へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第35回 伊藤さとしが自己レコード更新! 大型が乱舞する魅惑のマッシュダンゴ


麸エサ全盛と言われる現在マスコミにも取り上げられる機会が激減し、やや表舞台から消えかかった感のあるマッシュだが、全国的に見ればマッシュの人気は根強く、その実績も決して他に劣るものではない。特にダム湖等の野釣りには今なお欠かすことのできないエサであり、特に巨ベラ狙いには無くてはならない必須アイテムなのである。そこで今回は各地の野釣り場に精通し、巨ベラ釣りにも一家言を持つマルキユーインストラクター伊藤さとしに、宙釣りで狙うダム湖の巨ベラ攻略法を紹介してもらうべく千葉県君津市の笹川湖(片倉ダム)を訪れた。すると伊藤自身がビックリの、自己新記録となるランカーベラが取材スタッフの目の前を乱舞したのである!  
   
「乗っ込み期に底釣りで放卵した巨ベラを狙う場合、麸系のダンゴエサやグルテンを使う機会も少なくないが、それ以外の時期において、特に宙釣りで尺半オーバーのカタモノを狙うときにマッシュは欠かせないエサなんだ。」 こう言い切る伊藤だが、確かに巨ベラ釣りにマッシュエサが欠かせないことは昔も今も変わらない不変の法則であると、巨ベラ師の間では至極当たり前のこととして認識されている。ではナゼ、巨ベラを釣るのにマッシュが有効なのであろうか?伊藤の見解をまとめると概ね次のようになる。

1.エサ持ちが良い
言い換えれば「外側からゆっくり解ける」ということになるが、まったく練り込みを加えない状態ではホクホクしてまとまらないマッシュでも、練り込むことで芯ができてエサ持ちが良くなる。しかも麸エサと異なり芯への吸水が遅いので型崩れせず、エサ付けを大きくすることでさらに巨ベラの強烈なアオリに耐えて確実に芯残りさせることができる。

2.ジャミや外道の寄りを抑制できる
知っての通り、マッシュには集魚剤が含まれていない。またブレンドする他の素材にもさなぎ粉や魚粉等の集魚剤は入っていないので、ジャミやへら鮒以外の魚種の寄りを抑えることができる。このことは巨ベラへのアピール力にも悪い影響を与えるのではないかと思われがちだが、元来エサを食うまでに時間がかかる巨ベラは、たとえ強力な集魚剤を加えてもそれに見合う効果は乏しいといわれている。よってゆっくり時間をかけて食わせる巨ベラ釣りでは、マッシュ系のエサは真に理に適っているという訳だ。

3.微粒子が摂餌を刺激する
元来プランクトンイーターのへら鮒だが、大型ほどプランクトンに似た微粒子素材を好むと考えられている。マッシュの粒子はそうした巨ベラの嗜好に適しており、さらに微粒系の麸材とブレンドすることで、水中で縦にも横にも漂い巨ベラの足止め効果と摂餌刺激力に効果を発揮する。
 



   
■サオ
あくまで目標は尺半オーバーの巨ベラだが、この釣りは乗っ込み期に浅場で釣る放卵ベラとは異なり、力任せに引き抜くといったパワーゲームではない。とはいえ並みの竿では相手に主導権を握られてしまい容易に引き寄せることはできない。乗っ込み期の短ザオならばパワーロッドの代表格、シマノ「飛天弓 頼刃」や「剛舟」を愛用する伊藤だが、この手の釣りでは13〜21尺といった中尺〜長尺竿となるため、強さばかりではなく操作性をも兼ね備えたシマノ「朱紋峰 煉」や「飛天弓 閃光X」を好んで使う。そして何より大切なことは、ポイントに潜むストラクチャー周りを的確に捉えられる長さのものを選択することが大切だと力説する。
 
■ミチイト
相手が大物だけに、当然ながらタックルは太仕掛けとなる。今回の釣りで伊藤は、巨ベラといえどもコンディションに合わせて、ライト系タックルとヘビー系タックルを使い分けることが必釣のコツであると言い添えた。ちなみにライト系の標準サイズは2.0号、ヘビー系の標準サイズは2.5号だ。
 
