へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第44回 勝負を決める!「粘麩」で決める!石井忠相の伝家の宝刀 タナで釣り込むチョーチン両ダンゴ釣り


両ダンゴ釣りの王道といえば、深宙ダナを狙うチョーチン釣り。今年も王道の釣りを極めんとしのぎを削るビッグトーナメントが目前に迫った。第15回「マルキユーチョーチン王座決定戦」である。今年からレギュレーションの一部が変更となり、一日で勝負を決するワンデートーナメントから、事前に開催される二会場での予選を突破しなければ決勝戦に進めない厳しい大会となったが、初の平日開催となった椎の木湖会場での予選では、上位の争いは70kgを超える打撃戦となり、盛期のチョーチン両ダンゴ釣りの爆発力をまざまざと見せつけられた感がある。今回登場頂くのは、その予選を総合二位で見事通 過したこの釣りを最も得意とする男で、同大会の第11回大会の覇者、石井忠相である。本来マルチアングラーである彼のチョーチン両ダンゴ釣りは極めてオーソドックスであり、初中級者はもちろんのこと、ベテランアングラーであっても手本とすべき点を数多く持ち合わせている稀有な存在である。今回の釣技最前線では同大会決勝のステージである筑波湖で彼の伝家の宝刀ともいうべきチョーチン両ダンゴ釣りを紐解き、この釣りの魅力を知って頂くと共に、勝負のできる釣りとしても再認識して頂こう。  
   
5月下旬に発売されたばかりの新エサ「粘麩」。当コーナーでも石井旭舟チーフインストラクターにそのポテンシャルと使い方を紹介して頂いたが、実は石井忠相、発売間もない新エサを短期間のうちに使いこなし、ビッグトーナメントの大事な予選の場で使っていたのである。
「ひとことで言って『粘麩』は非常に個性の強いエサです。事実、発売直後から大きな反響があり、正直使用感については賛否両論でしたが、僕自身はこのネバリ(まとまり感)と重さ(自在に重さを変えられるところ)は使いこなせば大きな武器になるぞ!という直感がありました。そこで大会に臨むまでに色々と試してみて、今回紹介するブレンドに辿り着いたという訳ですが、もちろん研究の途中ですのでまだまだ改善の余地はあると思いますが、現時点では間違いなくベストのブレンドであり、勝負のできるエサだと確信しています。」
自信に満ち溢れた表情でこう言い放った忠相。実は今回紹介する勝てるブレンドパターンは、タネを明かせばチョーチン両ダンゴ釣りのエサが上手くできないアングラー向けに、マルキユーインストラクターとして彼がブラッシュアップした特別仕様。しかも今回は新エサ「粘麩」をキーポイントに据えたすこぶる実戦向きのブレンドで、若干のブレンドの違いはあるもののチョーチン王座決定戦でもそのポテンシャルは実証済みである。
「実は『凄麩』を手にして以来、これをベースにしたエサで好感触を得ていますので、私自身今でも『凄麩』主体のエサ使いで十分勝負はできるのですが、今回『粘麩』が発売されたのを機に、ひとりでも多くのアングラーに簡単に釣れるチョーチン用のエサをと考え、今回紹介させていただきました。ブレンドに使用するエサは5種類と多いのですが、作り方はいたって簡単ですし、何よりボソタッチのエサに求められる自在性(※主にエサの開きの強弱)に優れているので、TPOに関わりなく自信を持ってお勧めできます。」
現代チョーチン両ダンゴ釣りの難しいところは、へら鮒の寄りが増すに従い食い頃のエサがタナに入らなくなるところにある。特にボソ感の強いエサは水面直下で止められやすく、また上手く使いこなせな いとウワズリを助長するばかりで一向に食わせることができない。一方ヤワネバ系のエサはナジませやすく食わせやすいが、反面寄りを保てなかったりすることもあり、近年では徐々にボソ気味のエサに優位性が移行しつつある。つまり理想的なチョーチン用ダンゴエサとは寄りをキープできる集魚性に優れたボソエサで、しかもタナまで持つものということになり、今回忠相が使用したスペシャルブレンドが正にそれという訳だ。


   
■サオ
チョーチン両ダンゴ釣りにおいて大切なポイントを挙げてくれと訊ねたところ、真っ先に口にしたのはタナの重要性である。つまりはサオ一杯のところにウキをセットするチョーチン釣りでは、タナを決定するサオの長さの選択が最も重要だということになる。まずは直近の釣果情報に基づいて選択するが、これに固執することなく釣況によって途中で何度もサオ(タナ)を変えてベストのタナを探るのが忠相流のアジャスティングだ。
 
