へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第38回 夢の新べら200枚の大爆釣! 寄せて食わせるハイブリッド釣法 西田一知のチョーチンバラグルセット釣り


へら鮒釣りの風物詩でもある新べら放流は、今がまさに最盛期。各地の釣り場に放流されたピッカピカの新べら達が、あちらこちらで大きく竿を絞り込む光景が繰り広げられている。釣技最前線では以前、この新べらをターゲットにした釣り方のひとつとして、インストラクター西田一知の両ダンゴ感覚で攻めるチョーチンバラグルセット釣りを紹介した。そのアクティブな釣り方は大きな反響を呼んだが「この釣り方の本当のポテンシャルはこんなもんじゃない!」と西田一知本人たっての申し出によりに、放流間もない野釣り場で新べらの固め釣りを披露してもらうことにした。  
   
へら鮒釣りには様々なエサ使いがあるが、それらは概ね活性の高低や食いの良し悪しによって使い分けられる。では今が旬の新べら釣りはどうかというと、大抵は両グルテンを選択することが多いのではないだろうか。確かに新べらに両グルテンはセオリーのひとつだが、ひとことに両グルテンといっても、初めから両グルテンで決め打ちすることもあれば、バラケにグルテンのセット釣りで始めて、アタリが続くようになってから両グルテンに切り替えて効率良く釣ることもあるだろう。勿論非常に食いが良いときには両ダンゴという選択肢も外せない。
「確かにそうした釣り方をされるアングラーは多いかも知れません。しかし私の場合は違います。たとえば様子を見るためにバラグルセットで始めたとして、半分近くバラケを食ってくるからといって両ダンゴに切り替えても、この時期の両ダンゴは意外にエサ幅が狭く、長時間同じパターンのエサ使いで続くことが少ないのです。またアタリが続くからといって両グルテンに切り替えた場合、確かにヒット率は一時的にアップしますが、あまりに連続して釣り過ぎると寄っているへら鮒の量が少なくなり、やがてアタリが無くなってしまうことがあります。このように途中でエサ使いを変更すると、たとえ替えた直後は釣れてもやがて時合い落ちしてしまうことが多いことを私自身がよく分かっていますので、それならばバラグルセットを通したうえでヒット率を高める工夫をした方が釣果は伸びると思い、今のスタイルの釣り方に辿り着いたという訳です。」
前回の取材時もそうであったが、関東へら鮒釣り研究会横綱でもある西田の釣りは豪快な一面の裏に極めて緻密で計算し尽くされた組み立て方が存在する。今回改めて実釣を目の当たりにしたときに感じたことは、この釣りは前回紹介した両ダンゴ感覚の釣りであると同時に、両ダンゴの集魚力の強さと両グルテンのヒット率の高さを兼ね備えた、いわば両者の良いトコ取りのハイブリッド釣法だということだ。取材冒頭彼はこう言った。
「効率だけを求めるのであれば両グルテンには敵いません。確かに初めは5枚も10枚も先行されることもありますがそれは一時的なものであり、一日を通した釣りでは、この釣り方は絶対に負けません。とにかく野釣りではへら鮒を寄せ続け、ウキを動かし続けることが重要なので、たとえカラツンが続いたとしてもあまり神経質になることはありません。むしろウキが動いていることに安心して釣りに集中できることの方が大切なので、カラツンは爆釣の前触れというくらいに開き直っていますよ(笑)。」
 

   
■サオ
この釣り方では竿の長さは極めて重要だ。それは放流された新べらが無理なく居続けられるタナにダイレクトにエサを送り込むことで、ストレスを感じることなくエサを食わせることができるからだ。確かにエサを打てばそのタナに新べらは寄ってくる。しかし無理のあるタナではエサ打ちの手を休めたり、気象条件や時間的な食いの変動があると釣れ続かないことが多く、それならばこちらから新べらが居着くタナに歩み寄った方が釣りやすくなるという発想である。また初めに出した竿で違和感がある場合、途中で変更することは当たり前のこと。当日も27尺でスタートしたが、極度にウワズリを感じるようになったときに25.5尺に換え、その後ウキの動きが不安定な状態になった際に再び元の27尺に戻すなど、竿の長さを換えることで安定した時合いを維持していた。
 
