稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第92回 都祭義晃のチョーチンウドンセット釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第92回 都祭義晃のチョーチンウドンセット釣り

盛期の釣りもあと僅か。間もなく両ダンゴからセット釣りへと移行する季節を迎えるが、近年のセット釣りの特徴のひとつにアプローチの多様性が挙げられる。元来へら鮒の動きが停滞する晩秋から冬、そして翌春先までが旬といわれたセット釣り。今や一年を通して行われるようになったことで、それぞれの季節におけるへら鮒の動きに適したアプローチが次々と生み出され、セット釣りのスタイルは実にバリエーション豊かなものとなっている。しかしながらその結果、選択肢が広がったことでどのアプローチがマッチするのか、迷うことも決して少なくない。今回はそうした悩みに対し、端境期ともいえる秋のセット釣りの方向性を示してもらおうとマルキユーインストラクター都祭義晃に実釣をオファー。釣り場は秋の気配が漂い始めた友部湯崎湖。変化の激しい釣り難しい時合い下における攻略法をズバリ明快に示してくれた!

時合いが不安定な端境期だからこそ〝ミドル〟が生きる!

「真夏のセット釣りであれば『ホタチョー』に代表されるようなデカウドン&短バリスの組み合わせのパワー系、真冬の厳寒期であれば超軽量タックルでバラケを持たせない『ゼロナジミ』のライト系アプローチでほぼ決まりですが、一年を通して考えたとき、どちらにも属さない中間的なアプローチを手のうちに入れておかなくてはなりませんね。ここでは仮にミドル系としておきますが、この釣り方が最も釣り期が長く、それゆえに上手く釣りきれずに悩んでいるアングラーが多いのではないでしょうか?」

今回の取材の狙いをズバリこう言い当てた都祭。実は記者もこれからの時期のセット釣りが最も決めにくく、釣り方を合わせることが困難であると感じているひとりである。その原因は明らかで、移り変わる季節のなかで常に変化を続けるへら鮒のコンディションが釣況の不安定さを助長しているからに他ならない。ところが都祭はこの難題に対し、実釣を通してズバリ解決の糸口を示してくれた。

「基本的には、夏の高活性時はパワー系(重く大きなくわせエサでバラケを持たせたままアタらせる)、冬の低活性時はライト系(軽く小さなくわせエサでバラケを抜いてアタらせる)というアプローチに落ち着きます。そして秋と春はその中間的な状況が続くものと考え、ミドル系という夏冬いずれにも属さない中間的なアプローチで臨むことが基本となるのです。ちなみに私の判断基準ですが、抜き系が決まるのはオモリ負荷量の小さなウキにするとアタリが増えるときや、意図的にバラケをあまく付けて開かせるとアタるとき。持たせ系が決まるのはウキを沈没気味に深くナジませたうえで、縦サソイでバラケを促進させた後にアタるときです。」

さらに都祭は日に日に状況が変化する時期なので、タナを強く意識することが肝心だと言う。具体的には、バラケは持たせることを基本とし、くわせエサは軽めのもので様子を見る方がベターであるとのこと。当日もこの記事がアップされる時期をあらかじめ想定したセッティングで臨み、へら鮒の活性がやや落ちた時期に酷似した時合い下においてこの言葉通りの釣りを展開し、ミドル系アプローチの組み立て方の基本を明確に示してくれたのであった。

使用タックル

●サオ
がまかつ「がまへら天輝 」8尺

●ミチイト
サンヨーナイロン「バルカンイエローへら道糸」1.0号

●ハリス
サンヨーナイロン「魚戦王へらハリス」0.5号 上=8cm、下=25cm

●ハリ
上=がまかつ「リフト」8号、下=がまかつ「クワセマスター」5号

●ウキ
水幸作「ロングラスリム」
【0.8-0.4mm径テーパーグラスムクトップ23.0cm/5.6mm径二枚合せ羽根ボディ/1.0mm径カーボン足 8.5cm/エサ落ち目盛りは全13目盛り7目盛り出し】
(1)ボディ7.0cmのオモリ負荷量1.10g (2)ボディ8.0cmのオモリ負荷量1.35g (3)ボディ9.0cmのオモリ負荷量1.60g

