へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第55回 エアーが決め手の石井忠相のチョーチン両ダンゴ釣り〜野釣り編〜


かつてへら鮒釣りの主戦場はまぎれもなく野釣り場であった。冬から春は平場の河川や湖沼、夏から秋はダム湖や山上湖で、体中で季節を感じる釣りがそこかしこで繰り広げられていたが、近年はもっぱら魚影密度の濃い管理釣り場がメインステージとなってしまった。しかし、それでも野釣りを愛するアングラーは、本格的なシーズンが近づくとダイナミックな釣趣を求めて山へと繰り出す。昨年に続き登場頂くマルキユーインストラクター石井忠相もそんなアングラーのひとり。今回は自他共に認めるチョーチン釣りのオーソリティーに、いよいよ本格的に釣れ始まった山上湖のチョーチン両ダンゴ釣りのキモと楽しさを、余すことなく伝えてもらおうという趣向だ。訪れたフィールドは山の雄と称される、富士五湖のひとつ西湖。地ベラ化した良型が長竿を大きく絞り込むたびに「腕がイタイ〜」「気持ちイイ〜」と連呼する石井忠相。見るものを虜にする彼のダイナミックかつ、計算されつくした繊細な妙技を見逃すな!  
   
昨年同時期にも取り上げた石井忠相のチョーチン両ダンゴ釣り。ご記憶の方も多いだろうが、そのときは発売間もない「粘麩」を効果的に使ったボソタッチのダンゴエサで釣り込む、管理釣り場仕様のエサ使いを披露してくれた。そこで今回は趣向を変え、今なお彼が主戦場とする野釣り場での効果的なチョーチン両ダンゴ釣りを紹介してもらおうとオファーをした訳だが、折しも取材直前に行われた西湖での例会(※入釣ポイントは前浜中ロープ中央付近)において、もちろん伝家の宝刀であるチョーチン両ダンゴ釣りで65kg超(110枚)という大釣果で優勝を果たした忠相。しかも同所で彼に次いで釣った会員に倍近い大差をつけてのブッチギリの釣果は、間違いなく特筆に値するだろう。
「ポイント選定から釣り方まで上手く決まりましたね(笑)。例会は精進湖との合同開催で、直前に様々なネットワークを使って主要なポイントの釣況をリサーチしたうえで、いくつかの候補に絞り込んで試釣をしたところ、前日の夕方近くになって例会組が上がってから竿を出した前浜中ロープでこれ以上ないというほどの好感触を得たので、ここを本命ポイントと睨んで入りました。当日は読み通り開始早々から順調に釣れ始まり、途中でさらなるペースアップを狙って竿の長さを変更したり、釣り込むためにエサのタッチの方向転換を図ったりしたところ、期待通りの良い釣果に恵まれました。今回はそのときの再現ができれば良いですね。」
野釣りでは何よりポイント選定が重要だと言われるが、そうはいっても管理釣り場ほど魚影が濃くないというマイナス要素をものともせず、100枚オーバーの釣果を叩き出すのには、それ相応のテクニックというか、釣り方のコツがあるに違いない。そうした点について彼は、
「どんなにへら鮒が居るポイントでも、野釣りでは一定量の寄りをキープしながら釣り込まなければ、やがてアタリを失ってしまいます。つまりへら鮒釣りの基本である、寄せながら釣るということを確実に行わなければ、決して終日釣れ続かせることはできないのです。それには的確なタナ選定(※竿の長さの選択)とアジャスティングはもちろんですが、集魚性に優れたボソタッチのダンゴエサを効果的に使いこなす必要があります。特に今シーズンの西湖は小ぶりのヒメマスが大量に寄ってしまうためエサ使いが難しく、無理に持たせようとして硬くしたりネバリを強めると必要以上にカラツンが多くなりますし、何よりへら鮒の集魚力が低下してしまうためコンスタントに釣れなくなってしまいます。このため適度に開きながらもヒメマスの層を突破し、へら鮒の居るタナに届く直前から芯が膨らみ始め、ナジミきったところで食い頃のエサになるようなエサを作らなければなりません。しかし、残念ながらこうしたエサが上手くできない人の多くは安易にセット釣りに変えてしまい、定番のグルテンなどはヒメマスの餌食になりやすいため、かえって釣りを難しくしてしまう恐れがあるのも事実です。そこで今回は、例会でも実践した野釣りならではのツボを押さえた釣り方を紹介したいと思います。」
力強くこう宣言してくれた忠相であったが、取材当日、現在ベストコンディションに近いと思われた前浜はあいにくの西風のため早朝から白波立ち、彼自身釣りはできても取材クルーの撮影は不可能と判断。そこで風裏になる根場地区に移動してみると、前浜の高波が嘘のような凪状態。こちらのポイントにも精通する忠相の勧めで、ユース下ロープの2番ブイ(※レストハウス船着場から数えて2番目の浮きブイで、後方からの振れ止めロープあり)にボートを固定し、予定通りのチョーチン両ダンゴ釣りを始めてもらうことにした。



