へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第40回 『魚信』で導き、アタリを引き出すマジカル段底! 石川裕治のくわせ誘導型 段差の底釣り


へら鮒釣りには様々なアプローチがあるが、厳寒期における命綱とも言える段差の底釣り(※以下:段底)も例外ではない。カテゴリーとしては片ズラシの底釣りに分類される段底だが、極端に段差を広げたそのアプローチは底釣りというよりも、むしろバラケにウドンのチョーチンセット釣りのイメージに近い。従って釣りを組み立てるうえでの主役は当然ながらバラケとなる訳だが、ここにくわせエサを主役とし、くわせエサでへら鮒を誘導して食わせる段底を得意とする、マルキユーインストラクター陣のなかでも異質の理論を持つアングラーが居る。彼の名は石川裕治。名門浅草へら鮒会の昨年度チャンプでもある彼の両ダンゴのチョーチン釣りはあまりにも有名だが、実は厳寒期の段底のような繊細な釣りにも長けたマルチアングラーなのだ。今回は独自の理論に裏付けられたマジカルな段底をお届けする。  
   
清遊湖での取材当日朝、今回のテーマである段底にマッチした釣り座選びの段階から、いきなり彼の釣りのキモとする言葉が飛び出した。
「数日前に降った雨が良くなかったらしく、食いが落ちているみたいだね。いかに魚影が濃い管理釣り場であっても、こんな時だからこそ釣り座選びが大事になる。へら鮒の活性が低下する冬場は釣れなくて当たり前というのが僕の基本的な考え方であり、厳寒期に良い釣りをしたければ、新べらを含めた少しでも食い気のあるコンディションの良いへら鮒を狙う必要があるんだ。清遊湖の段底で実績があるのは風にも強い東桟橋のヤマ向きなんだが…。」
そう言う石川に、彼が推奨するポイントは正面からの撮影が困難であることを告げると、
「それじゃ仕方ないね。もうひとつ取っておきのポイントがあるからソコにしようか。でも流れが出やすいポイントだから風が出る前に決めたいネ(笑)。」
釣り座選びにも引き出しの豊富さを感じさせる石川。百戦錬磨のツワモノは夜来の雨が上がるのを待って、中央桟橋奥マスの南向きに釣り座を構えた。ここは正面のヤマから落ち込むカケアガリと、後方から続く緩やかな傾斜がぶつかるところであり、底の変化に富んでいるため居着きのへら鮒が多い。またV字の地形の最深部近くにあたるため、回遊する新べらの魚道にもなっているらしくポイントとしては申し分ない。ほかにも急なカケアガリの地形に大型の新べらが居着いているポイントが複数あることを示唆したが、撮影のしやすさを最優先させていただくことに了解を得て、同湖としては深場にあたるこのポイントで石川流の段底を早速披露してもらうこととした。


   
■サオ
まったく流れが無い状態であれば問題ないが、厳寒期になると北西の季節風による流れはあって当たり前と考え、水深に合わせて竿一杯で底が取れる長さのものを選択することを基本とする。これは正確な底立てやエサの打ち込み、更には段底の必須テクニックである縦サソイ(くわせエサの置き直し)をやりやすくすることが狙いである。
 
■ミチイト
流れを軽減し繊細なアタリを伝えやすくするために、可能な限り張りのある細めのラインを選択する。基準は0.6号。もちろん底釣りなのでタナボケは命取りなので伸縮の狂いの少ないものを選ぶことが大切だと石川は言う。
 
■ハリス
上ハリスは0.5号で使用範囲は10〜15cm。実釣のスタート時点では中間に位置する12cmにセット(※結果的にはこれで正解)した。下ハリスは当日のやや食いが悪いという情報を加味して60cmとしたが、稀な超食い渋り時には90cm程度までは伸ばすことも想定しているという。
 
■ハリ
上バリは開きの良い粒子で構成されたバラケをしっかりホールドする「極ヤラズ」の6号。タナまで持たせるにはエサ付けが大切だが、そこでタイミング良く抜くには寄ったへら鮒に触らせて抜けるエサ切れの良さも重要だという。下バリはエサ持ちの良さはもちろんだが、吸い込む力が低下しているへら鮒の口に確実にフッキングできる性能も必要不可欠。石川が愛用する「ストロングストレート」はこの狙いに適しており、サイズは3〜4号を基準としているが、取材時は寄ってきたへら鮒がややハシャギ気味であったことから、くわせエサを底に安定させてハリスを張る必要があると判断し5号とした場面も。結果としてはこれがピタリとはまり、3連チャンを含み時間10枚超の入れ食いを演じてみせた。