■ミチイト
目指すは200枚オーバーの大爆釣。当然ダブルで釣れることも多く、特に勝負が懸かった例会では無用なトラブルを避けることが何より重要なので、今回は実戦さながらのセッティングということで1.0号をチョイスした。但し厳寒期になりこれほどの釣果が期待できないときにはワンサイズ細めとしてナチュラル感を増す方が良い。
 
■ハリス
基準は上ハリスが0.5号25cm/下ハリスが0.4号65cm。上ハリスがやや長めなのはへら鮒をタナに誘導する効果を高めるためであり、エサ持ちが悪くナジミ難くなるときには5cm詰める。下ハリスもナジミ際のアタリを出すために65cmを基準とする。実釣では小型の新べらが寄ってカラツンが続いた際に5cm詰めたが、西田が理想とするナジミ際のパターン化されたアタリが持続するときには長めで決まることが多いという。
 
■ハリ
バラケを保持する上バリはエサ持ちを強化するために7号を基準とし、グルテンの下バリは新べらの口のサイズ(今回は3〜4枚/1kg級主体)に合わせて4号を基準とする。下バリは大き過ぎるとカラツンになりやすいので、エサ付けサイズも含めて大きさには充分注意する。

■ウキ  
ウケを重視する西田の釣りでは、タックル(エサ)の沈下速度はいわば生命線。オモリ負荷量の大きなウキではオモリが鋭角的なV字を描いて沈下してしまうのでウケが出難くなるという。そこで、ゆったりナチュラルに沈めてウケを出させるために、やや浮力が小さめのパイプトップウキを使用。両ダンゴの深宙釣りでも西田が愛用している忠相『ツアースペックF』は、今回のような深ダナをピンポイントで攻められるので、この釣りに打ってつけのタイプといえよう。
 
 
 
 
数を釣るためにはまずへら鮒が大量に居なければならない。ましてや野釣りで200枚という大爆釣を果たそうというのであればなおさらのこと、是が非でも新べらが大量に溜まるポイントを探り当てなければならない。
「現在の管理釣り場では、新べら放流直後に大きな群れで固まるということはあまり見られなくなりましたが、野釣りでは今でも大きな群れで移動することが多く、しかも居着き場所では比較的大きな集団でとどまるので、まずはそうしたポイントに入ることが絶対条件となります。新べらの動きは釣り場によって異なりますが、ある程度の傾向はみられるので、過去数年間のデータ(実績)は大いに参考になります。それに例会であれば直前の試釣の結果も判断材料になりますので、絶対とは言い切れないまでもある程度絞り込むことは可能です。」
その際必ずチェックしなければならない項目と言ってあげたのは以下の7項目だ。

1.放流時期
放流から1〜2日間は移動が速くその行動範囲も広いため、前日は釣れても翌日はもぬけの殻ということも少なくない。確実性が高いのは1週間程度経って水にも慣れて落ち着き場所を定めた群れだという。

2.放流量
釣果は群れの大きさに左右されるが、当然ながらそれは放流量によって決まる。多ければ多いほど一塊の群れは大きく、一旦釣れ始めると長時間持続するので大釣果となる可能性が大きい。

3.新べらのサイズ
2.5枚〜3枚/kg級が釣りやすく、これ以上大きいと口数が少なくなるのでアタリが持続し難く、小さ過ぎるとエサを食いきれないことによるカラツンが多発し釣り難くなる。

4.放流場所
移動経路や定着場所に影響するので、どこから放流されるかは大変重要な問題である。毎回同じ場所で放流されるのであればほぼ同じような行動パターンを繰り返すが、複数の場所で放流される釣り場では、その違いだけでも釣れるポイントが変わってしまう。

5.釣り場の水位・変動
水位は高いと広範囲に散らばりやすく、減水時には深場に溜まりやすくなる。また増水時には上流域まで一気に遡上することあるが、減水時には放流場所近くにとどまることが多い。

6.気温・水温変動
気温も水温も高いほど動きが良いので群れが分散しやすく、低いほど固まっていることが多い。但し低過ぎると悪影響を及ぼすので、群れで居るポイントでも釣果が伸び悩むことがある。

