へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第49回 今こそやりたい基本の底釣り 野釣りチャンプが管理で躍動! 西田一知のダンゴ&グルテンセットの底釣り


底釣りはへら鮒釣りの基本ともいわれ、かつては入門時に必ずマスターすべき釣り方であった。ところが、魚影密度が濃くなるにつれてビギナーでも浅ダナ等の宙釣りで簡単に釣れるようになり、近年クローズアップされることの少ない地味なイメージが定着してしまった感がある。ウェブサイト「へら鮒天国」のへら鮒スタッフによる釣果報告でも、管理釣り場の底釣り情報は減少傾向にあり、厳寒期における段差の底釣り以外目立った情報が提供できていないという、憂うべき状況が続いている。しかし底釣り(※いわゆる一般的なバランスの底釣り)は今でもへら鮒釣りの基本とすべき釣り方であり、関東近県の釣り場が過剰な魚影密度になっているだけであって、全国的に見れば最もスタンダードな釣り方であることには変わりはない。そこで今回は季節柄旬ともいえる底釣りに焦点を当て、この釣りの名手とうたわれるマルキユーインストラクター西田一知に、現代流の基本的なバラグルセットの底釣りを披露してもらう。釣り場は埼玉県羽生市に在るつり処椎の木湖。既に大型新べらも放流されている同湖で、西田の技が輝きを放つ!  
   
昨年西田には、新べら200枚の大爆釣も可能な「寄せて食わせるバラグルセットのハイブリッド釣法」を披露してもらったが、今回は底釣りという違いはあるが、やはりバラケとグルテンを使った西田流の釣り方を紹介してもらう。一般的には「バラグルセットの底釣り」と呼ばれる共ズラシのバランスの底釣りだが、本人は自分の釣り方は「ダンゴ&グルテンのセット釣り」だと言って譲らない。
「一般的にバラグルと言うと、ボソッ気の強いバラケで寄せてグルテンを食わせるという感じを持たれているアングラーが多いようですが、私の場合、上バリに付けるのは両ダンゴで使えるような感じのエサであり、寄せ効果はもちろんですが、活性のあるへら鮒が寄ったときには上バリを積極的に食わせることもできるので、『バラグル』ではなくあえてダンゴ&グルテンと言わせてもらっています。実際早いアタリが出るときは上バリのダンゴを食うことが多く、セットで入っても途中で両ダンゴに切り替えることもあれば、中小型の新べらが大量に寄っているときには両グルテンにすることもあります。その際、切り替えのタイミングのロスが無いのもダンゴ&グルテンの底釣りのメリットと考えています。」
前回紹介してくれたバラグルセットのチョーチン釣りが、両ダンゴの集魚力の強さと両グルテンのヒット率の高さを兼ね備えたハイブリッド釣法だと命名させてもらったが、今回の底釣りでのアプローチの解説を聞き、それが腑に落ちる頃には、この釣りが宙釣りでのハイブリッドな釣り方とはひと味違った、いわばこの時期ならではの底釣りの超ハイブリッド釣法であることが理解できた。キモはズバリ「ダンゴ(バラケ)の誘導力」。ボソッ気の強いバラケらしい感じのエサではウワズリを招く恐れがあり、たとえ集魚性の面では勝っていても、底まで追わせてダンゴもしくはグルテンを食わせることが難しくなる。そこで計算し尽くされたダンゴで適度な寄りをキープしつつ、上から追ったものはダンゴを食わせ、底に着いてからは確実にグルテンを食わせることができるという二段構えの備えを持つ、いわばダンゴを食い損なっても只では済まさない二枚腰のアプローチといえよう。
「この釣りが有効なのは、何も今だけに限った話ではありません。早ければ秋の新べら放流直後から翌春の乗っ込み期まで、およそ一年の半分は有効期間となります。特に底付近に居る旧べらの動きが落ち着く頃になると無駄なウキの動きも減りとても釣りやすくなるので、この釣りを楽しむには打ってつけの時期といえますね。」





 

