方だという否定的な意見も決して少なくはない。 かつて段差釣りは一世を風靡した画期的な釣法であった。それは現在ほど魚影密度も濃くはない時代、特に野釣りにおいて釣らんがための、へら師の飽くなき探求心が生み出したイノベーションであり、あれから数十年、過剰ともいうべき濃密な魚影に恵まれるようになった現在、段差釣りは釣り場の片隅に追いやられてしまった感があるが、そのポテンシャルは現在でも決して衰えた訳ではない。 確かにどのような釣り方でも容易にアタリは出るようになったが、それで簡単に釣れるようになったかといえば必ずしもそうではない。むしろアタリはあるが、カラツンばかりでなかなか食ってはくれないという状況が増えている昨今、入門間もないビギナーにとっては楽しむどころか、いきなり高いハードルを課せられる恐れがある。 そうした時代背景のなか、マルキユーより段差釣り専用の新エサが発売された。カテゴリーは釣り方専用エサとして人気を博している「Sデザイン」シリーズ。その第5弾となる「段差釣り用一発セットバラケ」である。今回はこの新エサと同時発売となったくわせエサ「一発(ハード極小)」を携え、群馬県藤岡市にある三名湖を訪れた。ご存じの方も多いだろうが、同湖はかつて段差釣りのメッカとして知られた釣り場であり、新エサのポテンシャルを計るには絶好のシチュエーションといえよう。アングラーはマルキユーインストラクター萩野孝之。トップトーナメンターでもある彼が披露してくれた段差釣りは、従来の段差釣りのイメージを覆す、真に洗練されたスタイリッシュな釣りであった。  
   
かつての段差釣りは食い渋り時の最終手段的必釣法として認識されており、たとえ悪いイメージがあったとしても、オデコを避け釣果を得るために背に腹は代えられないといった感じで、実際にこの釣り方を選択するアングラーは多かった。ところが放流量が増え、魚影密度が濃くなるにつれて他の釣り方でも容易に釣ることができるようになると、次第に段差釣りを選択するアングラーが少なくなり、今や希少ともいうべき釣り方になってしまった感がある。しかし一部の野釣り場では、今でも段差釣りでとんでもない大釣果を叩き出すアングラーも少なからず見受けられ、その威力のほどは未だ健在である。 さて、近年管理釣り場の釣りが難しくなりつつある。原因はへら鮒の大型化と放流量の減少などと巷では囁かれているが、確かに釣れるにしても常にエサ合わせの難しさがつきまとい、寄りがキープできなかったり、アタリがあっても釣りきれない場面が増えてきた事実は否定できない。折しもそのようなとき、かつての容易さを求めると共に、これからへら鮒釣りを始めようとしているビギナーに手軽にこの釣りを楽しんでもらうべく登場したのが段差釣り専用のバラケエサ「Sピンク」と、くわせエサ「一発(ハード極小)」である。 初めに新エサの特徴について触れておこう。まずは「Sピンク」だが、とにかく段差釣りの第一条件である集魚力の高さとエサ持ちの良さは抜群に良い。それは粗めの素材ながらまとまりが良く、良質のさなぎ粉を中心とした集魚力の高い素材が効果的に水中に漂い、強力にへら鮒を寄せ続け、その摂餌をも刺激する。一方くわせエサ「一発(ハード極小)」は、従来品よりも視認性の高いイエローカラーを採用し、さらにエサ持ちを強化することで抜群の安心感が加わった。 実はアングラーの萩野、新エサで実釣に臨むのはこの日が初めて。開発担当者からひと通りの説明を受け、標準的なタッチに仕上がるよう裏書の手順通りエサ作りに取りかかった。
 


   
■サオ
ナジミきったバラケをタナでバラけさせると同時に、くわせエサを動かしてへら鮒の食い気を刺激するために必要なのが縦サソイだが、それを容易にし、さらに食った後の強烈な下方向への突進を無理なく止めるためには竿の調子が重要になる。萩野は数あるシマノ製ヘラ竿のラインナップの中から、こうした対応に最も適しているとの理由から「朱紋峰 神威」を選択。長さが変わってもそのポテンシャルはすべて反映されているとして、この日は短竿から長竿まですべてロッドケースに用意して臨んだ。理想的なアタリを維持するためにはタナ合わせ(竿の長さ)も重要で、ナジミ際にアタリが出難いようであれば深めのタナ(竿を長く)に変え、ウキが立ち難かったりナジむ前に食ってしまう場合には浅めのタナ(竿を短く)に変更する。
 
