魚の気持ち-嗅覚編

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魚の気持ちを知るには、魚たちがどのような感覚を持っているかを知ることが第一だと思います。いわゆる「五感」で、「聴覚(音)」「嗅覚(匂い)」「視覚(色、形)」「触覚(歯ごたえ)」「味覚(味)」です。前回は「聴覚(音)」の話をしました。「音」は遠くの情報をいち早く魚たちに教えてくれます。

 さて、釣りエサ研究の主流であり、釣り人にとってもいちばん興味のあることは「嗅覚(匂い)」ではないでしょうか?釣りエサは独特の匂いがしますし、特別に匂いも付けています。多くの研究から「嗅覚(匂い)」が魚たちのいろいろな行動、例えば摂餌、性の判別、個体識別、求愛、回遊などに重要な役割と演じていることが明らかになっています。今回は「嗅覚(匂い)」について摂餌行動を中心に魚たちの気持ちを考えていきたいと思います。
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匂いの感覚
 「匂い」といえは"ウナギ屋"を思い浮かべるのは私だけでしょうか?あの香ばしい匂いを思い浮かべるだけでよだれがでてきてしまいます。人間の「匂い」を感じる機構は空気中に拡散した"ウナギの匂い物質"が鼻の中(鼻腔)の嗅受容細胞を刺激し、その信号が脳に送られて"うまそう"と感じるのです。

 さて、魚たちの"うまそう"という感覚はどのようなものなのでしょうか?魚たちも「匂い」を感じる鼻を持っていますが、構造が人間のものとことなっています。魚をよく観察すると鼻の穴が4つあいているのに気づくと思います。魚の鼻には水の入口と出口があるのです。人間の鼻腔は口の中(口腔)とつながっていますが、一般的な魚の鼻腔は口腔とはつながっていません。人間が鼻から息をして空気と鼻腔に通すように、魚は鼻を動かして水を鼻腔に通すのです。また、いちばんの違いは人間は空気中に拡散した匂い物質を「匂い」と感じるのに対して、魚たちは水に溶けている匂い物質を「匂い」として感じている点です。一見同じように思うかもしれませんが、人間が水に溶けている物質を感じる感覚は「味覚(味)」なのです。そうすると魚たちは「嗅覚(匂い)」と「味覚(味)」が一緒ではないかと考えるかもしれませんが、実際には一緒ではありません。鼻で感じるから「匂い」、口で感じるから「味」だ!といってしまえばそれまでですが、難しいことをいえば「匂い」の感覚中枢は脳にある端脳(終脳)にあり、「味」の感覚中枢は延髄にあります。このことから「匂い」と「味」はことなる感覚であることがわかります。
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魚を魅了する「匂い」とは
魚たちの感じている「匂い」で特に良く研究されているものにアミノ酸があります。魚たちが常食としているエサにはタンパク質がたくさん含まれており、このタンパク質の原料になっているものが20種類のアミノ酸です。新製品の開発で行う摂餌比較実験を各アミノ酸で調べると、明らかに魚の好むアミノ酸、嫌うアミノ酸があることがわかります。一般的な海釣りの対象魚であるクロダイ、メジナ、マダイなどはアミノ酸の一種であるグリシンやアラニンを好むことがわかりました。また、魚の好むアミノ酸の濃度は濃すぎないほうが良いこともわかりました。魚たちにしてみればアラニンやグリシンは"ウナギの匂い"つまり"うまそう!"な匂いなのです。