へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第39回 2014関べらチャンプ戸張誠が魅せる厳寒期の横利根川攻略法 待って仕留める超基本バラグルセットの底釣り


野釣り場を主戦場とする「関東へら鮒釣り研究会」において、爆釣に次ぐ爆釣を積み重ね、昨年度の年間レースを制したマルキユーインストラクター戸張 誠。今回の釣技最前線では稀代の野釣りの名手の爆釣プロセスをお届けするのではなく、あえて最もウキの動きが少なくなる厳寒期の横利根川においてバラグルセットの底釣りを披露してもらう。なぜなら、この釣り方こそが野釣りを制する王道釣法であり、へら鮒釣りの原点であるからだ。 取材は12月24日。前日開催された農林水産大臣杯にもエントリーした戸張。出船が遅かったためにポイントに恵まれず、あいにく結果は芳しくなかったようだが、それだけに何の縛りもない条件下で魅せる本気モードの釣りは、大いに見応えのあるものとなった。  
   
見出しの言葉に違和感を覚えたかもしれないが、取材を通して感じた筆者の率直な感想である。なぜ、長い時間をかけてアタリがでるのを待っているのに「攻めの釣り」と感じるのか。それは今回の取材の核心部分でもあるのだが、単にへら鮒に任せてアタリがでるのを待つのではなく、時々刻々変化する時合いに合わせて、誰もができる“やるべきこと”をひとつ残らず確実に実践し、やがて訪れる好時合いを逃さずキャッチするための態勢を整えておくことで、一気呵成に釣り込むフィッシングスタイルを貫いているからだ。
今回の取材では直前に新べらの放流が行われていたが、いつものように簡単に入れ食いになるような状況ではなかったが、このことは取材テーマとしてはむしろ好都合。簡単には釣れない状況下で、戸張がどのようなアプローチで厳寒期の横利根川を攻略するのかが、より鮮明に紹介できるだろう。
さて、毎年管理釣り場並みの放流量を誇り、真冬であっても20kg、30kgといった大釣りの可能性を秘めた横利根川だが、さすがに厳寒期のウキの動きは激減する。近年放流直後は宙釣りでも好釣果が出る傾向があるが、明らかにバクバクの大釣りが期待できない状況下では底釣りを第一に選択するという戸張。
「早いアタリで入れ食いが可能なときには宙釣りも有効だが、この時期の実績からすれば安定感のある底釣りが一番。常に流れがある釣り場なので、初めから外通しや中通しといったドボンの底釣りをする人も多いが、よほど強い流れでもない限り、僕はバランスの底釣りで攻める。その理由はウキの動きを通してへら鮒の状態が読めるからなんだ。
ただでさえアタリが少ない状況下では、ドボンの釣りではどうしてもアタリを送ることが難しいため、ウキが動けばついアワせてしまいがちで、その結果スレバラシで寄ったへら鮒を散らしてしまうことが良くあるが、多少の流れであれば流しながらでもバランスの底釣りの方が確実に釣り込めると考えている。
何より厳寒期のアタリが続かない状況では、じっくり攻めることが肝心なんだ。ただしアタリが出るのをただ待っているだけでは釣果は伸びない。野釣りではへら鮒を寄せ続けることが大切だが、へら鮒の動きが鈍い時期においては早アワセによるウワズリは致命傷になりかねないので、アプローチとしては気持ちのうえでは攻めながらも、実際は待つことがとても大切なんだ。」



   
■サオ
底釣りでは使用する竿の長さ一杯で底が取れるものを選ぶことがセオリー。これは正確な底ダテやエサ打ちポイントの微調整を容易にするためだが、野釣りではへら鮒が居るポイントや回遊ラインに届くことの方が重要なので、水深に対してたとえ中途半端であってもベストと思える長さの竿を使う必要があるという。今回の入釣ポイントの水深は3m強。竿一杯であれば10〜11尺といったところであろうが、手前(護岸寄り)の底の状態が良くないことや、居着きのへら鮒がやや沖めであるという読みから16尺という長さを選択。当然ウキが流されるリスクはあるが、それでも食うへら鮒が居るところにエサを送り込むことの方が大切であるという証である。
 
■ミチイト
数が釣れる条件下であれば多少太くてもそれほど気にならないが、太さは野釣りということもありトラブルを避けるために0.8号とする。フロロだと中途半端なタナの場合、穂先からウキまでの余った糸の自重でウキがシモってエサ落ち目盛りがくるってしまうのでナイロンラインを使用する。
 
