へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第45回 ブレンド&タッチは∞!加治屋 浩の縦に強くアタらせるカッツケ両ダンゴ釣り


発売直後から大きな反響を呼んでいる「粘麩」。盛期に入ったフィールドではその性能がいかんなく発揮され、多くのアングラーから絶大な支持を得ている。既に多様な使い方がされており、タナ規定1mの両ダンゴの浅宙釣りや、まだ実績は少ないが両ダンゴの底釣りでも釣れることが証明されているが、やはり両ダンゴのチョーチン釣りでの使用が圧倒的に多い。そこで今回は、さらなる可能性を引き出すべくカッツケ釣りに照準を合わせ、ある男に白羽の矢を立てた。その男の名は加治屋 浩。言わずと知れた関西を代表するトップアングラーである。オファーの際にはまだ「粘麩」をそれほど使い込んではいないという返事が返ってきたが、それだけに取材という限られた時間内にどれだけ「粘麩」のポテンシャルを引き出すことができるか、大いに興味を惹かれるところである。果たしてその結果やいかに!  
   
「いい感じに湧いてきましたよ。これならいけそうですね。」
エサの着水と同時に群がる大量のへら鮒。ナジんでは切る高速回転の打ち込みを続けること、およそ20分。ようやくポイントには黒々としたへら玉ができあがり、立ち上がったウキの動きにも活気が出てきた。普段であればものの数投でエサ打ちポイントはへら鮒で埋め尽くされ、並みのアングラーであれば制御不能に陥ってしまうほどの魚影を誇る甲南へらの池だが、さすがに台風の接近による気圧の急降下に加え、雨を伴う湿った南寄りの風が活性を奪い去ってしまったものかと不安視されたが、どうやらその心配はなさそうだ。しかし・・・
「でも、少しへら鮒がボ〜としている感じですね。上のやつがエサを追って行きません。」
ウキは動き始めたものの、本来の強いアタリが連続しない状況を冷静に分析する加治屋。確かにアタリは出るもののウキの動きは複雑で、ナジんだりナジまなかったりと、傍目にも不安定であることがよく分かる。実はこのとき使っていたエサは、彼がいつも使い慣れている勝負エサではなく、開始当初からいきなり「粘麩」ブレンドの不慣れなエサであった。なぜなら今回のテーマは彼の普段の釣りをトレースするだけではなく、新エサ「粘麩」がブレンドされたダンゴエサを彼が得意とするカッツケ両ダンゴ釣りで使用してもらい、その性能を確認すると同時にポテンシャルを引き出してもらい、あわよくば使い方のコツまで示してもらおうというものだからだ。 知っての通り、カッツケ釣りは水面直下の極めて狭いレンジに群がるへら鮒を、超高速回転の切り返しで攻め抜く釣り方だ。しかし、だからといって闇雲にエサを打ち込めば良いというものではない。それどころかエサ・タックル・リズム等々すべての要素が噛み合わないと、ウキは動けどまったく釣れなくなってしまう極めてリスクの高い釣り方でもあるのだ。
「自分が心掛けているのは、たとえ水面下数10cmという狭いレンジであってもエサをナジませ、タナを作って縦に強くアタらせることです。そのためにはエサはもちろんのこと、タックルセッティングを含めたトータルバランスが重要です。正解は日々状況によって異なりますので、上手く合わせられないときは釣れている人に訊くこともあります。それが一番早いですからね(笑)。 エサに関しては持たせ加減がポイントになります。単にタナまで持てば良いという感じでネバらせたり、重さで持たせようとして比重の大きなエサを多めにブレンドしても、一時は釣れても時合いが変化するとすぐに釣れなくなってしまいます。ご存知のとおり、カッツケ釣りでは非常に繊細なエサ合わせが求められます。調整幅というか自在性に欠けるエサでは目まぐるしく変化する状況に対応できません。そういう意味では「粘麩」はネバリも重さも指先ひとつ(※エサ付けという意味)で自在に変えられるので、カッツケ釣りでもかなり使えそうですよ。」
現代チョーチン両ダンゴ釣りの難しいところは、へら鮒の寄りが増すに従い食い頃のエサがタナに入らなくなるところにある。特にボソ感の強いエサは水面直下で止められやすく、また上手く使いこなせな いとウワズリを助長するばかりで一向に食わせることができない。一方ヤワネバ系のエサはナジませやすく食わせやすいが、反面寄りを保てなかったりすることもあり、近年では徐々にボソ気味のエサに優位性が移行しつつある。つまり理想的なチョーチン用ダンゴエサとは寄りをキープできる集魚性に優れたボソエサで、しかもタナまで持つものということになり、今回忠相が使用したスペシャルブレンドが正にそれという訳だ。