7.回遊層(タナ)
放流後の回遊層は様々な要因によって左右されるので、宙が良いのか底が良いのか、宙ならばタナは浅いのか深いのか、底であれば浅場なのか深場なのかを試釣時に確認しておく必要がある。

ちなみに取材フィールドとなった三島湖は、西田自身過去に何度も大爆釣を記録している釣り場だが、取材日の4日前には今季2回目となる新べらが3.4t放流されており、当然1回目の放流(約10日前に2.0t)と合わせた読みが必要となる。西田は取材時の撮影にも配慮しつつ、減水時(取材時点の水位は-3.7m)でも10m近い水深がある、三ツ沢岩盤ロープにポイントを定めた。そして駐車場の車のフロントガラスが凍りつくほどの冷え込みとなった当日の気象条件を加味し、やや深めのタナから探ろうと27尺を継いで実釣をスタートした。


へら鮒は元来回遊性のある魚である。特に野に放たれた新べらは居心地の良い場所が定まるまで移動を続ける。このことからも分かる通り、運良く新べらの群れに当たったとしても、釣っている最中に居なくなったり、移動する程ではないにしても釣ればそれだけ数が減ることになる。つまり安定して釣り続けるためにはへら鮒の群れを足止めする必要があり、寄せながら釣り、釣りながら寄せ続けなければ夢の200枚オーバーには手が届かないという訳だ。 こうした理由から西田はバラグルセットを貫き通している訳だが、両グルテンの釣りに比べると当然カラツンは多くなる。一般的なカラツン解消法としてはバラケを小さくしたり開きを抑えたり、またハリスを詰めたりアタリを送り気味にするなどの対策が有効だが、ここで無理矢理カラツンを無くそうとすると、たとえ一時的には釣れてもやがて必要量の寄りがキープできなくなる恐れがあるという。
「この釣りではカラツンはつきものです。しかし必要なのは最終的な釣果であり、目先の一枚を釣ることではありません。よって多少のカラツンには目を瞑り、委細構わず打ち切ることが大切です。新べらはエサに飢えていますので、寄り始めは一気にエサに群がるため一時的にウワズリの兆候が見られると同時にカラツンが目立ちます。しかし、ここからさらにエアーを充分に含んだバラケを打ち込み続けると、タナには充分な量のへら鮒が溜まり始め、やがて競い食いの状態ができあがると毎回のようにアタるようになり、さほどカラツンも気にならなくなるのです。」
この言葉通り、実際にエサを打ち始めると開始直後にウキは動き始め、30分も経たないうちに5投に3〜4投はアタるようになり、その内1〜2投がヒットするという状況になった。確かにこれだけウキが動くのであれば、的確なカラツン対策を施せばヒット率はアップできそうに思われた。いやそれよりも、両グルテンの方が釣りやすいのではと思える感じの動きである。しかし西田は表情ひとつ変えることなく27尺という長ザオを巧みに操り、何食わぬ顔で坦々とエサを打ち込み続ける。 話は前後するが、この日の釣り始めの時点でのエサ付けサイズはバラケが直径20mmほどの水滴形、グルテンはグラン鈎4号が隠れる程度の小さめで、エサ落ち目盛りを8目盛り出しとしたトップは4〜5目盛りのナジミ幅を示していた。しかし開始直後に動き出したウキはすぐにナジミ幅が少なくなり、ここですかさずバラケに手を加える西田。バラケの調整方法に関しては別途映像で確認して頂きたいが、基本は少量の手水と五指を熊手状にしての撹拌のみ。決して押したり練ったりはせずに、常にエアーを含んだソフトタッチのバラケを投入しウキを動かし続ける。
「タナに寄せきるためには、バラケにエアーを含ませておくことが重要です。但しナジミ幅が少なくなることはタブーなので、ナジミが悪くなったら先の調整を繰り返し、自然な麩のネバリで必ずバラケがタナまで持つようにしなければなりません。なぜならこのエサ持ちがタナへの集魚のキモであり、くわせエサであるグルテンに誘導するための生命線だからです。ここで注意しなければならないのは、バラケを持たせよう として無理に練ったり、ガッチリとエサ付けしてしまうことです。これではたとえナジミ幅が出てもバラケにアタってカラツンになる可能性が高く、なにより集魚効果の点で大きなマイナス要因となってしまうのです。」
相手は新べらで、しかも開始間もなくウキが動き出したとなれば、すぐにでも連続して釣りたくなるのが釣り人の性(サガ)と言うものだが、ここはあえて我慢をし、来るべき時合いに備えて着実にへら鮒をタナに寄せることに専念することが肝心なのだ。実際に例会等では西田の近くで両グルテンでいきなり入れ食いを見せつけられることもあると言うが、ここでのアドバンテージはまったく気にする必要はないと西田は言い切る。それはいずれ訪れるパターン化されたウキの動きにより爆釣できると、絶対の自信を持っているからに他ならない。では一体、そのウキの動きとはどのようなものなのであろうか!
   