■ハリス
ミチイト同様に太仕掛けが必要で、組み合わせとしてはライト系の2.0号のミチイトには1.2号のハリスを、ヘビー系の2.5号のミチイトには1.5号のハリスを標準とする。長さに関しては警戒心がすこぶる強い巨ベラに対し、ぶら下がったエサの動きをできるだけナチュラルに演出するため、一般的な浅ダナ両ダンゴに比べるとかなり長めにするのが伊藤流である。また標準的なハリス段差が30cmという点についても伊藤流のこだわりが見てとれる。それは直径20mmを超える大きなエサ玉が接近していると、それだけでひとつのエサとして誤認される恐れがあり、また段差を大きくとることでサスペンド状態の巨ベラのレンジを幅広く探れるというメリットも生まれるという。
 
■ハリ
巨ベラの口が大きいから大きなハリを使うという単純なことではなく、最も重要な理由は大きなエサをとにかく持たせ、絶対にエサの芯を最後までハリのフトコロに残すためである。実際にエサをハリに付けて振り込んでみれば分かることだが、直径20〜25mmといった大きなマッシュダンゴは想像以上に重く、慣れないと上手く振り込めないほどである。軟らかめのタッチのエサであれば尚更のこと、振り込み時の遠心力に加えてエサ自体の自重でハリ抜けしてしまう恐れがあるので、できる限り大きなハリを使って確実にエサを持たせる必要がある。

■ウキ  
ウキもまた巨ベラ狙いという目的から、写真でも分かる通りそのフォルムは極めて特徴的である。何より大切なことは大きなエサ玉の重さを抱えきる浮力があることだが、今回伊藤はライト系とヘビー系のふた通りのアプローチに対して二種類のウキを使い分けた。スペックは前述の通りだが、その浮力は一般的な麸系ダンゴエサでの釣りではライト系のもので18尺一杯、ヘビー系のものに至っては24尺以上の深ダナでも通用するくらい大きい。それでタナ2〜3mのレンジを探りながら釣る訳だが、当然のことながらエサの動きを干渉するので巨ベラに警戒されやすくなる。それを緩和してなおかつナチュラルな動きまで演出するのが超ロングハリスの役目であり、トータルバランスの観点からもこのウキあっての長ハリスということになろう。
 
 
 
 
当たり前のことだが、巨ベラが居なければ釣ることはできない。しかし、巨ベラ以外のへら鮒の魚影が濃い釣り場では、それらが寄ってしまうと先にエサを食われてしまうので、巨ベラが釣れる確率は極めて低くなってしまうという。
「たとえ魚影密度が薄くても、棲息するへら鮒の大半が大型ベラという釣り場の方が尺半オーバーの巨ベラが釣れる確率は高い。そうした条件が揃う釣り場としては、関東ではここ笹川湖(片倉ダム)や下流にある亀山湖などが有名だが、他にも相模湖や檜原湖といった巨ベラで有名な釣り場もある し、全国に目をやれば巨ベラの棲息するダム湖が無数に存在する。そのいずれにも共通するのが前述の条件で、さらにジャミを含めた外道の魚影が濃く、へら鮒自体の魚影は意外に薄いという点も似ているね。またそうした釣り場であればどこでも釣れるというのではなく、ポイントが限定されるという点も見逃せない重要な要素になるんだ。たとえば水中に水没した立木等のストラクチャーがあってへら鮒の着き場になっていたり、そうしたものが無いところでも地底に凹凸などの変化があったり、水の流れがぶつかり合ってプランクトン等のエサが集約するところであったりと、釣れるポイントには何らかの要因があることは確かだね。だから実績と情報収集は何よりも重要で、極端な場合、数メートルしか離れていなくても、そこだけしか釣れないというポイントがあるなんてことも決して珍しいことではないんだ。」
当然のことながら取材前に入念な情報収集を行った伊藤は、ポイントに到着するとまるで水中が見えているかのように、サオの長さとタナの深浅で、巨ベラが絡む水中の立木群の際をピンポイントで攻めて行く。しかし取材二日目、伊藤のこの言葉を伊藤自身が身をもって思い知らされることになろうとは、好調に釣れた取材初日には思いもしなかったであろうが、百戦錬磨の伊藤でさえ自然の摂理には敵わないということなのであろう。ウキの動きが思わしくないと見るや否や数時間のエサ打ちで状況を見切ると、前日の釣況から二の手三の手といった感じでポイント移動を繰り返し、挙句の果てには最初のポイントに戻るという結果になったのである。
「巨ベラは居るところには居るもので、アタリが出なければ自分から居場所を求めて動いた方が良いことの方が多いね。早ければ1〜2時間、遅くても3時間が目安かな。」
 