■ハリス
よほどのことがない限りハリスの長さを変えることのない底釣りでは、スタート時点の長さにはかなりの精度が求められる。考慮すべきは季節や釣り場等の特徴や、魚影や食い気といった釣況であるが、これに経験値というプラスαが加わり今回の長さとなった。もちろん取材時にも、始めから終わりまでハリスの長さは一度も変えずに釣りきった。
 
■ハリ
バラケは底に置いてくるイメージだと話す戸張。また状況によっては両グルテンで攻める場面も想定されることから、上下両バリ共に『サスケ5号』としたが、厳寒期の横利根川ではこれが標準サイズとなる。

■ウキ  
バラグルセットという底釣りにおける基本とも言える釣り方には、やはり底釣りに適した専用タイプのウキを使うのが戸張流。愛用するのは『忠相e`K-maxBTM(ケーマックスボトム)』。最近は少なくなったと言われる竹足仕様で、オモリの乗りも良くキレのあるアタリが出るのが特徴だ。かれ自信、特にこのアタリの出方が気に入っているようで、これ以外のウキでも釣れないことはないが、釣果もさることながら気分良く釣るにはこれが一番だという。またこのウキは細めで短いパイプトップ仕様であるため流れに対してシモリ難く、戸張のようにタナをズラし気味(平均5cm程度)にする釣りには効果的である。
 
 
 
 
ただでさえアタリが少なくなる厳寒期では、少しでも動きがあって食い気のある新べらをターゲットにすることが必要不可欠だと戸張は言う。自他共に認める野釣りの爆釣王である彼をして、エサを追わないへら鮒を相手にしていたのでは歯が立たないという訳だ。
「まずは今期放流された新べらの動きを読み、どこに居着いているのかを判断しなければ決して良い釣りはできない。また単に新べらが居るということだけではなく、どのようなサイズのへら鮒がどのくらいの量居着いていて、どのタナをどのように攻めれば効率良く釣れるのかを考えなければならない。なぜなら放流された新べらがすべて同じ様に釣れる訳ではなく、ウキが動きさえすれば釣れることもあれば、そばに居てもタナが違うだけで容易にエサに食いつかないことがあるからね。」
今回の取材においても自ら情報収集に奔走し、出船前にも慎重にポイントを選定していた戸張。近年における横利根川の傾向では、厳寒期であってもタナ2〜3本の宙釣りで大釣りが出ることが多いが、それは中小型の食い気旺盛なへら鮒が一度に大量放流された直後の話で、それ以外の状況においては手堅い底釣りで攻めるのがセオリーだという。事実、前日開催された大会での釣果も上位は底釣りが占め、しかも釣れたへら鮒は良型揃いだったという。
これらの情報を分析し、当日の入釣ポイントと釣り方を絞り込んだ訳だが、確かに戸張の読み通りへら鮒は居たものの、この日のへら鮒は底からやや離れたような状態で、単純にエサを底に着けただけでは食いついては来なかった。
結果的には戸張が選んだ西代交差点下のポイント(国道側の新護岸前)で釣れたへら鮒は、いずれも尺超級の良型ばかりで、かつての横利根川を知るアングラーにとっては予想外の展開となったが、それだけにスタート直後は簡単には釣ることができなかった。出船前、アタリだしは遅いとの情報を得ていたので焦りはみられなかったが、開始から2時間が経過した時点で芳しくなければ場所移動をすることをあらかじめ考えていた戸張。両バラケでエサ打ちを始めてから僅か15分後「何となく気配が…」とつぶやくと下バリをグルテンに替えるが、その後明確な反応はウキに表れなかった。
しかし、そばに居ることを確信していた戸張はそのままセットでじっくり丁寧なエサ打ちを繰り返すと、間もなく小さいながらも初アタリ。これに静かにアワせるがすぐに穂先が跳ね上がり、大きな鱗が宙を舞った。スレは禁物と言っていた戸張の表情が一瞬曇る。しかし幸いにもへら鮒はそばに居てくれて、数投後に出た1目盛りほど明確に入るアタリで3枚/2垉蕕領彪燭鬟劵奪箸気擦襪醗妥箸良従陲鯢發べた。そしてなおも続くサワリに集中力を高めると、僅か30分の間に4枚の良型を釣り込んだのだ。
「良いへら鮒だね。決して大釣りのペースではないけれど、この型であれば文句なし。むしろ良過ぎるくらいなので、イケイケで攻めるのは避けた方が無難のようだ。」
そうつぶやくと、それまでの早い打ち返しのテンポをやや遅らせ意図的にペースダウンを図る。そのうえでサワリが途切れたときには早めの打ち返しをしたり、明らかにへら鮒の気配が減ったときにはバラケに手水を加え、一旦軟らかく戻してから『バラケマッハ』をひとつかみ加えて開きを良くしたものを打ち込んでいく。
「バラグルセットの底釣りの選択は間違えていないし、流れの中でのやや待ち釣りのリズムも合っている感じだね。後はタナとアタリの取り方に注意して釣り込んでみよう。」
そう言うと、戸張は最も流れが強くなったところで、ウキのシモリ分を加算するためにタナ調整を行うと、それ以外は取り立てて変えるところもなく、サワリが見られたときに集中力を高め、時折ナジミ際にタッとアタることはあっても落ち着いてそれを見送り、確実にウキが戻してからのアタリだけに狙いを絞って良型のへら鮒をヒットさせていった。