   
■サオ
底釣りにおける最も大切な要素といわれるタナを正確に合わせ、なおかつ安定的にアタリを出し続けるためには、ポイントの水深に合わせてほぼ一杯の長さの竿を選ぶことが肝心だという。以前彼の底釣りの取材をした際に、ボート釣りの場合は釣り座が前後左右に動いてしまうため、ウキの動きを干渉しないように穂先からウキ1本分の長さ+10cm程度開けと言っていたが、管理釣り場の場合はそれほど余裕を持たせないことが多いとのこと。ただし、今回の取材後半でも見られたように、強風による強い流れが生じた際は、同等程度の余裕を持たせた方がロッドワークにも余裕が生まれるという。
 
■ミチイト
1枚1垉蕕レギュラーサイズの椎の木湖にあって、今回はさらに大型で引きの強い新べら混じりの釣りが想定されることから、この時期の管理釣り場の標準としている0.8号よりも太い1.0号を選択。加えて底釣りでは絶対にあってはならないタナボケを起こさないためにも、クッション性には長けていても伸縮の少ないものを選ぶことが肝心だ。
 
■ハリス
底釣りでは通年0.4号を基準とし、平坦な地底のポイントでは上40cm/下48cmを標準的な長さとしている西田。今回は特別大型のへら鮒が相手ということで、よりエサへのアピール度を増すためにやや長めのセッティングとした。ちなみに上ハリスの適応範囲は40cm〜50cmで、上ハリスの長さを基準として平坦なポイントでは7cmの段差とし、緩やかなカケアガリや凹凸のあるポイントでは8cm段差、急なカケアガリのポイントではその傾斜に合わせて10cm〜12cmの範囲で調整を加える。
 
■ハリ
ハリは使用するエサの大きさで丁度隠れるくらいが良いと言い、今回は上下とも「サスケ」6号をチョイスした。これが一般的なサイズのへら鮒がターゲットの場合は、下バリのみ5号とし、グルテンのエサ付けの大きさもワンサイズダウンする。常に早いアタリを出し続けるためには、エサが底に着いたときに食い頃の硬さ・サイズになっていなければならないというのが西田の考えで、その狙いを確実なものにするためにはこのサイズが適正であるという。

■ウキ  
底釣り専用ウキとして全幅の信頼を寄せる「忠相ツアースペックAD」は、底釣りに必要なすべての性能をハイレベルに発揮する。野釣りの場合、食い頃のエサを底まで送り込む際、オモリの沈下速度が速過ぎることによりエサがハリから抜けてしまうことを回避するために、通常他のアングラーから比べるとオモリ負荷量の小さめのウキを使う西田だが、今回は管理釣り場ということもあり、まだ上層のへら鮒の活性が高いことやターゲットが特別ビッグサイズのへら鮒であることから、一般的なアングラーが基準とするオモリ負荷量のものを選択している。
 
 
 
 
両グルテンを含めてグルテンをクワセにした底釣りでは、新べらを視野に入れることは必須である。新べらは食いが素直で釣りやすいことはもちろんのこと、痩せていないので自ずと重量を稼ぐことができるが、最近の傾向としては一部の野釣り場を除いて新べらばかり釣ることは困難だ。特に管理釣り場ではどんなに放流量が多くても既存の旧べらの数も相当多いため、時間の経過と共に新旧のへら鮒が混じり合ってしまうのだ。それでも比較的新べらが混じるポイントがあって、それがカケアガリなどの底に変化のあるところ。今回もそうした狙いがあってここ(※5号桟橋/555番座席)に釣り座を決めた訳だが、ここの地底は左が浅く右に行くに従い深くなり、さらに手前が浅く沖に行くに従って深くなっており、こうした地形のところは新べらの居着きに加えて回遊してくる別の群れも期待できるので、今回のテーマには打ってつけのポイントだといえよう。
「こうしたカケアガリではアタリを多く出すための、エサの着底のさせ方にもコツがあります。それは必ずカケアガリの深い方からエサがナジむように打ち込むこと。こうすることで傾斜面にエサが自然にぶつかる感じになるので明確なアタリが出やすくなるのですが、具体的にこの場所を例にとると、前と右が深いので右前方にエサを落とし込めば良いので、私のような右利きのアングラーには有利なポイントといえるでしょう。さらにエサの着底ポイントを一定に保つようにするために、エサの着水直後からウキがナジみきるまでの時間を一定にする必要があります。そのためには立ち上がる前の水面に浮いたウキの足の方向が、常にエサの着水した地点に向いている必要があります。これが逆方向を向いていると立ち上がる前に必ず水面で回転するので、その分ナジむ時間のタイムラグが生じ、結果としてエサの着底地点がバラバラになってしまうのです。」
見方によっては何もそこまでと思われるかも知れないが、こうした細かなことに気を配りつつも、攻めるところは大胆に攻めるのが西田流であり、数々の輝かしい実績がその有効性を如実に物語っているので、大いに参考にしたい一面だ。