スタート時のタナを三本(約3m)とした伊藤。同湖では実績のあるタナだというが、開始早々このタナに固執するつもりは毛頭ないという。
「巨ベラはエサ打ちでウワズったりシタズったりすることは少なく、ましてや落下中のエサを自ら追ってきて食うことはほとんどない。自らがこのタナの居心地が良いと思ったらそう容易くはタナを変えないので、こちらから歩み寄ってエサをへら鮒の口元に近づけてやる必要があるんだ。」
実釣ではそれこそ数え切れないくらい頻繁にタナを変動させた伊藤だが、もちろん闇雲に変えていた訳ではない。一度に変化させるタナは30cmを基本とし、最終的にはそれ以下の微調整も加えていたが、変えるきっかけとなっていたのはウキへのサワリの表れ方で、ナジミ際に変化が見られないときは深くし、ナジミ際にサワリがあってもナジミきったら動かなくなったり、明らかに糸ズレと思われる動きが見られたときは浅くしていた。
「タナが合っているときはナジんだウキがジワジワ動き始め、やがて大きなサワリの後でエサが煽られるとトップがフワッと持ち上げられ、そこでズッと重々しく入るアタリが出るはずなんだ。まずはこのサワリが出るタナを見つけることが大切だが、一発で見つかることは少なく、大抵はエレベーターのようにウキの位置を上下に動かし続けなければならず、この作業を億劫がっていては巨ベラに出合うことはできないよ。」
一般的なへら鮒釣りでは、特に宙釣りではサワリなくエサがナジんでしまったら、あまり待たずに打ち返すのがセオリーだと教えられてきた。ところが巨ベラ釣りではこのセオリーは頭から捨てて掛かっていただきたい。とにかく待つことが重要で、またその待ち方にも伊藤ならではのセオリーが見てとれる。まず何の変化もウキに表れないときは深ナジミした状態でも早めに打ち返す。ちなみに伊藤のエサ付けはライト系で直径20mm強、ヘビー系で直径25mm程と大きく、毎投トップ4〜5目盛りはしっかりとナジミ幅を示し、打ち込んでから1分近く経ってもトップは1目盛りも戻さない。それほどゆっくり解けるエサに仕上げている訳だが、これも巨ベラが相手の釣りならではの策なのだ。

「とにかく巨ベラはエサに食いつくまでに時間がかかるんだ。だから普通の麸エサのように開くエサでは食いつく前にエサがハリから解け落ちてしまうことになる。そこでマッシュダンゴの登場となる訳だが、充分に練り込んだマッシュダンゴであればこの遅い摂餌のリズムに合うし、サスペンド状態での巨ベラの強烈な煽りに耐えることもできるんだ。狙ったタナにターゲットが居れば必ずサワリが表れる。理想的なサワリはウキがナジミきってから重々しく動き始めるパターンだが、これが出ている間はエサ落ち目盛り近くまで待つこともある。しかし実際に釣れるときのアタリはエサが充分に残った状態で出ることが多く、ナジミきったウキが小さく上下動を繰り返しながら、時間をかけてジワジワと1〜2目盛り戻したところでズンと出れば迷わずアワせるよ。ただし注意しなければならないのは、ただでさえアタリが少ない釣りなので突然アタったり、不確かな小さなアタリでも思わずアワせてしまい、スレバラシをすることだけは避けなければならない。折角エサの傍まで来た巨ベラをみすみす逃してしまうからね。数釣りならばせっかちな人の方が向いているかも知れないが、巨ベラ釣りに関してはのんびり構える年配のアングラーの方が確実に実績を上げているので、こうした遅い摂餌リズムとの因果関係は明らかなようだね。」
郷に入っては郷に従え、巨ベラを釣るには巨ベラの摂餌リズムに従えという感じだろうか。とにかく伊藤は辛抱強くアタリを待った。そしてサワリが強まったときは集中力を高め、数少ないチャンスを確実にものにすることで自己新記録となる49.7cmのランカーを仕留めることに成功したのである。
 