話が前後してしまったが、この日の打ち始めのタナ設定は上バリトントンから5cmほどズラしてのスタートであった。このタナ設定が戸張の基準であり、よほどのことがない限りこのタナを変えることなく釣り込んでいく。
この状態でのウキのナジミ幅は約2目盛り。ただしこれは流れが静止していることが条件の理想的な状態でのナジミ幅であり、流れの強弱によってはナジミ幅が大きく変化する。この日は晴天微風の絶好の釣り日和にも関わらず朝から緩やかな流れが生じており、正確なタナ設定であっても流れによるシモリが加わり、打ち始めの時点では2目盛り多い4目盛りがナジんでいた。食いアタリは2〜3目盛りが戻すまで待ってからでることが多かったが、流れが強くなるとナジミきった状態で水面上に2目盛り出しになることもあり、その場合でもやはり2〜3目盛り戻してから明確なアタリが出ていた。
「横利根川に限らず野釣りでは流れはつきもので、底の状態も平坦なところはほとんどない。これに水位の変動が加わると、一体どこが正確なタナなのか分からなくなるし、そもそも1cm単位にこだわるようなシビアなタナ設定は野釣りでは意味をなさないと思っている。
多少そうした変動があってもエサが底から離れることなく安定した状態にするには、僕の場合は5cmズラシが経験上いちばん良いと感じている訳で、このタナ設定でエサを打ち込むと2目盛り程度ナジむことになる。つまりエサがナジミきって底に安定した状態では、トップが水面上に5〜6目盛り残しとなるはずだが、流れが強い場合はウキがシモる分を常に計算に加えておくことが肝心なんだ。」

アタリの様子は動画をご覧いただければ一目瞭然だが、戸張が言うように流れが強いときには彼が理想とするナジミ幅ではなく、トップが2〜3目盛りだけ水面上に残った状態からでも食いアタリがでることもあり、これをタナが深くなったことが原因の深ナジミと勘違いしないように注意しなければならないということである。
「ナジミ幅は流れの強弱によって変動するが、食いアタリを取るタイミングは変わらないことにも注意が必要だね。つまり初めに決めたエサ落ち目盛りも、理想とするナジミ幅も変わるが、底釣りでは自分が決めたタナ設定を信じたうえで、必ずナジんだウキが戻してからのアタリを取ることが肝心なんだ。」
 