 

   
■サオ
管理釣り場同様、タナ(※竿の長さ)はチョーチン両ダンゴ釣りにおいて極めて重要なポイントになる。野釣りでは確実に状況が分かっている場合を除き、大抵は18尺を基準とするというが、これでエサを打ち始め、状況に応じて長さを変更するのが忠相流だ。当日は18尺のまま釣りきれる状況が続いたが、例会時は18尺でスタートし、大量にへら鮒が寄った際に16尺で一気に釣り込み、ややアタリが減少してからは19尺〜20尺で様子を見ながら、アタリを途切れさせずにコンスタントに釣り込んだという。こうしたタナの変更は野釣りでは必須戦略であり、エサのタッチやハリスワークといった調整よりも効果が大きいという。もちろん交換はスピーディーに行うことが鉄則。モタモタしていると状況が激変してしまうので、あらかじめ竿の長さによって使用するウキを決め、オモリ調整を済ませておくのは至極当然のことである。
 
■ミチイト
チョーチン両ダンゴ釣りは言うに及ばず、すべての釣り方において忠相が全幅の信頼を寄せているのがオーナーザイト「へら専用白の道糸」。ただでさえ大きなストレスが掛かるチョーチン釣りに加え、野釣りでは大型の外道のハリ掛かりも想定しておかなければならない。そうしたときにも十分な強度をもって対応するには最低でも1.0号は必要だと言い、加えて自身が理想とするウキの変化(サワリ)からへら鮒の動きを読んでアプローチするために必要な張りとしなやかさを兼ね備えているラインである。
 
■ハリス
ミチイト1.0号とのバランスを考慮すると、ハリスの太さは0.5号がベストだという。スタート時の上55cm/下70cmはあくまで基準となる長さであるが、特にこの長さに固執することなく、状況に合わせて柔軟に変えていくのが忠相流のハリスワークだ。結果的には基準の長さがこの日の最長であり、最も活発にウキが動いた時点の長さは上35cm/下50cmであった。ただし管理釣り場と決定的に異なるのは、へら鮒以外のジャミ等によるエサ持ちの変化で、エサのタッチ調整だけではまかないきれない部分をハリスワークで補い、常に最適のエサをタナに送り込むことを心掛けることが肝心である。
 
■ハリ
ハリのサイズはエサ持ちの良し悪しに直結するので、その選択は疎かにはできない。特にエアーを含んだボソタッチのエサを深いタナに送り込むには、サイズ以外にフォルムも重要になる。忠相が愛用するのはオーナー「バラサ」。今回は最初に選択した8号がベストマッチングとなったが、エサ持ちが悪くなった際にはサイズアップも視野に入れるという。ただし「サイズアップ=エサの落下速度アップ」となるため、ウキの動きを見ながらナジミ際のトメ・サワリに加え、スピードはもちろんのこと、ナジミ際のタメ(※一瞬の間とも言えようか)が無くならないよう、繊細な対応が必要不可欠である。

■ウキ  
今回は野釣りということもあり、サワリ重視のパイプトップウキである忠相ツアースペックFを迷うことなく選択。18尺一杯という深さを考慮してNo.13を選択。このウキの特徴だが、パイプトップと軽量かつ高浮力の一本取り羽根ボディ、さらには浮力の大きな竹足という組み合わせによりサワリ、すなわち水中におけるへら鮒の動きやタナの変化、エサへの反応等が表れやすく状況が読みやすいという点が優れている。加えてエサをしっかりナジマせたところでアタリを出せるので、ピンポイントレンジのタナができ、崩れ難い安定した強い釣りが可能になる。
 
 
 