■ミチイト
盛期におけるチョーチン両ダンゴ釣りは、ミチイトへの負荷が最もかかる釣り方である。このため強度を最優先に考えなければならないが、忠相が目指すところでもある「サワリの出やすいウキで、へら鮒の動きを読んで釣りを組み立てる」ためには、単に強さを太さに求める訳にはいかない。そこでこの時期の基準となる1.0号で十分な強度を確保しつつ、ウキにサワリが伝わりやすいしなやかで張りのあるラインを選択。完全不透明な白色のラインは視認性抜群で、ウキが立つ前でも水中のラインの動きからへら鮒の状態が判別できるほど良く見える。
 
■ハリス
ミチイトとの強度バランス、および深宙ダナ特有の良型の引きに対応するため0.5号を基準とする。スタート時のセッティングは竿の長短に関係なく、上55cm/下70cmが基本であるが、忠相はこの長さにこだわることなく、状況に合わせて長短こまめに調整しながらベストの長さを追い求める。その手順は長めから始まり短く詰める方向で調整は進められ、この日も最終的には上25cm/下35cmでウキの動きが安定し、彼が理想とする深くナジんだところでズバッと消し込むアタリで黄色味がかった良型を連発していた。ちなみに最長では90cm以上、最短では15cmまでは想定範囲であり、稀にそうした極端な長ハリス・短バリスで決まることもあるという。
 
■ハリ
両ダンゴの釣りではタナまでしっかりエサを持たせることが大切だが、単に持てば良いというものではない。いわゆる食い頃のエサを持たせることが肝心な訳だが、比較的まとまり感のある素材を主体に構成されている忠相のダンゴブレンドでも、エサにエアーを含んだボソタッチで打ち抜くためには、ハリのホールド性能は極めて重要な意味を持つ。基準は「バラサ」の7号だが、今回は空振りが目立つようになったところで8号にサイズアップ。これによりエサのタッチ調整を最小限に抑えることができ、結果的にボソエサを打ち切ることが可能になる。ただしあくまでハリ調整に着手するのはハリスワークやエサのタッチの微調整を行ったうえでの最終手段と位置付けている。

■ウキ  
ウキに関しては作者でもある本人のコメントを動画でご覧になって頂くのが良いだろう。要約するとサワリ重視のパイプトップウキ(ツアースペックF)とアタリ重視のグラスムクトップウキ(ネクストスプラッシュ)を状況によって使い分けることが忠相流のチョーチン両ダンゴ釣りのキモであり、この選択を的確に行うことでタナに寄せて食わせるという鉄壁の時合いの構築が可能になるのである。参考までにそれぞれのタイプの特性を以下に示しておこう。
●パイプトップウキ(ツアースペックF)
「中空構造のパイプトップ+軽量&高浮力の一本取り羽根ボディ+浮く素材の竹足」という組み合わせは自ずと上に上がろうとする力が働くので、サワリ(水中でのへら鮒の動き・エサへの反応)が表れやすく状況が読みやすい。またエサをしっかりナジませることで分厚いタナが構築でき、強い食いアタリが連続する安定した釣りが可能になる。
●グラスムクトップウキ(ネクストスプラッシュ)
「高比重のグラスムクトップ+重め&高浮力の二枚合わせ羽根ボディ+沈む素材のカーボン足」という組み合わせは下へ下へと入ろうとする力が働くので、上層での止めやサワリが激しいときでもエサをナジませやすく、複雑になりがちなウキの動きを整然とさせられるので、食いアタリを的確に選別することが容易になる。
 
 
 
 
取材冒頭、単刀直入にチョーチン両ダンゴ釣りで最も大切なことはナニ?との問い掛けに、即座に「タナ(竿の長さ)ですね」と答えた忠相。
「チョーチン両ダンゴ釣りでは、たとえどんなにエサやタックルを調整しても、タナが決まらなければ釣りは決まりません。逆に言えばタナが決まれば釣りも決まるので、精度の高いタナ合わせ(適切な竿の長さの選択)は極めて重要なことなのです。それには事前のリサーチ。すなわち情報収集が大切で、自らプラクティスを重ねて釣況を確かめることも重要ですが、釣り場における数年来の釣況の推移はもちろんのこと、今年の傾向や直近の釣況などから総合的に判断して、スタート時のタナが大きくかけ離れないようにすることです。そのうえで実際にウキの動きをみて、変更が必要であると判断すれば躊躇なく竿の長さを変えますし、場合によっては何度も交換したり、巡り巡って元の長さに戻すことも少なくありません。」
ちなみに6月上旬に行われた第15回「マルキユーチョーチン王座決定戦」椎の木湖予選時は朝の入りが11尺で、これがほぼ決まったことによりいきなり釣り込むことができたという。しかし午後は一転してこれが仇となり、イケイケで攻め過ぎたことで時合いを壊してしまい、後半は竿を3度も替えて凌いだというから、彼ほどの腕をもってしてもメンタルの僅かな隙によって歯車に狂いが生じ、ピンチを招くこともあるということだ。
「トーナメントの場ではウキの動きが意にそぐわないとマメに竿の長さを替える人が多いのですが、もし最初に継いだ竿の長さが合わなかったときに修正する際、次の一手が的確に決まるようにするためには勘に頼ったアジャスティングではなく、日頃からウキの動きを読むことを意識し、常に最適なタナを攻めるトレーニングを積み重ねることが大切です。極論すればタナが合わせられなければスタートラインにさえ立てないのです。」