   
■サオ
今回選択した7尺という長さは回転の速いカッツケ釣りでの取り回しの良さと効率を考えてのことだが、状況によっては特に規定最短尺にこだわることはない。たとえば大会等のハイプレッシャー下の釣りにおいては、隣とのサオの長さの駆け引きもあり、仮に隣がウドンセット釣りで自分が両ダンゴという選択をした場合、1〜2尺長くして自分のポイントのへら鮒の量をキープする必要があるという。
 
■ミチイト
極めて勝負が早い両ダンゴのカッツケ釣り。打ち込んでからアタるまで数秒ということはざらにあるので、当然ながら沈みの早いミチイトが必要不可欠。また勝負の場面では多少無理にでも引き寄せることもあり、伸縮性のある方がブレイクの不安はないという。今回使用した「ザイト」ファイアオレンジは視認性も良く、0.8号という太さはこの時期の標準サイズだ。
 
■ハリス
0.5号という選択はミチイトとのバランスを考慮してのこと。上8cm/下12cmという長さは甲南へらの池での両ダンゴのカッツケ釣りのスタート時の基準となる。実釣ではエサが激しく揉まれるようになり、カラツンやスレが目立つようになってから上下共に2cmほど詰めたときもあったが、エサが決まりアタリが安定し始めてからは元の長さに戻して釣り込んで行った。ちなみに両ダンゴのカッツケ釣りでの調整範囲は最短が上6cm/下10cm、最長は上15cm/下20cm。
 
■ハリ
着水と同時にエサが激しく揉まれ、大きく弾かれる盛期のカッツケ釣りでは、ハリのホールド性能抜きには語れない。最も重要なのはサイズと軸の太さ。基準としているのは「バラサ」の5号で、エサ持ちを強化したり早くナジませたいときには軸太タイプの「セッサ」5号とする。

■ウキ  
縦に強くアタらせるために必要不可欠なのが、浅い(狭い)レンジであってもしっかりとタナにエサを入れること。それは決してエサをぶら下げてアタリを待つということではないが、エサが揉まれてもトップが確実に水面上に残り、エサがタナに入ったところで縦にズバッと消し込まなければならない。そのためにはボディのオモリ負荷量が小さくても、トップに浮力があるパイプトップが適している。実釣ではエサが入りやすかった時点では一番小さなものを、そしてエサが入り難くなった時点でワンサイズアップした。しかしエサの方向性(ブレンド)が分かったところで元に戻し、さらにエサ落ち目盛りを半目盛りほど深くしてエサをナジませやすく調整し直したところで釣りは完全に決まった。
 
 
 
 
 