 
忠相流のエサ使いのキモはズバリ“ボソ”である。ひとことにボソといってもそのエサ幅は広いが、共通する特徴は大なり小なりエアーを含んでいる点だ。表現を変えて言えば“麩の粒子ひとつひとつが立った状態で、その間にエアーが入り込める空間があるエサ”とでも言えようか。今回もまた丁寧で分かりやすいエサ作りを紹介してくれているが、相変わらず基エサ作りの時点ではまったく練りを加えておらず、タッチの調整の際にも決して練り込むことはない。
「野釣りでは終始一貫ボソタッチのエサを打ち切ります。なぜなら管理釣り場に比べて魚影密度で劣るうえに、様々な要因でポイントからへら鮒が離れてしまう可能性があり、たとえコンスタントに釣れていたとしても、開きの乏しいエサで釣り込んでしまっては、やがて寄りが乏しくなり釣れなくなる恐れがあるからです。もちろん微調整の際に不可欠な自在性も持ち合わせていますので、エサ合わせも比較的容易にできるのです。」
昨年の管理釣り場での取材では、へら鮒の過剰な寄りによってエサが持たなくなり、アタリが出なくなってしまう場面も見られたが、今回はへら鮒の代わりに小型のヒメマス(※今シーズンは放流モノに加えて自然繁殖したもの多い)が上層に群がると一時的にウキがナジまなくなってしまったが、その際の対応として「粘力」を加えたエサ使いで見事状況を好転させてみせた。
「へら鮒であってもジャミ類であっても、狙っているタナの上層に過剰に寄せてしまうとエサ持ちが悪くなってしまいます。その際エサ持ちを強化しようとしてエサを練ってしまうと、かえって上層でつかまってしまうことも多く、たとえタナに届いたとしても肝心のへら鮒にカラツンを喰らってしまいます。そこで必要なのがネバリと相反するエサの開きです。ただし単に開くのではなく、タナで的確に開かなければなりません。この働きを担っているのが『凄麩』であり、これに『粘力』を後注しすることで、その働きを阻害することなくエアーを噛ませたままエサ持ちだけを強化することが可能になるのです。ただし一緒練りは厳禁で、後注しでなければ決してこのタッチは得られないのです。しかも今回紹介したエサは多少のラフ付けも可能なので、ハリスに絡ませる感じでしっかりハリのチモトを押さえておけば、エサの下部をやや開いた状態の極めて強力な誘導力を持つエサ付けができるのもメリットです。」
この「粘力」の後注しというテクニックは前回も紹介したが、野釣りでは管理釣り場以上に効果が大きく、過日例会時にはこの調整によりホールド力をアップさせたエサで約2時間一気に釣り込み、今シーズン最高の爆釣へとつながったと主要因として振り返っている。

「前回管理釣り場のチョーチン両ダンゴ釣りの際にも言いましたが、タナ(※竿の長さ)の重要性は野釣りの方が大きいといえるでしょう。実際どんなにエサやタックルを調整しても釣況が良くならないとき、サオを変えて攻めるタナを変えただけで、それまでの苦労が嘘のように簡単に釣れ始まることがありますし、何よりへら鮒が居たがるタナにピタリとエサが送り込めれば、へら鮒にとってもアングラーにとってもストレスなく釣れるのは明らかです。」
管理・野を問わず、現代チョーチン釣りではタナが決まらなければ釣りそのものが成立しないといっても過言ではあるまい。事実、精度の高いタナ合わせが決まると驚くほど簡単に釣れてしまう。取材時、忠相は18尺を基準としてスタートしたが、その後一度も竿の長さを変えることなく釣りを終えた。これは当日の釣況が変更を必要としなかったためで、仮にへら鮒のタナがめまぐるしく変動するようであったならば、当然竿のアジャスティングも行われたに違いない。ちなみに竿の長さの変更基準については、パターン化された良いアタリでの空振りが収まらないときは1〜2尺短く、サワリが弱々しかったりナジミきった後にアタリが出難いときは1〜2尺長くするが、これ以外にも意図的に短めのサオで数投エサを打ち込み、上層でエサを切った後にサオを長くして下層に寄ったへら鮒を仕留めるという手法も織り交ぜる。こうなるともはやハリス交換と同じ感覚だが、こうした能動的な戦略を躊躇無く実践できるところが、今もなお第一線の野釣り場で活躍できる原動力となっていることは間違いない。
 
 
管理釣り場ほどへら鮒の寄り過ぎが起こらない野釣り場では、比較的パターン化されたアタリで釣れ続くことが多い。もちろんそうしたアタリは単にエサを打ち込んで待つだけで出るはずもなく、当然ながら的確な対処方法が必要になる。まずやらなければならないことは、その日のへら鮒がナジミきったところでアタリを出すか否かを探ることだが、その際ポイントになるのが以下の4点だ。
1.ウキの立ち上がり直後にトメがあり、ナジミ始めるまでに適度な間があること
2.ナジミ際のサワリは概ねエサ落ち目盛り付近を通過する辺りから出ること
3.上エサがナジミきった後、やや間があってしたエサがタナに入る動きが認められること (※上下のエサがナジミきる際の僅か数秒間のタイムラグがウキに表れる)
4.下エサの重さがトップにかかった直後(※当日はトップ2目盛り残しがベストなナジミ幅)から1〜2目盛り返す間にアタリが出ること