取材時、まず取り出した10尺という竿の長さ(タナ)に対して上55cm/下70cmというハリスの長さがやけに長く思えたが、この点について訊ねると
「今日は平日でもあるので確かに長いかもしれません。しかし、もし食いが悪ければこの長さで決まる可能性もあり、あくまでスタート時の長さは単なる基準であって、タナが深くても浅くても(竿が長くても短くても)この基準は変わりません。それに仮にこの長さで決まるにしても、途中で釣況は変化するでしょうから、おそらく何度も変更すると思いますよ。」
取材時は開始直後から強い流れがあり、その影響なのか長めのハリスでも徐々にウキの動きが良くなる感じがしたが、一旦へら鮒が寄ってくると食い気のないモノや体力のないへら鮒が上層に集まってしまい、開始30分が経過した頃、釣れ始まるとほぼ同時に早くもエサがタナに入らなくなってしまった。すかさずハリスを短く詰める忠相。ここでは一気に20cm詰めて上35cm/下50cmとした。この調整、果たして極端過ぎないのか?
「いきなり湧いてきましたからね。水面直下に群れる食い気のないへら鮒の動きやウキの立ち上がり方、さらにはナジミ際のエサが入るスピードから判断して、このくらい短くしても問題ないでしょう。ここまで極端でなければ10cm単位で徐々に詰めるのが一般的ですが、無用と判断すれば無駄なことは省いた方が得策でしょう。また詰めるばかりではなく伸ばすこともありますが、それは詰めるべきと判断するときと逆のウキの動きになるときです。つまりウキの立ち上がり直後のウケが無くなったり、またナジミ際のスピードが速過ぎたりサワリが極端に少なくなったりしたときがそのときです。」
確かに彼の言う通りだが、そうした判断力は数多くの修羅場を潜ってきたからこそ養われた能力であることは想像に難くない。よって彼の釣りをリスペクトしようとするのであれば、ワンテンポ遅れてでも、10cm単位で一歩一歩正解に近づくようにすれば良い訳だ。 ハリスを詰めて以降、明らかにウキの動きは変わった。ウキの立ち上がりが早くなり突き上げも収まった。そして何より深ナジミしたところでズバッと決まるアタリで安定して釣れるようになったのである。その後は再びガサベラの寄りが増したところでさらに10cm詰めて上25cm/下35cmに。するとここで最初の時合いが到来。ナジミ際の早いアタリを見送ると、トップ先端1目盛り残しまで深ナジミしたウキがフワッと返す間もなくドスンと水中に消え去り、重厚感あふれるアタリで黄色味がかった大型が揃い始めた。
「ボソタッチのエサを根気よく深ナジミさせて打ち込み続けると、次第に食い気のあるへら鮒がエサを追ってタナに入ってくるようになります。イメージではオモリよりも下に厚く寄る感じで、こうなればアタリが明確に出るようになり釣りが簡単になりますね。これが“タナができる”という意味で、それまではナジミ際の早いアタリにも食ったと思えばアワせていましたが、こうなれば意識的にアタリを送り気味にし、寄っているタナの一番深いところで出るアタリに狙いを絞ることで、さらに型も良くなり安定して釣れ続くようになるのです。」



 
 