■ミチイト
チョーチン釣りでは引きの強さに耐える強度が必要になるため、太めのセッティングにしておくとトラブルも少なく安心して釣りに集中できる。また萩野が愛用する「ザイト」は伸縮性能が優れているため、瞬間的な強い引きに対しても不安は一切無いと言う。
 
■ハリス
従来の段差釣りでは「クマ取り仕掛け」が有効とされている。これは細く長い下ハリスの絡み防止効果の高い仕掛けだが、今回萩野は変形クマ取り仕掛けともいうべきオリジナルタックルで実釣に臨んだ。詳しくは別図イラストを参照していただきたいが、手順は以下の通りとなる。
1.まず30cm程の長さの上ハリス(上バリが結ばれたもの)を用意し、
 ハリから10cmのところにチチワを作る。このとき余分なハリスは切らないこと。
2.チチワをヨリモドシ(スイベル)に結節し、その後余分なハリスの先端にチチワを作る。
 このときチチワを作ったハリスの長さは約15cm程になる。
3.ハリスの先端に作ったチチワに下ハリスを結節する。

この萩野流変形クマ取り仕掛けでは、上記の通り実際の下ハリスの長さは約15cm長くなる訳だが、やはりポイントになるのは下ハリスのアジャスティングで、理想とするアタリで空振ったりスレが多くなるときは短く、サワリがあるにも関わらずアタリが少ないときは長くする。
 
■ハリ
段差釣りでの標準的なバラケのエサ付けサイズは直径27〜28mm程だが、この大きさのバラケを確実にタナまで持たせるためには、ホールド性能に優れた大きめのハリが必要不可欠である。今回萩野は「セッサ10号」をチョイスしたが、このハリは軸が太く重いのが特徴で、標準的なタッチのエサに仕上げれば21尺一杯の釣りでも難なくエサを持たせることができるという。また下バリはくわせエサの特徴を損なわないよう、軽く小さく保持力に優れたタイプが良いとのことで今回は「玉鈎2号」をチョイスした。

■ウキ  
エサの動きのナチュラル感を増すためにはムクトップがベターであると萩野は言う。今回彼が使用したのはPCムクトップを装着した「PCロングプレミアム」。エサをゆっくりナジませる両ダンゴの深宙釣りを想定したこのウキは、ナジミ際のエサの動きを干渉しないので、チョーチンでの段差釣りにはうってつけのウキと言えよう。参考までに萩野は、縦サソイの効かない浅ダナでの段差釣りではパイプトップウキを使い、エサの重さをしっかり抱えさせるようにしており、狙うタナによってウキを変えることが必要だという。
 
 
 
 
技術的に最も難しいのが、このバラケの使い方だ。かつてこの釣り方の名手といわれる人達は、ブレンドレシピも独創的で、なおかつ池中のへら鮒をすべて寄せてしまうのではないかと思うくらい大きなバラケエサを情け容赦なく打ち込んでいた。
「確かにこの釣り方で頂点を極めようとしたら、一般のアングラーにはなじめないような部分もかなり含んだ釣り方になるでしょう。しかし、今日ひさしぶりに段差釣りをしましたが、この釣り特有のポイントをいくつか押さえるだけで予想以上に簡単に釣ることができました。この結果については新エサの性能によるところが大きいことは明らかで、特に難しいテクニックを使うことなく釣果が上がるということは、初心者の皆さんにはより簡単に釣れる釣り方として、またベテランアングラーにとっては新たな武器になることは間違いありません。 この釣り方の最大のポイントは、広範囲に拡散したバラケの粒子の中に、いかにナチュラルにくわせエサ(「一発」)を漂わせるかにかかっています。単にバラケを散らすのであれば、あまくエサ付けをして上層から開かせてしまえば良いのですが、時合いを安定させてコンスタントに釣れ続かせるためには、オモリの位置を中心にして概ね上下共に50cmくらいの範囲内に適度に粒子を漂わせなければなりません。今日は初めに作った標準的なタッチで釣れましたが、へら鮒が良い反応を示すタッチは日並によって変化しますので、途中で手水や麩材を加えたり、あらかじめ麩材と水の比率を変えて基エサを仕上げればより楽に釣ることができるでしょう。 またアタリを持続させるためには、他の釣り方ではタブーとされるウワズリ状態を意図的に作ることが肝心です。もちろんウワズリ過ぎはNGですが、ウキが寝たまま立ち上がらなかったり、まったくナジまなくならない限りは大丈夫。適度なウワズリ状態を維持するためにはバラケのエサ付けのサイズと形状が大切で、ウキの動きを見てウワズリ状態に程遠いときには大きくラフ気味に、ウワズリ過ぎていると感じたときには小さく丁寧にエサ付けすることが肝心です。特にサイズについては写真を見ていただいたり、また新エサのパッケージの裏書に基本となるサイズが掲載されていますので参考にしてください。」
スタート時に標準サイズとされる直径27mm程にエサ付けされていたバラケは、へら鮒の寄りが増すに従い徐々に小さくまとめられ直径25mm程になり、ナジミ際のウキの動きが少なくなったりアタリが途切れがちになったときには直径30mm程に大きくエサ付けされていた。萩野の感想としては、この程度の大きさで寄りがキープできて、なおかつアタリがコンスタントに続くのであれば他 のセット釣りと比べても違和感はないという。もちろん傍目に見ていても、周囲のアングラーが眉をひそめるような荒々しい感じもまったく無く、むしろソフトな合わせで次々とヒットさせる様は、かつての段差釣りとは正反対の真にスマートなものであった。
 