 
近代へら鮒釣りでは速さが美徳化される傾向にあるが、厳寒期の野釣りにおいて速さは求められない。むしろ無理に速さを追求しようとしても、活性が落ちたへら鮒には通用しないことを戸張は知り尽くしている。当日は昼前に訪れた時合いの間に決めた3連チャンを含め、実釣約6時間で15枚前後の釣果を得たが、いずれも良型揃いだったので、間違いなく当日の竿頭となれる釣果となったであろう。つまり釣れるペースは平均すると時間当たり2〜3枚といったところで、戸張の凄さはイレパクを演じることよりも、むしろこうしたベストのペースを見切り、それに合わせて釣りを組み立てられるところにある。
「一時入れアタリになったとき、試しに早いアタリを狙ってみたけれど大半が空振りになってしまい、やがてアタリが出難くなったよね。今の時期は良型のワカサギが多いからアタリのすべてがへら鮒とは限らないが、攻め過ぎると明らかにウワズリの傾向が見られたことは明らかだ。もしこれが例会だとするとあの攻め方が命取りになる危険性があるので、ある程度その日の釣れるへら鮒のサイズやペースが分かって最終的な釣果予想がつけられれば、それを目標にして焦らないことが大切なんだ。 今日のベストの食いアタリのパターンは、流れが無いときは2目盛りナジんだウキが時間をかけてゆっくり1目盛り戻してから、ムズッと半目盛りくらい押さえ込むものと、流れがあるときはシモる分を含めて4〜5目盛りナジんだウキが2〜3目盛り返した時点で、カチッと1〜2目盛り力強く入るものが多かったね。アタリの強さや明確さは流れの強弱によるラインテンションによって変わることも理解しておかなければならないが、早いアタリよりも待ってからのアタリで釣れることが分かった時点で、そうしたアタリに狙いを絞り込むことが重要なんだ。それには待てるエサでなければならないのは言うまでもないが、その点においては『凄グル』を軸にしたくわせエサは膨らむタイミングも良いし、何より芯が崩れ難いので流れがあっても安心して待つことができる点も見逃せないね。
それから本当の食いアタリを識別しやすいウキを使うことも大切だよ。僕は底釣りでは竹足仕様の『忠相e`K-maxBTM(ケーマックスボトム)』を愛用しているが、カーボン足のウキが主流となった現在でも竹足のウキを使うのは、食いアタリがカチッと切れ良く表現されるからなんだ。それは感覚的な差といわれる程度の僅かな違いかもしれないが、僕にとっては極めて重要なことなんだ。当たり前のことだがサワリやアタリの出方はウキのスペックによって違いがあるので、実際に使い比べたうえでその差を実感できるウキに出会えれば、間違いなく自分の釣りの幅が広がるはずだよ。」

 
     
   
   
 
   
 
 
 
 
  利根川本流と霞ヶ浦をつなぐ運河である横利根川では、常時緩やかな流れが生じている。加えて風による流れが加わったり、本湖・本流につながる水門が開くとバランスの底釣りでは対応しきれない程の強い流れになることも珍しくない。さらに流れは水位の増減を発生させる。当日は流れが緩やかだったこともあり最大変動幅は3cm程度にとどまったが、ときには10cm近くも変わることがあるので、常に周囲にある杭や護岸の模様などを目印にして、水位の変動には充分な注意が必要である。
「流れを嫌っていては、野釣りはできないよ。でも安易にドボンの底釣りというのも味気ないし、たとえウキが流されたとしてもシモってトップが沈没しない限り、ある程度流しながら釣ることも可能なんだ。そのときは流す幅を概ね左右に30〜50cmずつと決めて、必要以上に流し過ぎないこと。今日も多少の流れがあり、半端ダナの底釣りのため穂先で流れを止めることはできなかったが、それでも流しきったところでアタることもあったし、左右に流れる方向が変わる瞬間や流れが止まった直後にアタリがでることが多かったよね。元来流れ川のへら鮒は止水域のそれよりも活性が高く、寄って来れば必ず食ってくるので、流れはむしろウェルカムと割り切り、へら鮒を信じてじっくりと厳寒期の野釣りを楽しみたいね。」
 
 
 
 
 
  野に放たれた食い気のある新べらを次から次へと釣り込む姿も、僅かなへら鮒の気配を察知してじっくりアタリを待つ姿もまた真の彼の姿であり、改めて激釣とはひと味もふた味も違う見応えのある“劇釣”を披露してくれた戸張。野釣りを知り尽くした男は、決して自らの釣りをひけらかすことはないが、その釣りは紛れもなくへら鮒釣りの基本に忠実であり、すべてのアングラーの手本となる釣技の積み重ねの上に成り立っている。いわば崩れようのない腰の座った盤石の釣り。そして最後に彼はこう締め括ってくれた。
「へら鮒の動きを読んでのポイントの選定に始まり、ボート漕ぎや舟付け、さらには流れや水位の変動に対する対処法など、野釣りでは管理釣り場にはない色々な要素が求められる。つまりそうしたところでの競技は、いわばへら鮒釣りにおける総合力が試される最高のステージなんだ。 僕自身がそうであったように、野釣りの基本に始まり様々な応用テクニックを身につけることは決してひとりの力ではできないことで、それは本人の努力以上に、親切な先輩や指導力のある会長が率いるクラブに身を置くことで達成されることだと思っている。今回お見せすることができた釣り方もそうした経験から生み出されたものであり、何より釣れるポイント選定といった情報は、そうした絆からもたらされることが多い。確かに管理釣り場は手軽で容易だが、ある程度基礎ができたら是非野に出てもらいたい。そこで見聞きしたことや経験したことは、必ずや皆さんの釣り人生に深みを持たせてくれるはずだから。」
 
   

「釣技最前線」その他の記事へ

このページのトップへ