 
忠相のエサ使いには、自身が語るようにある特徴が見られる。それがボソタッチを基本としていること。ただし、一般的に言われるようなボソではなく、まとまる(ネバる)特性を持つエサ同士を組み合わせた、非常にエサ付けがしやすく、しかも極めてエサ持ちが良いボソタッチエサであることが分かる。実際に手に取ると「これがボソタッチか?」と感じるアングラーもいるかも知れないが、見た目や感触だけでボソタッチか否かは判断できない。なぜなら水分が少なくパサパサしていても、反対に水分が多くシットリしていても練り込みを一切加えていないエサはボソ。つまりボソタッチとはその程度こそ違えども、麩が生きた(※麩が立ったとも言う)状態のエサがボソタッチのエサと解釈されたい。 実際に動画で彼のエサ作りを見てもらえれば一目瞭然なのだが、基エサ作りの時点では一切練りを加えておらず、タッチの微調整の際に行う手水&撹拌の際にも決して練り込むことはない。
「僕がボソエサにこだわる理由は、その自在性にあります。ボソエサは麩が立った状態でエアーを十分に含んでいますので、エサ付けの際の圧加減に強弱を加えることで容易に開きをコントロールすることができます。またボソエサは練ったエサよりも開きが良いためタナへの集魚力に優れ、大会等の混雑時でも寄せ負けすることはありません。しかもボソタッチのエサを好む大型べらにも強力にアピールすることができるので、数でも型でも断然優位に立てるのです。」
しかしボソエサはエサ付けが難しく、これが上手くできないとタナに集魚できすに単にウワズラせるだけで終わってしまう恐れもある。そこで忠相が考えたのが今回紹介したスペシャルブレンドの登場ということになる訳だが、このエサにはよりボソタッチに仕上げるポイントがある。
それが『粘麩』の後注しだ。
発売間もない新エサなのでまだ試行錯誤の方も多いと思うが、基本的な作り方は「粘麩」を先に水で溶いておき、それに好みの麩材を加えるというもの。これはエサ持ちを最優先したレシピであるが、忠相が目指すボソタッチに仕上げるにはやや難があったようで、そこで一旦主たる麩材に吸水させた後に「粘麩」を加えたところ、意外にもエサ持ち性能を損なうことなくボソタッチに仕上げることが判明したのである。
「触った感じではややネバ系のタッチに感じるかも知れませんが、一切練りは加えていないので紛れもないボソエサです。これだけで十分にタナまで持つエサに仕上がりますので、後は丁寧なエサ付けを心掛ければ、誰でも勝てるチョーチン両ダンゴ釣りのスタートラインに立つことができるでしょう。」
そうは言っても、どうしてもエサが持たないくらいへら鮒が寄ることもあるだろう。そんなときには彼も実践している以下の方法を試してみて欲しい。それは増粘剤「粘力」を用いる方法で、一般的にはヤワネバ系のエサで練らずに持たせたいときに使うことが多いが、ボソエサを軸とする忠相のブレンドではここぞというときに途中で加えることがポイントになる。その際「粘力」を基エサにダイレクトに加えるとネバリにムラが生じる恐れがあるため、彼はここでひと工夫加え「凄麩」50ccを100ccカップに取り、それに「粘力」スプーン1杯を加えて予めよく混ぜておき、それを基エサに適宜加えて満遍なくかき混ぜるという手法をとる。これによりボソ感を失うことなく、むしろボソ感が増してもエサ持ちが強化され、深いタナに潜む良型へのアピール度が増すという仕組みである。
 
   
 
   
 
 
  今回紹介した石井忠相の釣りは彼自身最も得意とする釣りだけに、多彩なテクニックに彩られた繊細な釣り?それとも超ロングハリスを駆使したり、常識外れの巨大なエサ玉を打ち切る豪快な釣り?などと誤解されている方も巷では少なくないようだが、その釣りを目の当たりにすると意外にも正攻法、かつ普通の釣りであることがうかがえる。
「よく言われるんですよ。意外にエサが小さいんですネって(笑)。確かにそうした釣り方でたくさん釣る方もいますが、僕のスタイルは動画でご覧になって頂ければ分かる通り、ごく普通の基本通りの釣り方だと思います。でもこの普通であったり、また基本をブレずにやり通すことは意外に難しいんですよ。僕自身今でも熱くなると一瞬我を忘れてしまうこともあるくらいですから(苦笑)。でも手の内を明かしたのですから、本番は優勝目指して本気モードで行きますよ!」
真夏のへら鮒釣りの祭典ともいえるチョーチン王座決定戦決勝(筑波湖会場)を目前に控え、いよいよ活況を呈してきたチョーチン両ダンゴ釣り。この釣りで勝つためには、小手先のテクニックに頼っていたのでは勝負にならない。ここは一番、王道といわれる釣り。すなわちウキをしっかりナジませ、タナを作り上げて釣り込む強い釣りでなければ勝機は見出せないだろう。そしてそれを可能にしてくれるのが新エサ「粘麩」。そのポテンシャルを解き放つのは今しかない!
 
     

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