■ウキ  
基本はストロークが使えるムクトップ。ちなみにこの日、石川が使ったウキは水峯グラスムクトップの新作プロトタイプ。彼はムクトップを使う理由について、バラケをゆっくりタナに入れることとバラケの開く位置を下げることを狙いとしていると言う。つまりまったくナジませない場合にくらべて10cm深くナジませた場合とでは、ナジミきったときのバラケの位置(タナ)が異なり、後者の場合10cm深い位置でバラけることでウワズリかけたへら鮒を抑え、タナを安定させることができるという訳だ。 また実釣では流れに対して板オモリをカットしたり巻き込んだりしてオモリ負荷量を変えることで復元力を調節し、ラインを含めたハリスの張りを保つテクニックを織り交ぜていたが、これは同時にタナの調節をしたことにもなる。つまり、ウキの位置をまったく変えずにエサ落ち目盛りが変わることになるので、結果的に1目盛り沈めれば1目盛り分タナを深くしたことになり、反対に1目盛り浮かせれば1目盛り分タナを浅くしたことになる訳だが、こうしたマニアックな対応が石川の真骨頂なのである。
 
 
 
 
例会のほとんどを野釣り場で開催する浅草へら鮒会において、昨年を含め過去幾度となく年間優勝を飾っている石川が取材冒頭でつぶやいたひと言に、厳寒期の食い渋りを攻略するための重要なヒントがある。それは「へら鮒がエサを追わずアタリが少なくなる厳寒期では、少しでも動きがあってエサを食う新べらを相手にすることが得策である。」という言葉だ。奇しくもこれと同じことを、前回の釣技最前線に登場していただいた戸張 誠も口にしていた。戸張もまた野釣り場を主戦場とする関東へら鮒釣り研究会の王者なのだが、この二大釣り会の昨年度チャンピオンから同じ言葉が飛び出すということは、厳寒期の繊細かつシビアなテクニック以前に、ターゲットを正しく見極めることが大変重要であるということがうかがえる。
「まずは昨年秋から放流されている新べらの動きを読み、どこに居着いているのかを判断したうえでピンポイントに狙わなければ、決して満足な釣果は得られないよ。僕が主宰する釣りクラブ(※Mスリークラブ)では会員を先に入れてから入釣することが多いが、並んで釣っていても僕だけ極端に釣れないということもあるくらい、新べらは僅かにポイントがズレただけでも居着く量に差があるんだ。こうしたケースでは回遊を待っていてもあまり期待できない。だからこそ口を使うへら鮒が居るところをダイレクトに攻めることが大切なんだ。もちろん毎回そうした恵まれたポイントに入れるとは限らないので、例会などでは第二、第三の候補を探しておくことも大切なことだね。 口を使うへら鮒は素直にアタリを出すので、何より釣りが簡単になる。こうしたへら鮒をターゲットにする場合は、タックルもアプローチも繊細過ぎてはダメなんだ。ウドンのようなしっかりしたエサでハリスを張ると、厳寒期とは思えないようなアワせやすいハッキリしたアタリで釣れるようになる。しかも体力のある良型のへら鮒が揃うことで釣果も伸びるので、一石二鳥という訳だ。」
動画で実釣のウキの動きをご覧になっていただければ一目瞭然だが、時合いが安定すると明確なアタリで良型新べらが釣れ続くようになり、石川の言葉が真実であることが証明されている。

時として流行や主流といった流れに乗らない独特なエサ使いを見せることがある石川だが、今回のキモとなったのは、バラケでは最近のセット釣りのブレンドとしてはあまり見られなくなった『へらスイミー』の使い方。そしてくわせエサとして勝負エサとなっている『魚信』である。バラケを構成している各麩材の狙いと特徴、並びにエサ作りの手順とその調整方法については動画で彼自身詳しく紹介しているが、ブレンンド比率としては小さな『へらスイミー』が大きな役割を担っていることはその言葉からもハッキリと分かる。
「最近では多くのアングラーがエサ持ちを良くする目的で『とろスイミー』をブレンドに加えているが、僕の場合自分の手に合うというか、イメージ通りにバラケをコントロールできるのが『へらスイミー』なんだ。同じスイミー系の『とろスイミー』に比べるとエアーを含んだバラケに仕上がる一方で、強い圧を加えると簡単にまとまるようになるので、大きめのバラケを付けるのが苦手な人にはこちらの方がエサ付けしやすいかも知れないね。またこのエサは宙でも底でも、また両ダンゴでもセットのバラケでも使える万能タイプのエサなので、バッグに入れておけばオールシーズンどんな時でも役に立つし、そのポテンシャルはマルキユーへらエサのラインナップの中でもトップクラスに位置するので、使ってみるとその良さを実感できるんじゃないかな。 それからくわせエサの『魚信』なんだが、最近では軽く小さなくわせエサが大人気で、いささか影が薄れた感は否めないが、エサを動かす必要のない段底の場合、比重のある『魚信』の方が釣りやすいと感じている。その理由はハリスが張りやすいことでアタリがハッキリでるからに他ならない。確かに極度に食い渋ったときには軽く小さなくわせエサも有効であり、状況によっては僕も使うことがあるが、再三言っているように良いへら鮒が相手になるときは、返って軽さが仇になることもあることを理解しておかなければならないね。」
 