カッツケ両ダンゴ釣りは、決まると決まらないとでは雲泥の差が生じてしまう。仮に最初のタックル・エサが合っていて、いきなりロケットスタートを決められてしまうと、あっという間にフラシ1つ分以上の差をつけられてしまうことも珍しくない。よってスタート時のセッティングは極めて重要であり、可能な限り当日の時合いにマッチした精度の高いセッティングで始める必要があり、そのためには事前の情報収集は欠かせないと言う。幸い現在は直近の釣果情報を入手することはそれほど難しいことではないが、大切なことはそれを鵜呑みにするのではなく、ややライトなセッティングから入るのが加治屋流のアプローチだ。
「たとえ釣れるという情報を得ていたとしても、初めからイケイケモードの強い攻め方はしません。釣れるなら釣れるなりに、釣れないなら釣れないなりの釣況を読んだうえで、予想されるセッティングよりもやや弱め(ライト)なところから入り、イケると分かった時点で強め(ヘビー)なものに切り替えます。なぜなら、こうした方が迷うことなく短時間で釣れるセッティングに辿り着くことができるので、余程自信がない限り強めの決め打ちはしません。」
この日の釣りを振り返ってみると、最終的に決まりの出たセッティング(※前述の取材時使用タックル参照)とそれほど変わらないセッティングでスタートした加治屋。このことは釣り場の状態を読みきっていた証しであり、変更箇所としてはハリスの長さ(※へら鮒が表層に湧くたびに上8cm→6cm/下12cm→10cmを何度となく試したが、最終的には元に戻した)を数回変えた以外にはハリの交換(※「バラサ」5号→「セッサ」5号)、ウキ交換(※一番から二番にして変化を確認したうえで元に戻した)くらいのもので、目立って大きく変更したものはなかった。そのうえでエサのブレンド、ならびにセッティングがほぼ決まった時点で最終的な微調整ということでエサ落ちを半目盛り深く沈めたところ、ナジミ幅が不安定だったウキが安定してナジむようになり、加治屋が理想とする「深ナジミしての縦に強く入る“一アタリ”(※最初のアタリ)」でコンスタントに釣り込んだ。
 


今回の取材の主役は「粘麩」だが、果たしてこの新エサがカッツケ釣りで通用するのか。それも加治屋が基本とするアプローチ、すなわち「エサをタナに入れて縦に強くアタらせる」ことができるかどうかに注目が集まった訳だが、開始から2時間が経過した時点で既に3パターンのブレンドを試し終えた加治屋は、
「ブレンドによってはエサが上層でつかまりピンポン状態になってナジまなかったり、反対にウケが少なくすんなり入り過ぎたりと思ったよりも差がありますね。でも心配はいりませんよ。次のパターンで釣れるようになりますから!」
と、ネガティブな感想を口にしつつも、その一方で何らかの糸口をつかんだ様子もうかがえた。確かに取材時のへら鮒の湧き方はいつもとは違っていた。悪天候による食いの悪さは否めないのだが、突然激しく湧いたかと思えば急にシ〜ンとなったりと、まさにつかみどころのない時合いが続くなか、何度目かに作り替えたブレンドになったところで、明らかにウキの動きが変わってきた。それまでメリハリなく不安定だった動きにリズムが生まれ、激しく揉まれながらも沈没ギリギリまでトップがナジむと、間髪おかずにスパッ、ダッ、ズバッと、勢いよく消し込むアタリが連続し始めたのである。
「実は最初に作ったブレンドパターンに戻したんです。始めにあまり釣れなかったのは、朝一のへら鮒の活性が悪かったことと、エサの扱い方が今ひとつ分からなかったことが要因ですが、今は「バラケマッハ」のボソ感を殺さないようにチョットだけ軟らかめにタッチを調整したことに加え、エサをやや大きめのややラフ付けとすることで、表面を開かせながらタナに入るようになっているので、良い感じでアタってきています。」
参考までに、ここまで試したブレンドと結果は以下の通り。


1.「粘麩」100cc+水100cc(吸水後)+「凄麩」200cc(一旦混ぜた後)+「バラケマッハ」100cc

序盤であったためか硬めのままでは反応が悪く、徐々に手水で軟らかく調整してやや好転

2.「粘麩」100cc+水100cc(吸水後)+「凄麩」200cc

軟らかめに好反応を示したので、初めから麩材を減らして一発合わせを試みるがアタリが減少

3.「粘麩」100cc+水100cc(吸水後)+「凄麩」200cc(一旦混ぜた後)+「浅ダナ一本」100cc

エアーが噛み難くなったのか、ウキが沈没することが多くなりカラツンが増加

以上の結果を踏まえ、最も感じの良かった,離屮譽鵐匹北瓩掘▲織奪舛鯑陲蕕く調整する際に「バラケマッハ」のボソ感を残すように留意し、エサ付けもひとまわり大きくすると共に表面を滑らかにしない“ややラフ”くらいにすることで、ナジミ際の上下動は激しくなるが確実にトップは深くナジむようになり、深ナジミ直後の強く消し込むアタリで連続してヒット。ブレンドを煮詰め、最後はエサ付けで仕上げにかかる理詰めのアプローチである。
 
