メジナ・グレ
フカセ釣り
マルキユー株式会社 営業企画部研究開発課 副主任 武内 俊
マルキユー株式会社 営業企画部研究開発課 副主任 武内 俊
海釣りではオキアミやイソメ類といったエサがおもに使われていますが、天産物であるため、どうしてもサイズや品質が不安定になってしまいます。そこを人工エサならではの安定した品質で補いつつ、釣果的にも匹敵するものを作ろうと動き始めたのがスタートです。
「バイオワーム」「バイオベイト」をはじめとする従来の人工エサでは、使い勝手やリアルさを求めてまずエサの形状を決め、そのパフォーマンスに影響しない範囲で海産物由来のエキスやアミノ酸を含ませていく方向で開発しました。一方、今回の「ハイブリッド クロス」では考え方を大きく変え、オキアミやイワシなどの素材そのものを原料とし、釣りエサとして使えるように整形する方向でアプローチ。形状はあまり意識せず、どれだけ摂餌成分を多く含ませられるかという考え方で設計しています。主原材料となる一般的な天産物の釣りエサのミンチに、形をなすためにエサ持ちを補助する素材を融合させているというイメージを持っていただくとわかりやすいでしょうか。
現在の形にこぎつけるまで5年以上、100回を超えるフィールドテストを実施しました。硬さについてのより細かな基準調整をおこなうなど、どんな時季でも安定した結果がだせるクオリティを確認し、自信を持って“釣れる”といえる仕上がりとなっています。
“生の素材をそのまま固めて釣りエサにする”というアイデアは、実は従来の人工エサを開発していた20年近く前の時点からあり、今回発売するものに近い試作品もできてはいました。もちろん、釣果的にも優れていたのですが、“安定した品質で量産することが難しい”という壁が立ちはだかっていて、製品として提供するのは困難と判断せざるを得ず、製品化は断念されていました。
ですが、開発担当としては、せっかくのアイデアを見限るのはもったいないと感じていたため、試作品の改良は継続。あるとき西日本エリアを担当する商品企画の責任者とグレ釣りで同礁した際に使ってもらったところ、オキアミではどうしても食わせられなくなった時合下で、このエサを使ったときだけほぼ入れ食い状態に。あまりの衝撃に“会社としては大きな決断となるが、設備投資などの面は自分が経営陣と掛け合うので、ぜひ製品化できるように進めてほしい”と請われ、生産設備の選定や技術開発にも本腰を入れることとなりました。
量産へ向けたトライアルでは、手作業では問題なくできる細かい作業も、実際の生産設備でやってみると求める精度に至らないケースが多々発生。機械の調整程度では対応しきれずに部品自体をオリジナルで設計、製作した部分もあります。さらに、どうしてもうまくできない工程があり、行き詰まりを感じたこともあったのですが、偶然目にしたまったく畑違いの機械にヒントを得てクリアできたという体験もあります。企業秘密に関わるので、具体的に言えないのがもどかしいですが、生産技術の側面においても素材開発と同じくらい頭とエネルギーを使いましたね。
最も大きなメリットだと考えているのが、幅広い硬さに対応できる点です。ウキフカセ釣りではオキアミ、投げ釣りではイソメ類など、天産物のくわせエサが一般的に使われていますが、硬さの調整はこれらに加工を施すこと、例えば塩で締めるなどをおこなっており、その範囲内でしかエサを選ぶことはできません。これに対して「ハイブリッド クロス」は同じような成分でありながら、その範疇を超えた部分、やわらかいところも硬いところも揃えられるので、釣り人が選べるエサの幅が広がります。
さらに、それぞれの硬さは数値によって表記しているので、感覚ではなく具体的な基準をもってエサが選べるため、釣りをより戦略的に組み立てていけるようになるでしょう。
まず、硬さについては要望がある限り広げていこうと思っています。あとは色の展開ですね。こちらは「クルール(※フランス語で『色彩』の意)」でおこなうことになりますが、一般的な釣りエサを模したものだけでなく、ターゲットの視覚に訴えかけるカラーなども順次取り揃えていくつもりです。数値によるスペックとカラーの展開によって体系化されたラインアップの中から自分の考えでくわせエサを選べるというのは、これまでになかった面白さ。一つテンヤ、タイラバ、タチウオテンヤなどにみられるように『エサ釣り』『ルアー釣り』といったカテゴリーのボーダレス化が進み、ゲームフィッシングという視点で釣りを楽しむ釣り人が増えている昨今、「ハイブリッド クロス」には、その面白さを飛躍的に高めてくれるアイテムとして大きな期待を寄せています。
さらに、その先の目標としては、現在使われているすべての天産物のくわせエサを「ハイブリッド クロス」でカバーしたいという想いがあります。オキアミ、イソメ類、貝類など、あらゆる天産物の釣りエサを主原材料にできる長所を生かして、実現して、さらに面白い釣りの世界を拓くことができたらと思うと、期待で胸がいっぱいになります。