 
さて、くわせエサの軽さが仇になると言った石川だが、彼の段底理論からすれば、これこそが石川ワールドを象徴するテクニックということになろうか。
「段底でウキをナジませることは、すなわちバラケをタナまで持たせることを意味するが、これがしっかり果たされていないとへら鮒を狙ったポイントの底に寄せきることはできないし、安定して釣れ続かせることもできない。しかし段底で上手く釣れないアングラーの多くはこの基本的なところの理解が不十分なのか、ウワズらせてしまったり寄せ切れていない状況が目につくね。実はウキがナジまないのは寄ったへら鮒がバラケにアタックしているからではなく、クワセが煽られ過ぎてナジまなくなっていることが多いんだ。実際にエサを食うへら鮒は底から僅かに離れたものや、あらかじめ底に居着いているものであり、バラケにアタックするへら鮒とは別物と考えるべきだ。もちろん時間が経てば底まで下がることはあるかもしれないが、今サワって今アタリを出しているものとは異なることだけは確かだね。 つまりバラケの効果によって底近くに寄ってきたへら鮒の数が増えたり、その動きが激しくなってくると、軽いくわせエサでは煽られ過ぎて底に着き難くなってしまい、その結果バラケがタナに入らなくなってウキにナジミ幅が出なくなってしまうと考えられる。くわせエサの重さを変えて(※種類を変えて)打ち比べると分かるが、くわせエサが合っていると煽りが抑えられてバラケがタナに入りやすくなり、その結果くわせエサに興味を抱いたへら鮒が底まで惹きつけられることになる。すると自然に、次から次へとアタリを出して釣れるようになるんだ。」
実釣では『魚信』で釣り始めた石川。開始からおよそ20分でファーストヒットを決めて以降、ウキの動きから判断するとくわせエサに間違いはないと思うと言っていたが、ある程度コンスタントに釣れ始まった時点で『力玉大粒(さなぎ粉漬け)』に変更してもらいその違いを検証した。すると明らかにウキがナジミ始めるまでの時間が遅くなり、それまで3〜4目盛りのナジミ幅が見られたものが、ほとんどナジミ幅を示さなくなってしまい、アタリも明確なものからムズッモヤッといったキレのないものに変わり、スレや空振りが目立つようになってしまったのである。
「まさにこのウキの動きがくわせエサが合っていない証拠だね。それまでとバラケのタッチもエサ付けも変えていないのにナジミ幅が出なくなっているだろう。これこそがくわせエサが煽られている証拠なんだ。本来ならばムクトップウキを使っているのだからエサはナジみやすいはずだが、くわせエサが軽過ぎて着底し難くなるとこうした現象が起こる。ウキがナジまなくなると、多くのアングラーはバラケが開き過ぎていると判断してバラケを持たせようとするだろう。でも無理に開きを抑えるとへら鮒の寄りがキープできなくなる恐れがあり、一時的に釣れるようになってもその後続かなくなることが明白だね。こんなときこそくわせエサのマッチングを図るべきなんだ。今は3号のハリと『魚信』という組み合わせで釣れているが、さらにへら鮒がタナに寄ってきたらハリをサイズアップさせて、ハリスを張らないとダメかもしれないね。」
この言葉通り、実釣開始から2時間が経過する頃になるとなお一層ウキがよく動くようになり、予想通りにハリを4号にサイズアップ。そしてこれは想定外の嬉しい誤算であったが、さらに寄りが増してウキのナジミが悪くなったところで滅多に無いという5号に変更すると、釣れて来るへら鮒のサイズが明らかに大きくなり、しかもそれが3枚4枚と続くようになったのだ。まさに石川マジック。とても厳寒期とは思えない展開にあっけにとられるスタッフに、至極当然といった表情を向ける石川であった。
 