●ウキゴム
オオモリ「一体式ウキゴム」

●ウキ止め
木綿糸(上1ヶ所/下2ヶ所)

●オモリ
ウレタンチューブ装着0.3㎜厚板オモリ1点巻き

●ジョイント
スイベル

都祭流チョーチンウドンセット釣りのキモ 其の一:アタリをパターン化し〝再現できる釣り〟を目指す

取材中〝再現力〟という言葉が頻繁に都祭の口から飛び出した。どういうことかと訊ねると、

「同じアタリ(ウキの動き)が繰り返し再現できればより簡単に、しかもたくさん釣ることができます。『そんなことができるの?』と疑っている読者の皆さんのために、今回はとっておきの方法を披露させていただきます。実は同じアタリを再現させるためのヒントは、その日最初に釣れた1枚目のアタリに隠されているのです。これは私のポリシーですが、1枚目が釣れたアタリからその日の傾向をつかみ、2枚目に釣れたアタリでパターンを見抜き、3枚目のアタリで確信(自信)を持って釣り込んでいくようにしています。これはセット釣りに限った話ではなく、すべての釣り方に共通する組み立て方です。私はこのプロセスをとても大切にしており、こうすることで確実に〝再現力〟が高められるものと確信しています。なお、こうした情報はできる限り早い段階でつかんでおくことが重要で、そのためには常にウキの動きから読み解く情報収集力を磨くとともに、スタート直後から五感のアンテナを研ぎ澄ましておくことが必要ですね。」

その日のヒットパターンが最初の1枚で分かってしまうとは驚きだ。真偽のほどを確かめるべくファーストヒットのアタリを振り返ってみると、記者のメモには「サワリながらトップが沈没気味にナジミきると、その後トップ中程まで水面上に持ち上げる縦サソイを3回繰り返した直後に、3目盛りほど力強く入るアタリでヒットする」と記載されていた。さらに記憶を辿ると、その後の2枚目3枚目も同じようなアタリで釣れており、後に都祭に問いただすと、この3枚目まででほぼこの日のヒットパターンをつかんだと言い、その後は毎投トップを沈没させてから3回前後の縦サソイでアタリがでるよう、バラケのタッチ・サイズ・形状に最大限の注意を払っていたことが印象的であった。そしてこの日の10枚目が釣れたときに都祭は、

「言ったとおりのアタリで釣れていますよね。逆の見方をすれば、このウキの動きにならないときにはアタりません。もし仮にアタったとしてもヒットする確率が極めて低くなるので、無駄にアタリを待つことなく自信を持って打ち返すことができるのです。どうです、簡単でしょう?」

もちろんこれだけで釣れ続いた訳ではない。この日都祭は時合いが不安定になりかけたときに2度にわたってウキをサイズアップさせることで、それまでと同じようなウキの動きを復活させ、アタリを再現してみせた。また、ウキの動きにメリハリがなくアタリがでにくくなったときにハリスを5cm詰めたケースでは、その後のウキの動きに目立った変化がみられなかったため速やかに元の長さに戻し、代わりの対策としてくわせエサの「力玉大粒(「さなぎ粉」漬け)」を2個付けた。すると、再び同じようなウキ動きが復活し、明確なアタリで連続ヒット。見事〝再現力〟の重要性を示してくれたのであった。

都祭流チョーチンウドンセット釣りのキモ 其の二:〝縦サソイ〟の目的はバラケの促進とリアクションバイトの誘発だ!

ミドル系のチョーチンウドンセット釣りにおいて縦サソイは必須テクニックだと都祭は言う。

「縦サソイが重要というよりも、いまや縦サソイを入れずには釣れないと言った方が正しいかもしれません。それだけ縦サソイの重要性が高まっていることの証だと思いますが、私の場合、その目的は大きく分けてふたつです。ひとつはタナに送り込んでからのバラケの促進。ふたつめはくわせエサを動かすことによるリアクションバイトに期待するためのものです。」