タナ周辺に大量のへら鮒が寄って来ると、次第にナジミ際のアタリが多くなるのがこの釣りの特徴である。つまりくわせエサがぶら下がった(ナジミきった)状態では、どんなにバラケの粒子の中にくわせエサが漂っていても、簡単には食いついてはこないのだ。ここで言うナジミ際とは、バラケはほぼナジミきってはいるが、くわせエサはまだへら鮒にあおられながらナジんでいる際中であり、いわゆる自然落下状態を意味する。よって、この時間を如何に長く保つか、またいかにナチュラルに見せられるかでアタリの出方を大きく左右することになるのだ。
「他の釣り方では、大抵はウキの立つ位置にエサを落とし込むのが基本です。これはエサの落下の軌道が最短距離を通ることでエサ持ちを良くし、またできるだけ早くタナに送り届けることで無駄なウワズリを抑制することが狙いです。しかしこの釣り方では、ウワズリはむしろ歓迎すべきことであり、なおかつヒットチャンスはくわせエサがナジみきるまでの間であるため、よりチャンスを増やすためにはナジむ速度を遅くし、またできるだけ長い時間バラケの粒子の中にくわせエサを位置させなければなりません。」
そう言うと萩野は、そのために必要なことを以下のようにまとめて紹介してくれた。

1.やや沖めのエサ打ち
ウキが立つ位置よりも1〜2m沖めに打ち込むことでエサの落下速度にブレーキを掛け、バラケの粒子にシンクロしている時間を長くすることができる。また長い下ハリスの絡みを防ぎ、アタリを出しやすくする効果も期待できるので、段差釣りに限っては沖めのエサ打ちを徹底すべし。
2.長めの下ハリスと小さく軽いハリ
セット釣りでは基本中の基本であるが、最も軽いエサといわれる「一発」の特徴を最大限活かし、バラケの粒子の中に長時間漂わせるためには必須の条件である。
3.オモリ飛ばし(分散)
オモリは二ヶ所以上に分散させた方が落下速度を遅くすることができ、食い気のあるへら鮒の居るタナを広範囲に探ることが可能になる。この日萩野は二ヶ所にほぼ同じ重さの板オモリを分散し、その間隔を約40cmにキープしていた。