 
カッツケ釣りではエサ・セッティングが煮詰まり釣りが決まり始めると、アタリがパターン化されヒットペースが格段にアップする。しかし、これだけでは一時的には釣れるようになっても、長時間釣れ続かせることは不可能だ。そこで必要になるのは何なのか?という記者の問いに・・・。
「テンポの良さです。つまり良いリズムをキープすることですね。」
と、断言する加治屋。良いリズムとは早い回転のエサ打ちを意味するのだろうか?
「確かにそれもありますが、一番良くないのは待ったり待たなかったり、自分自身でリズムを崩してしまうことです。へら鮒の食いが良いときはアタリ自体も早く出るので、回転を早めることで必然的に釣果は伸びますが、食いが悪いときは大抵アタリが遅くなります。大切なことはへら鮒の食い気に見合ったタイミング。つまりアタリが出るのが早いのか遅いのかを見極め、無理せずそれに合わせることが肝心で、これこそがへら鮒に合わせた良いリズムなのです。そうしているうちに運良く食い気が高まると、そのまま爆釣モードへ突入することも出来ますしね。」
さらに、良いリズムを崩さないためには精度の高いエサ打ちコントロールが必要不可欠だとも言う。どういうことかといえば、食えるエサを確実にタナに送り込むためには、必要以上に上層で揉まれたり弾かれたりしてはいけない。そのためには群れのど真ん中にエサを打ち込むのではなく、適度な寄りを見せているところに正確に落とし込むことが絶対条件なのだ。ちなみに寄りがやや薄いところであっても、落とし込みではなく軽く振り切っただけでまったくナジミ幅を示さず、ウキが立たないことすらあったことからも容易に理解できる。
「エサ打ちの精度は9尺より8尺、8尺よりも7尺の方が格段に正確に落とし込めます。ましてや今日のように風雨が強いときにはなおさらで、隣りと魚の取り合いにならない範囲内で、できるだけ短いサオで勝負すべきです!」
見た目の派手さだけではなく、目に見えないところで繊細な駆け引きが繰り返されるカッツケ両ダンゴ釣り。改めてへら鮒釣りの奥深さを思い知らされる加治屋の釣りであった。
 
     
 
   
 
 
  今回は台風が接近中という不安定な時合いのなか、しかも使い慣れたエサを封印しての「粘麩」活用術を披露してくれた加治屋。ネバる・重いというキーワードから深ダナ向きと思われがちであった「粘麩」のポテンシャルを見事引き出し、カッツケ釣りでの扱い方のコツに加えて、こうした超浅ダナの釣りでも十分活用できる術があることを証明してくれた。
「カッツケ釣りにはウキがナジんでいるように見える、いわゆる“偽ナジミ(嘘ナジミ)”がよくあります。トップの目盛りだけを見ていると2〜3目盛りナジんでいても、そのときには既にハリからエサは叩き落されていて、ズバッと消し込んでもヒットしないときは、エサが持っていないことによるカラツンですね。このような状況に見舞われるとどうしても練り込み過ぎたり、比重の大きな素材を多くして、かえってウキの動きを悪くしてしまうことがありますが、強いネバリと重さを持つ「粘麩」をブレンドに加えることで、一番の不安材料である“エサが持っていない”という疑念は払拭されますので、後はエサ付けに注意するだけでアタリに集中することができるでしょう。それに「粘麩」のネバリや重さは決してマイナスになるようなものではありません。特に重さに関しては素材そのものの重さ(※パッケージに入った状態で持つと感じる明らかな重さ)がまるで嘘のように、エアーを噛ませた状態で目詰まりさせずに使えば、従来のブレンドエサよりも軽く使えます。たまたま今回は裏書通りのブレンドパターンで良く釣れましたが、状況によっては他のブレンドの方が決まりそうな感触もありましたので、是非皆さんも「粘麩」を使ったオリジナルブレンドパタ―ンで楽しんでみてください。」
 
     

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