 
  落下中のエサを追わせる釣りではないことは既に述べたが、それにも関わらず長いハリスを使うことにはもちろん意味がある。それは巨ベラが潜むレンジを幅広く探ることと、食う直前のエサの動きをナチュラルに演出するためだ。特に伊藤はレンジを探る点において、特徴的なエサの打ち込みを実践していた。それが振り切りでもなく落とし込みでもない、やや沖打ちだ。
「エサが大きく重いので、慣れないとしっかりしたサオでないとエサ打ちもままならないかも知れないが、巨ベラを釣るためには正確に狙ったポイントに打ち込むことが大切なんだ。やや沖めに打ち込むのは、ナジミ際のウキの動きからどのタナにへら鮒が居るのかを知るためであると同時に、たとえぶら下げたエサを食わせるアプローチであっても、限られた範囲内でへら鮒にエサの存在をアピールすることが大切だと考えているからに他ならない。基本的にサソイは用いずに、寄ったへら鮒自身の起こす水流でエサを動かして摂餌を刺激するが、そのとき長いハリスの方がエサの動きがナチュラルに見えてへら鮒の摂餌を刺激できると思っているんだ。もっとも振り切りではエサ持ちが悪くなる恐れがあるし、落とし込みだとハリスが絡みやすいというデメリットもあるので、やや沖めに打ち込むこの方法がお勧めだね。」

 
 
 
 
  基本的にアタリの少ない釣りなので、いつアタるのか常に緊張を強いられる釣りのように感じるのだが、この点についての伊藤の見解はこうだ。
「確かにアタリは少ないが、釣れるときのアタリの前には必ず前触れとなる強めのサワリがトップに表れるので、それ以外のときは意外にのんびり待っているんだ。言い換えればサワリがあるときだけ集中していれ ば良い訳で、いつアタるのかまだかまだかとウキを見続ける必要はない。大切なことは、このサワリを見逃さないこととじっくりアタリを待つこと。さらにアタリが出る際のキーポイントになるちょっとした「きっかけ」を見逃さないことだね。それは巨ベラの食い気が出るスイッチみたいなもので、エサのすぐ近くで警戒して食いつかない巨ベラが、思わずエサに飛びついてしまうトリガーなんだ。たとえば雨や曇天から急に陽が射して暖かさを感じたときや、ベタ凪から風が吹いてさざ波立ったとき。また流されていたウキが止まった瞬間や、しばらくエサ打ちを休んだ直後の一投目とか。そう言えば底釣りでは「床休め」といってエサ打ちを一時休めることが巨ベラ釣りでは有効だと知られているが、宙釣りでもタナに漂うエサの粒子を一旦リセットしてクリアーな状態に戻すと、それまでエサを食うことをためらっていた警戒心の強い巨ベラが思わずエサに飛びつくことがあるので、そうした変化があった直後は集中力を高めておく必要があるね。とにかくチャンスは少ないので、訪れたワンチャンスを確実にものにするくらいの気構えは必要だよ。」
実釣時も確かにアタリは少なくスタッフも長時間の緊張を強いられたが、伊藤が解説してくれた「サワリ」を見逃さなかった撮影クルーが見事に巨ベラの食いアタリを捕えているので、その映像をとくとご覧いただきたい。
 
 
   
 
 
   
 
   
 
 
  巨ベラを目の当たりにすると、その迫力に豪快さばかりが強烈に脳裏に焼きついてしまうが、内実はその迫力とは裏腹の極めて繊細な一面がある釣りであることがお分かりいただけたであろうか。今回伊藤が見せてくれたマッシュダンゴの釣りは、こうした巨ベラを釣るためには必須の釣法であるが、エサ使いはそのままに、繊細なタックルに仕様変更したうえで一般的な尺前後のへら鮒を狙う釣りもその範疇としている。マッシュダンゴの釣りは、いわばへら鮒釣りの原点でもあり、全国的に見れば非常にポピュラーな釣り方だ。しかしそ の具体的なエサ使いや釣り方が意外に知られていないため、折角のチャンスをみすみす逃してしまっている人も多いはず。今回はラッキーなことに、取材にも関わらず伊藤自身の大型レコードを更新する巨ベラを釣ることができたので、この釣り方のポテンシャルを改めて実感していただけたのではないだろうか。秋は春に続いて巨ベラが釣れる絶好シーズン。皆さんもこれを機会にマッシュダンゴの釣りを体験してみてはいかがだろうか!
 
   

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