当日のへら鮒の動きはまさにミドル系アプローチに適した状態であり、縦サソイの目的はほぼバラケの促進に終始した。そして的確にバラケを開かせることでタナに寄ったへら鮒が反応すると、この動きによって自然なくわせエサの動きが演出され、理想的なタイミングでサワリ⇒食いアタリが再現されていたのである。

「今回は特に難しいサソイ方はしていませんが、大切なことは無駄にバラケさせないことです。今日のケースではウキを沈没気味に深くナジませないとアタリがでにくいことが分かっていますので、単に竿先を上下させる縦サソイを繰り返すのではなく、多少の強弱をつけながら一時的にサソイを止めてバラケを抑制し、一瞬の〝間〟を作ってくわせエサに興味を抱かせる方法が有効でした。近年縦サソイに関しては様々な意見があることは承知していますが、私自身、縦サソイは必要不可欠なものであると思っています。ただし、最近は縦サソイにへら鮒も慣れてしまったようで、サソイ過ぎは良くないように感じています。」

●都祭流ミドル系アプローチ時における縦サソイのポイント
①ふたつの目的を意識する(特にバラケの開くイメージを大切にすること)
②サソイ過ぎない(当日のミドル系ではバラケが抜けたらサソイを止めて即打ち返し)
③ナジミ際(上層)で強いサワリが現われたときは控える
④トップの長さの範囲内で行う(23cmというトップ長は縦サソイに有効に機能している)
⑤高活性時は大きく少なめに、低活性時は小さく多めにサソイを入れる

都祭流チョーチンウドンセット釣りのキモ 其の三:「セットアップ」ブレンドで高まるバラケの自在性

都祭流ミドル系アプローチのバラケのキモは、ズバリ「セットアップ」にあると断言する。

「バラケのエサ付けテクニックだけではへら鮒をコントロールしきれない点も、現代チョーチンウドンセット釣りの難しさのひとつでしょう。肝心なことはタナまで持たせること。そして的確に開くこと。このふたつの性能を併せ持つのが『セットアップ』であり、このエサ無くして現代チョーチンウドンセット釣りは語れません。今回はエサ付け時の容易さを増すために『BBフラッシュ』も使っていますが、これは脇役であって、あくまで主役は『セットアップ』です。元来バラケのコントール性能を高め、初中級者でも扱いやすいバラケが作れるといったコンセプトで生まれたエサですが、私にとっても極めて有効なエサであることに変わりはありません。」

こう断言する都祭。さらに「セットアップ」の優れた点として、本来タブーといわれるバラケエサの固練りという手法を見せてくれたが、動画でも明らかなように、沈没するほど開きが抑えられているにも関わらず、数回の縦サソイで的確にタナで開き、同時にやや食い渋ったへら鮒の摂餌を巧みに刺激してくれる様子は、明らかに他のエサでは実現不可能な特性であろう。

記者の目【情報収集能力の高さと選択眼の鋭さこそミドル時合いの突破口!】

猫の目のようにクルクル変わる難時合い。ダンゴを食ったかと思えばセットでもアタリをだすことすら難しくなる、秋はそんな釣りを決めきれない季節でもある。バラケを持たすも抜くも、いずれか両極端であれば答えは簡単だが、その間となると無限の選択肢が存在し、正解をみつけることは不可能にさえ思えてくる。そんな難しい時期のセット釣りを可能な限り簡素化し、自らのアプローチだけでなく、多くの悩めるセット釣りファンのために明確な指針を示してくれた都祭義晃。彼の釣りは自身のキャラクターからは想像もできないくらいロジカルだ。どのような攻め方が良いかは探り続ければいずれ答えはみつかるだろう。しかし限られた時間で答えをだし、集中して釣り込む必要のある競技の場ではそう悠長に構えてもいられない。重要なのは答えをみつける速度と正確さ。今回の取材で際立ったのはその情報収集能力の高さと選択眼の鋭さであり、インストラクターとなったことで益々磨きがかかってきたようだ。

最初の1枚で正しい方向性を見出すことは容易ではなく、初中級者が一朝一夕にできるものではないだろう。しかし今回の釣りはすべてのアングラーにとって大きなヒントになったことには違いなく、今シーズンは本格的に食い渋る秋の訪れが待ち遠しくなるようなものであった。