「これらの対策により、ややウワズッたへら鮒をバラける粒子で誘導しながら、くわせエサをバラケの粒子にシンクロさせることができるのです。また理想とされるナジミ際で食わせられない場合でも、ナジんだくわせエサをへら鮒のアオリで動かしナチュラルな状態に見せることができるので、自ずとヒットチャンスが広がるという訳です。」
この釣りの食いアタリは極めて特徴的である。極端な表現で言えば、エサを咥えて持って行ってしまったら竿を上げれば良いということになる。通常へら鮒釣りでは鋭くツンと入ったり、豪快にズバッとウキが消し込んだ瞬間にアワせなければヒットさせることはできない。なぜなら麩エサや他のくわせエサでは、吸い込んだ瞬間違和感を覚えるのか、すぐにエサを吐き出してしまうからである。ところが「一発」のような軟らかく軽いエサの場合、吸い込んだ際に違和感が少ないためなのか、長時間口の中に止めたり吸い込んだ直後に 動き始めることが多い。そのためウキに表れる食いアタリの大半が、刻むようにズッ、ズッ、ズッと水没したり、ズルズルと引きずり込まれるような動きになる。これこそがこの釣り特有のアタリなのだが、これに似た動きは他の釣りではことごとくスレか空振りになるだろう。よってアタリの選別は重要な要素となるが、仮にアワせ損ねたとしても、本当に食っていればもそのまま竿を持って行ってしまう、いわゆる「竿ツン」状態になるので慌てる必要はない。
「浅ダナでは稀に小さなアタリになることはありますが、チョーチンでは食いアタリのほとんどが明快なものばかりです。大別するとアタリのタイミングはふたつに分けられます。ひとつはウキが立った直後からくわせエサがナジみきるまでの間で、立ち上がったウキがボディまで浮き上がったり、ナジむ間もなくズルズルと水中に引き込まれてしまいます。またナジみながらトップがズッ、ズッ、ズルッと刻むように消し込んでしまうこともあります。特に食いが良くなるとこうしたアタリが多くなるため、ウキからは決して目を離さず、もちろんエサを打ち込んだら竿から手を離してはいけません。 もうひとつのアタリのパターンは、ナジミ際でのサワリが少なく、完全にウキがナジミきった後のアタリです。このときトップは沈没してしまう(※沈没するくらいにエサ付けすることが肝心)ので、竿先を小さくシャクッてトップを水面上に出し、再びナジむ間のウキの動きを注視します。このときのアタリは初めのナジミ際のアタリと同じような動きになりますが、変化がないときは更に繰り返しシャクッてへら鮒の摂餌を促します。このとき注意しなければならないことは待ち過ぎないことです。先にウワズリ気味が良い状態と言いましたが、待つことでタナに滞留するバラケの粒子が少なくなるとへら鮒の反応が鈍くなってしまうので、常にアタリが出続けるだけの粒子量をキープしなければなりません。」
 
 
 
 
 
  ひさしぶりの一発セットの段差釣りで、しかも初めて使うという「Sピンク」と「一発(ハード極小)」を見事に使いこなした萩野だが、これほどまでに短時間で自在に操れるようになり、しかも充分過ぎる釣果を得られたのは、間違いなくこのエサの持つポテンシャルの成せるワザであろう。
「新しいエサは慣れるまでに時間がかかるものもありますが、これに関してはまったく違和感なく使えましたね。初めてエサを作ったときには見た目はもちろんですが、少し触っただけではさなぎ粉のサラサラ感が印象的で、果たしてエサが持つのだろうかという不安がありました。しかし、ひと通りエサをいじってみるとエサ持ちは抜群で、しかも狙ったところでバラケてくれるので、イメージ通りにくわせエサとシンクロさせることができ、楽しく釣ることができました。もしかしたら、以前自分のオリジナルブレンドエサで段差釣りをしたときよりも簡単に、しかもシンプルで格好良く釣れたのではないでしょうか?」
一部ではマニアックな釣り方というイメージのある段差釣りだが、今回萩野が実践してくれた段差釣りは至って単純明快で、レシピ通りのエサと釣り方にマッチしたタックルセッティングさえ整えておけば、何も難しいことは考えなくても良いくらいあっけなく釣り込んで見せた。これはエサの性能+萩野のテクニックだけではなく、時代(釣り場の状況)が段差釣りの復活を示唆している証ではないだろうか。 へら鮒釣りにハマるきっかけは十人十色だが、なかでも初めて釣りに行った際にたくさん釣れたことでハマってしまうケースは多いはずだ。しかし、現在の管理釣り場は年を追うごとに難しさを増しており、いきなりの爆釣体験が困難になりつつある。今回萩野が披露してくれた段差釣りは、そうした夢を現実のものにする可能性を秘めており、門戸を広げるための大きな力となることは間違いない。また、かつての段差釣りに良いイメージを抱いていなかったアングラーにも違和感なく受け入れられるであろうし、今後多くのアングラーに「Sピンク」並びに「一発(ハード極小)」が使いこなされブラッシュアップされることで、更なる進化を遂げるに違いない。
 
   

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