この釣りで最も重要なことは何かと尋ねると、それはナジミ幅を一定に保つことと躊躇なく答えた西田。ここでいうナジミ幅とは標準的なエサ付けサイズ(※上バリのダンゴは直径10mm程度、下バリのグルテンは直径8mm程度)をして打ち込んだ際のナジミ幅で、まだへら鮒が寄らない時点で確認しておくことが大切だと付け加えた。
「スタート時のタナ設定は、上バリトントンから2cmズラしたタナで始めるのが私の基本です。ほぼ平坦な地底の場合、このタナ設定であればダンゴ&グルテンで3目盛りのナジミ幅が出るのが理想 であり、これが確認できればエサ持ちも十分だしタナ設定も間違っていないことが証明できます。もしこれよりもナジミ幅が多ければタナが合っていない可能性があり、少ない場合はタナのズレ過ぎかエサが十分持っていないことが疑われますので、これらの不安材料はへら鮒が寄る前に確認し解決しておく必要があります。ちなみに両ダンゴであれば4目盛り、両グルテンであれば2目盛りのナジミ幅となるはずですが、このナジミ幅はエサ打ちの際の振り込み方によっても異なりますし、もちろん使用するウキやエサの種類、ハリのサイズやハリスの長さといった違いによっても違いが出ますので、各自であらかじめ確認しておかなければなりません。」
ここで改めて確認しておこう。西田のエサ落ち目盛りは前述の通り8目盛り出しだが、これは両バリ共にエサを付けずに底から離れた状態で決めたもので、上バリトントンから2cmズラシのタナ設定にすると両バリの重さがトップに掛からなくなり9目盛りが水面上に出る。よってこれよりもトップが多く出れば食い上げアタリということになる。
「完璧にタナが合って、しかも寄っているへら鮒の数が多く食い気も旺盛であれば、食いアタリの2〜3割は食い上げとなりますので、こうしたこともタナの正否の判断材料となります。しかし、やはり打ち込んだ直後のナジミ幅を注視し、理想とするナジミ幅を示さない場合はタナの変化とエサ持ちを確認し、常に一定に保つよう修正することが肝心なのです。」
実際へら鮒の寄りが増してきたときにはナジミ幅が少なくなり、一時的にアタリが間延びする場面も見られたが、その都度西田はエサ付けを丁寧にしたり、調整したエサがあまくなったと判断したときは基エサを加えてエサを硬くしたりしてアタリを蘇らせていた。 また、風による流れが強まった際、理想のナジミ幅が出ているにも関わらずアタリが途切れた場面に遭遇したが、その際西田はこのナジミ幅が流れによるミチイトのたわみではないかと疑い、さらにタナを2cmほどズラしたところ見事にアタリが復活したケースがあった。この場合ナジミ幅が偽ナジミであることを見抜き、エサの着底状態が上バリトントンに近い状態になっていることでアタリが出なくなったものと判断し、ウキ下を深くすることでエサの着底状態を安定させた訳だが、たかが2cmされど2cm!底釣りはたったこれだけのことで釣れたり釣れなかったりするので、いかに基本が大切であるかがお分かりいただけるであろう。
 