   
段底ではバラケが抜けてからのアタリを狙うのがセオリーと言われているが、完全に時合いをつかんだ際に石川がアワせるアタリを見ていると、必ずしもエサ落ち目盛りが出てからのものではないことが分かる。そこで改めてアタリの取り方と、段底では多くのアングラーが疑問としている打ち返しのタイミング(見切り)について訊いてみた。
「まずアタリの取り方だが、バラケが抜けてナジんでいたトップが戻し、エサ落ち目盛りが出てからのアタリを狙うことが基本だよ。しかしこれはへら鮒の寄りがそれほど多くないときでも釣れるオーソドックスな攻め方であり、大崩れし難い反面、絶対に勝てる釣り方ではないことは明白だね。そこでコンスタントにウキが動き始めたら、他人より多く釣るために積極的に早いタイミングでも釣れるヒット率の高いアタリにアワせるように心掛けている。 僕が狙っているのは概ねふたつのパターンで、ナジんだウキの戻しが遅いときはエサ落ち目盛りが出るのを待って、戻しが早いときはエサ落ち目盛りが出るのを待たずに良いアタリが出ればアワせている。打ち返しのタイミングについては、サワリが無いときにはほとんど待つことなく打ち返し、多少待ってもサワリが続いているときは1目盛りくらいトップが沈むサソイでテンションを加えたり、流れでウキの位置がズレてしまったらくわせエサの置き直しを加えたりしながら、できるだけ早く食いアタリが出るようにしているんだ。」
コンスタントに釣れ続いているときのアタリは後者のパターンが多く、4〜5目盛り程度ナジんだトップがすぐに戻し、まだエサ落ち目盛りまで1〜2目盛り残した時点でカチッと音が聞こえそうなほどキレのある鋭いアタリでヒットさせていた。
 
 
 
 
 
 
  この日、石川の釣りを見ていて気がついたことがある。最後に行った下バリ5号へのサイズアップにしても、状況判断してからの対処が非常に早いのである。もちろん途中でウキの動きが悪くなりそうな場面での対処も早く、そして見事なまでに的確なのである。
「僕が早い訳ではなく、皆が遅いんじゃない?(笑)へら鮒釣りではウキの動きが唯一の手掛かりであって、今へら鮒が何を求めているのか、何をしてやればエサに食いついて釣れるのかを、ウキの動きを見て考えるゲームだよね。それならばウキが動いているうちに対応してやらなければ、それが正解なのかどうかも分からなくなってしまうよね。反応がハッキリしているうちに結果を見れば、それが正しいか正しくないかがひと目で分かる。それをやらずに後でああすれば良かった、こうすれば良かったと言っても意味がない。特に厳寒期はウキを動かし続けること自体難しいのだから、とにかくウキが動いているうちに自分も動く(対応する)ことを勧めるね。」
これはまさに落とし穴で、変えようか変えまいかと悩んでいるうちにウキが動かなくなってしまい、結局のところそのまま続けて釣れなくなってしまうというケースが多いに違いない。しかし、それではその後の向かうべき方向を見失うばかりで、正解に辿り着ける可能性は低いと言わざるを得ない。思い立ったら即実行。これを実践するだけでも渋い中で1〜2枚の上乗せが可能だという。
 
 
 
 
 
  厳寒期においては無理なことはせず、ハッキリしたアタリを出せるコンディションの良いへら鮒を相手にし、より簡単な釣り方で臨むことが肝心だと言う石川。そのために必要なこと、意識しなければならないことはズバリ“ハリスを張る”ことだと断言する。
「段底ではウキにナジミ幅を出すことが大切であることは既に述べたが、そのためには無理してバラケに手を加えるよりも、くわせエサを使い分ける方がより簡単だと思っている。その際、意識すべきはくわせエサの煽りと下ハリスの張り具合。もし煽られながらでも明確なアタリで食うときは軽いくわせエサでも良いが、煽られるとウキがナジまなかったりアタリが出難くなるときはハリスが張りやすいウドンの方が良い。 セット釣りというとバラケに注目が集まりやすく、タッチやエサ付け、持たせ加減や抜くタイミング等の高度なテクニックが要求されがちだが、僕が実践している段底でのバラケはそれほど難しい扱いは必要ない。むしろできるだけ調整を加えなくてもへら鮒をタナに集めて食わせるには、くわせエサにその役割を担ってもらった方が良いと考えている。つまりくわせエサが主役となる段底だね。重ねて言うが、ポイントは下バリ(くわせエサ)にサワらせてバラケを抜くこと。決してバラケのタッチや縦サソイ等のロッドワークでやるもんじゃない。これができれば確実にハリスが張って良いアタリが出るので、厳寒期の釣りも決して恐れることはないと思うよ。」
 
   

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