「新べらを100枚、200枚と釣るためには、複雑なウキの動きの中からアタリを選別したり、毎回異なるタイミングで出るアタリを狙っていたのでは不可能です。まずは同じ様なウキの動きを毎回出すように心掛けることが大切で、それには完全にへら鮒を寄せきらなくてはなりません。当然ながら寄せきるまでのウキの動きはバラバラです。アタリの特徴としては比較的深ナジミしてから強くしっかりアタるのは、バラケへのアタリと考えられます。一方でグルテンを食うアタリはナジミ際にムッと押さえる感じのものが多いのが特徴です。また寄りが少ないときほどハリスが張るので、比較的大きなアタリとなることが多く、寄りが増すにつれてハリスが張り難くなり、またナジミきる前に食われることが多くなるため小さなアタリになる傾向です。こうしたことを理解したうえで私が目指す理想とするアタリは、ウキが立ち上がった直後に明確なウケがあり、その後小さな上下動を繰り返しながら徐々にナジミに入ったウキがエサ落ち目盛りを通過する前後でムズッ、チクッと1〜2目盛り明確にアタるパターンで、これが続くようになれば大釣りは必至です。何よりウケが出ることはタナに充分なへら鮒が寄ってきた証拠で、どうしてもウケが出ないときには新べらのタナが違うと判断して、竿の長さを換えて時合いの構築に再チャレンジします。」
こうしたウキの動きは映像でタップリご覧いただくとして、驚くべきは時合い時のウキの動きである。実釣開始から3時間が経過する頃、徐々に理想とするウキの動きに近づくと、西田は「これこれ、このウケがあれば必ずナジミ際に良いサワリが出る!このサワリがあればエサ落ち目盛りを過ぎた辺りでアタる!ほら食った!」と、予言の如く解説をしながら連チャンを決める。ウキはまるで精密機械のように規則的な動きで食いアタリを伝え続けると、それに応えるようにこれもまた取り込みマシーンと化す西田。圧巻のパフォーマンスの始まりだ!
「こうしたウキの動きが出せるのも、エサが持っているという絶対的自信があってこそ。バラケは勿論のこと、くわせエサとして使用しているグルテンの核となる「凄グル」はタナで開くことで新べらの食い気を刺激し続けるので、カラツンが少なく大変釣りやすいのです。」
 
 
 
   
  天候の急変により、中盤以降は突然の食い渋りに見舞われてしまい、残念ながら200枚オーバーとはいかなかったが、新べらの動きを読んでのポイント選定に始まり、タナ(竿の長さ)の判断、的確なエサ使い等々、西田が披露してくれたハイブリッドなバラグルセット釣りは、夢の大爆釣が現実になりそうな予感・期待感を抱かせるに充分な内容であった。
「思ったよりもタナが凝縮できず、冷え込みと低気圧の影響で食いも今一でしたが、今日のような状況でも新べらの群れを外さない限り140〜150枚はいけそうな感じでした。やはり新べらを固め釣りするにはタナ(竿の長さ)は最も重要な要素のひとつであり、今日も27尺と25.5尺の2本を使い分けましたが、無理なく釣れるタナに集魚力に優れたエサを送り込めれば、誰でも夢の大爆釣の可能性があります。これからもまだまだ新べら放流が予定されている釣り場がありますので、是非長竿でのチョーチンバラグルセット釣りにチャレンジしてみてください。」
 
   

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