これらの動きがほぼ毎投続くことが理想なのだが、当日もこうした動きになったところで連続して釣り込んでおり、完全にコントロール下に入った際には、忠相の「ここでアタれ!」という言葉の直後にアタリが出てヒットしていたのが印象的であった。そしてこうした動きを読みやすく演出するのがウキ(パイプトップ仕様のツアースペックF)であり、動きを出すために必要なのが的確なハリスワークである。
「落下途中で触らせ過ぎず、そうかといってナジんだときに違和感なくエサに食いつかせるためには、エサの動きを干渉しない自然な動きを出す必要があります。そのためにはエサのタッチがある程度固まった時点で、アタリに連動するハリスの長さを探り当てなければなりません。特に今期の西湖はナジミ際の良いアタリがことごとくカラツンになることが多く、その一方で深くナジミきったところ(エサの動きが止まる瞬間)で食う確率が高いという傾向が明らかなので、無駄な動きを抑えながらもそうした動きになるハリスの長さを探り当てる努力を惜しまないよう心掛けています。」
この日は風向きによってへら鮒の反応が極端に変化したため、一時はカラツンが連続したり急にアタリが出なくなったりと苦労させられたが、ウキの動きに合わせてその都度ハリスの長さを変えるなど状況変化に柔軟に対応。その甲斐あってか一時は例会の爆釣を彷彿とさせる連チャンを決めていた忠相。そういえばカラツン対策らしいものを見ていなかったが・・・?
「管理釣り場もそうなのですが、野釣りのカラツンはほとんど気にしません。取り分け野釣りではアタってフィニッシュすることの方が大事なので、喜びこそすれ決してカラツンを嫌うことはないのです。 アタリがコンスタントに出始めたら慌てずしっかりウキをナジませることを心掛け、カラツンが続くときでも決して大きくは動かずに、ややアタリを送り気味にする程度の気持ちで臨めば、やがてへら鮒の方が諦めてエサを食うようになりますよ(笑)。つまりはそのくらいの余裕が必要だということで、特に近年エサ慣れが目立つようになってきた西湖の地ベラに対しては、アタリが出始めてからの動き過ぎは禁物です。」
 
 
 
  「意外に見落とされがちなのですが、ボートの固定の仕方にもコツがあるんですよ。前浜のように1本ロープであればもちろんのこと、ここユース下ロープのように2本ロープであっても左右の振れを抑えるロープを張ることをお勧めします。前後の動きは致し方ないとしても、これにより左右の振れが抑えられるので、竿先の動きが抑えられエサ持ちがかなり良くなるんですよ。」
たくさん釣るアングラーは、こうした目立たなところにも創意工夫が施されており、それらはすべて釣果へとつながるので、是非参考にしていただきたいポイントである。(動画参照) この対策は左右共に2〜3m離れたところからボートの舳先に向かってロープを張るだけだが、左右のロープのテンションに差があったり、張りが緩かったりすると効果が乏しいので、しっかり引っ張って絞り込むことが肝心だ。
「また風裏になるこのポイントでは必要ありませんが、今日のように風が吹きつける前浜ロープでは波がボートに入ってしまう恐れがあるので、あらかじめ検量用の水桶を積み込み、波が出たらそれに水を汲み、ボートの舳先に置くことで水平を保つことが肝心です。こうすれば波によるボートの上下動も抑えられ安定するので、エサ持ちが悪くなることを最小限に抑えられることはもちろん、落水や転覆事故といった危険を回避する意味でも、安全性が担保されるでしょう。」
 
 
 
 
 
  括りとしては間違いなくストロングスタイルなのだが、気負いのない石井忠相の釣りは、釣り場が野に変わっても相変わらずスマートで無駄がない。しかも明瞭極まりないのでつい自分も釣れるような気になってしまうのは記者だけだろうか。
「自分自身の釣りが周囲から注目されていることを意識しないと言っては嘘になりますが、それだけにエサを含めて可能な限り分かりやすいシンプルな釣りを心掛けていることは確かです。そして、そうしたシンプルな釣りこそが真の強い釣りであることも確信しています。今回は大好きな西湖の釣りでしたので、取材でありながらかなり楽しんでしまいましたが、今日のように天気が良いなか富士山をバックに竿が振れて、しかも地ベラ化した良型がこれでもかと竿を絞り込む釣りは他では味わえません。ここ数年西湖は好調を維持していますし、今期もかなり良い状態でシーズンインしましたので期待が持てますよ。また圏央道の開通でアクセスもかなり良くなりましたので、是非皆さんも山上湖まで足を延ばし、爽快なボート釣りで豪快なチョーチン両ダンゴ釣りを堪能してみてください。西湖サイコ〜!あ〜、それにしても腕がイタイ(苦笑)。」
 
     

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