 
底釣りはエサが底に安定する分、カラツンが少ない釣り方だといわれるが、実際には管理釣り場といえども底にはへら鮒以外の魚種も多く潜んでおり、へら鮒の寄りが薄くなると悪戯をするケースが多々見受けられる。今回の取材でも釣り場で生まれ育ったと思われる7寸くらいの小ベラやクチボソ等のジャミ類も釣れていたので、アタリのすべてがへら鮒のものとは限らないことは明らかだ。
「へら鮒がガッチリ寄りきれば外道やジャミ類は気になりませんが、そうでなくてもカラツンは避けられません。むしろカラツンは釣れる前触れと前向きに捉え、カラツンの原因を食い頃のエサになっていないものと判断します。そして若干エサを小さめにするくらいの対策に止め、早いアタリが乗らないのであればそれを見送り、2回目3回目に出る強いアタリに狙いを変えてみます。また多少のウワズリによるカラツンの場合は釣ることで解消できることが多いので、ナジミ際にサワリが出なくなるほどウワズラせない限り、釣れるアタリを見極めることを優先し、エサのタッチやタナを変えることは余程のことがない限り行いません。」
また西田はこうも言っていた。それは宙釣りのようにカラツンには軟らかいエサが有効と安易に考えてしまうと、タナが深い底釣りでは返って事態を悪化させかねないという。特に活性が低下するこれからの時期はウキの動きが少なくなり、しかもウワズリとへら鮒の寄り不足の見分けがつき難くなるため、アタリが出ないとついエサを甘くしがちになるので注意が必要とのこと。
「アタリが出なくなったら、まずはエサを締める方向から試した方が良いと思います。これはいきなりエサをあまくしてしまうとバラケた粒子だけを吸いあおり、肝心のエサの芯に近づかなくなってしまうからです。一旦締めたエサを打ち込んで、状況の変化を確認してからでも遅くはないのですから。」
 
 
  西田自身他のアングラーよりもグルテンをいじるといわれるそうだが、そういった面においては「凄グル」ブレンドのエサはまさに好都合だ。それはどんなに押し練りを加えてもサラッとした手触り感が失せることなく、しかも水中での膨らみも衰えることがないので、アタリの持続性に関しては他のグルテンの追従を許さない。そういう意味では、宙でも底でも愛用している「凄グル」は無くてはならない西田の右腕。まさに懐刀といえそうだ!
「こうしたウキの動きが出せるのも、エサが持っているという絶対的安心感があってこそ。バラケは勿論のこと、くわせエサとして使用しているグルテンの核となる『凄グル』はエサ持ちが良く、しかもタナで開くことで新べらの食い気を刺激するので、カラツンが少なく大変釣りやすいのが特徴です。またグルテンはあまりいじらない方が良いという迷信めいたセオリーがありますが、少なくとも現在あるグルテンのほとんどは手を加えても何ら問題はなく、『凄グル』に至っては、ブレンド性はもとより、エサをいじれる自在性にも優れているので、今後も大いに力になってくれるものと信じています。」
 
 
 
 
 
 
  前半は新べらの好食いで始まり、後半は北西の強い季節風に見舞われた取材であったが、連続して釣り込むことが難しいといわれる椎の木湖のランカーベラをときに強気に、また時合いが落ちたときには辛抱強く粘釣した西田のダンゴ&グルテンセットの底釣りは、へら鮒釣りの基本を思い出させるには十分な内容が詰まったものとなった。そして西田はこう言って締め括ってくれた。
「一般的にバラグルセットといわれる釣りをダンゴ&グルテンセットというのは、あえてその役割を明確に分けずに、ダンゴ(バラケ)でもグルテンでも釣りながら寄せ、寄せながら釣るといった意識が私自身強いからだと思います。実際問題共エサでもセットでも釣れれば良い訳で、セットであればバラケ を食おうがグルテンを食おうが釣果に変わりはありません。へら鮒釣りに無理は禁物で、バラケで寄せてグルテンを食わせるといったシステムの型にはめるのではなく、できる限りへら鮒の自然な状態に合ったアプローチで臨むことが大切だと思います。この釣りは特に新べらが多く放流されている釣り場では有効ですので、今シーズンは段底ばかりに囚われずに『凄グル』を携え、是非ダンゴ&グルテンセットの底釣りにもチャレンジしてみてください。」
 
     

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